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 グワァラガッシャンドシャンバッタン! と雷鳴のような音が保健室に轟き渡り、出入り口の引き戸が恐ろしい勢いで叩きつけるように開けられた。

 あまりに開くときの勢いが強すぎ、引き戸のガラスがいっぺんに粉微塵に割れて室内に吹き飛んだ。

「流可男ーっ! いるかーっ!」

 強烈な大音声が保健室に響き渡り、窓ガラスがビリビリと振動した。

 室内に人影がぬっと侵入する。

 入ってきたのは、真兼高校女子制服を身に着けた怪物だ。女子制服を身に着けているからには一応、女子だ。

 百五十センチという身長にかかわらず、体重は百キロを軽く超える。

 スカートからにょっきりと覗く太ももは僕の胴回りほどもあり、ぶっ太い両腕は僕の太ももほどもある。肩幅、胸囲、胴回り、腰回りすべて同じで、まるでドラム缶に手足がくっついているようだ。

 肩から直接巨大な頭部が生えていて、首は確認できない。臼のような顔面にはピンク色の縁をした眼鏡を架けている。髪の毛は真っ赤で、これは染めているのではなく地色だ。

 彼女は眼鏡の奥からギョロリとピンポン玉のようなまん丸な目玉を動かし、室内を見渡した。両目からはレーザー光線のような視線が放たれ、眼光は僕の顔に注がれていた。

「はっはあっ! いたなあ~っ!」

 怪物女子の唇がにったりと笑いの形に歪み、ドスドスと足音を立て、僕に近づいた。

「誰です、あなたは? 流可男さんは具合が悪いんです」

 さっと藍里が彼女と僕の間に立ちはだかり、鋭い口調で詰問した。

「何い? 具合が悪いだあ~?」

 邪魔された怪物は、藍里の意外な態度に驚いたのか、ぐっと踏ん張ると大きな両目を見開きマジマジと僕を睨みつけた。

「流可男、お前具合が悪いのか?」

 僕は言葉もなく、こっくりと頷いた。

 怪物は僕の言葉になぜか邪悪な笑みを浮かべ、右手を上げて架けているピンク縁の眼鏡に触れた。

 すると眼鏡のレンズの色が変化し、表面に様々な記号が表示された。

 彼女が架けている眼鏡は、ただの眼鏡ではない。特殊なレンズと、縁に仕掛けられた無数の計測計器の組み合わせで、超望遠から顕微鏡にもなるし、赤外線レーザーやニュートリノ・ビームであらゆる対象を走査する。

 あとで述べるが、彼女の身に着けている真兼高校女子制服も既製服ではなく、特別製で驚嘆すべき性能を秘めている。

 僕を走査した怪物女子は満足そうな笑みを浮かべ、大きく頷いた。

「なるほど! 確かに流可男の体温は三十九度、脈拍百四十、血圧百八十五と平常状態ではあり得ない。これは風邪だな。もしかしたらインフルエンザかもしれない」

 藍里はすかさず言い返した。

「だったらそんな大声を上げたりしないで、お静かに願いませんか?」

 ここでようやく怪物は藍里に興味を示したようだった。

「大体、お前は何だ?」

 藍里は誇らしげに胸を張った。

「わたしは佐々木藍里。流可男さんの恋人です!」

 怪物は嘲笑的な笑いを浮かべた。

「ほっほう~! 恋人か! 面白え!」

 藍里は静かに質問した。

「あなたはどなた?」

 怪物はぐいっと頭をゆすり、昂然と叫んだ。

「オイラは真兼朱美(あけみ)。流可男はオイラの許嫁だ!」

 藍里は茫然と立ちすくんだ。

 そう、この真兼朱美という怪物的な女子が、僕の許嫁なのだ。

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