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バス停を降りて、僕と双子は肩を並べ高校へ向けて歩き出した。僕らの後ろを親衛隊ブス軍団が押し黙ったままついてくる。ちらりと振り向くと、彼女たちは僕の視線を避けるようさっと顔をそむけた。全員表情を消し、何を考えているか判らない。
僕は親衛隊を無視し、双子に話し掛けた。
「いやあ、いい天気だねえ! 今日は一日晴れるかもしれないなあ」
双子はやや俯き加減に歩き、僕の話し掛けに小声で「はい」「はい」と短く答えていた。
「君らはいつも一緒なのかい?」
同じく「はい」の二重奏。
「好きなものは一緒?」
右に同じ。
今まで双子から「はい」以外の答えを、僕は一度も引き出せなかった。
僕は戦法を変えた。
「ねえねえ、デートはどこでする? どこか君らの行きたいところはないの?」
すると双子は困ったようにお互いの顔を見合わせた。ドギマギしたように、僕の顔を見上げ再び顔を俯かせた。
僕は肩をすくめ、仕方なく話し掛けた。
「そうかあ、それじゃ僕が決めていいかい?」
僕の言葉に、双子は救われたような表情になり「はい」と唱和した。
さて僕がデートの場所を決めるとなると、どこにすればいいか?
あまり遠くではまずいし、それでも近場では他人目があって双子が困るかもしれない。
僕は立ち止まり、ふと後ろを振り返って眼下に広がる真兼町の全景を眺めた。
晴れ上がった空の下、坂道の下に広がる真兼町はくっきりと僕の目の前に広がっていた。
坂道から田畑が広がり、幹線道路が突っ切っている。道路の周りには色々な商店が軒を並べていた。ほとんどが規模の大きい量販店で、その間をコンビニやファミレス、回転寿司の看板が並んでいる。幹線道路と並行してJRの鉄路が朝日を受け、白く輝いていた。JRの先には遠く、水平線が見えている。真兼町は谷から広がる扇状地となっていて、真兼高校はその要にあたる位置にあり、町の全貌を見渡せるのだ。
そうだ!
ショッピングモールはどうだろう?
幹線道路沿いに展開するショッピングモールは、ショップだけじゃなく映画館なども入ってデートコースには丁度いい。
僕はショッピングモールの名前を告げてみた。双子は僕の提案に、声をそろえて「はい!」と答えた。
結局「はい」以外、双子からは引き出せなかったな。
僕はくるりと踵を中心に背後に振り向き、後ろ向きになって歩き出した。背後から付き従う双子親衛隊ブス軍団が、僕の顔を見詰めていた。
全員、表情には怒りがほの見える。
「君らはついて来るなよ」
親衛隊はぶすっとそっぽを向いた。
ブスがぶすっとそっぽを向く──。
まるで面白くもない。




