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 双子姉妹に何があったんだ……。

 僕は今の光景に、恐怖すら覚えていた。

 今まで新山姉妹に抱いていた印象は、大人しくて他人の言うことを素直に聞く、可愛い妹、といったものだった。

 実際、メールでの遣り取りでも、双子は僕に対し、しきりと「お兄様」という呼びかけをしてくれる。そのたびに、僕の心の中でぐいっと何かが揺さぶられたのだが、親衛隊女子を視線だけでねじ伏せた今の光景は、まったく信じられないものだった。

 僕は立ち上がり、急ぎ足で学食を出た。

 出入り口に立つと、廊下の向こうに双子の後ろ姿が目に入った。

 僕はほとんど駆け足になって、双子に追いついた。

「ねえ、ちょっと……」

 呼びかけにするにはちょっと変だと思うが、双子は僕の声にくるっと一挙動で振り向いた。踵を支点にして、まるでバレエのターンのように素早く動いた。

 スカートの裾がふわりと開き、二人のポニー・テールとツイン・テールの髪が遅れて揺れた。

 うう……萌えるじゃないか!

 いかん!

 これじゃあの親衛隊のリーダーが言った通り、完全にキモオタのロリコンだ!

 僕はぶるっと頭を振って、双子の魅力に負けまいと心の中の「萌え」を追い出した。

「お兄様、どうしたの?」

 姉の檸檬が小さく小首を傾げた。

「汗をかいているわ」

 妹の蜜柑が同じように小首を傾げて僕を見上げた。全く同じ顔の双子が、大きな瞳を見開き、瞬きもしないで僕を見つめる。

 僕は大きく息を吐き出すと、必死の思いで呼吸を整え、言葉を押し出した。

「い、今のは、何があった?」

 僕の問いに二人は同じ顔を見合わせ「だってねえー」と声を合わせる。

「あの人たち、あたしたちが芸能界デビューしないといけない! っていうんだもの」

「そんなのあたしたちの勝手じゃないの。そう言ったら」

「まるであたしたちが悪いことしたみたいに言うのよお」

「これって人権侵害だわ」

 双子は、交互に言葉をしりとりゲームのように繋げて言い合う。

 今まで双子はドラクエのプレイヤー・キャラのように「はい」か「いいえ」の二言しか口にしなかった。信じられないことに、今では怒涛のように様々な言葉を僕に向かって発していた。

 僕はどう言えばいいか、焦って両腕を風車のようにぶんぶんと振り回していた。

「そうじゃなくって、どうして君らが睨んだだけで、女子生徒がいっぺんに尻もちをついたか、ってことなんだ。君ら、あいつらに手も触れなかった。それなのに、あいつらバタバタと倒れて……」

「いやーだ!」

 檸檬が満面の笑みを浮かべ、ふざけた様子で手を振って僕の腕を叩いた。蜜柑が同じように僕を見上げ、言葉を引き取った。

「それじゃあたしたち、超能力者みたいじゃないの?」

 蜜柑の「超能力者」という言葉に、僕は凝然となった。

 そうだ……ここ数日の奇妙な出来事……双子だけじゃなく、僕自身、そして真兼朱美に起きた変化……それを繋ぐ鍵として、もしかして超自然的な出来事が関わっているのかもしれない。

 不意に僕の脳裏に、佐々木藍里の姿が浮かんでいた。

 これには絶対、藍里が何らかの形で関わっている……。

 それは確信となって、僕の胸の奥深くにどっしりと居座った。

「じゃあお兄様!」

「明日のデート、忘れないで」

 ふふふふ……軽やかな笑い声を残し、双子は足早に去っていった。

 あれ、今のは檸檬が先に言ったのか、それとも蜜柑だっけ?

 僕はポケッと、馬鹿のように廊下の真ん中で立ち尽くしていた。

 朱美に相談しよう……。

 僕の脳裏に、天啓のようにそんな思い付きが浮かんでいた。

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