表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/115

 ぽかりと意識が浮かび上がり、僕は目を覚ました。

 視界がぼんやりしている。

 言うまでもなく、眼鏡がないからだ。

 僕の視力では、眼鏡なしではほとんど何も判別できない。

 眼鏡、眼鏡、眼鏡はどこだ!

 僕はジタバタと腕を振り回し、存在しない眼鏡を探した。

 と、視界の中に人影が浮かび上がり、僕の顔に眼鏡を架けてくれた。

 急激にハッキリとした視界に、女性の顔が浮かび上がった。

 卵型の理想的な顔の形に、ぱっちりとした大きな瞳。栗色の髪の毛は、複雑な形に編み上げている。

 藍里だ……。

「良かった! お目覚めになられましたね」

 僕はガバッと起き上がった。

 ベッドに寝かされている。

 消毒薬の匂いがした。

 ということは、ここは保健室か?

「目が覚めたのか?」

 野太い声に、そちらを見ると担任の大賀が壁際の椅子に腰かけ、不機嫌そうな表情を顔に貼りつかせて僕を睨んでいる。

 ジロリと僕の側にいる藍里を見やって、ふらりと立ち上がり、近づいた。

「さっきのふざけたセリフは何だ?」

 大賀に睨まれても、藍里は一切動揺を見せなかった。相変わらずにこやかな表情を保ったまま、平然と答えた。

「何のことでしょう?」

 大賀は唸り声のような口調で詰問した。

「明日辺の恋人だ、とかいう戯言たわごとだよ。一体、どういうつもりなんだ?」

 藍里は艶やかな微笑を浮かべ答えた。

「あら、本当にあたしは流可男さんの恋人なんです」

 大賀は歯をむき出し、吠えた。

「馬鹿な! 大体、お前が転校したのは今日じゃないか。どうやって明日辺と恋人なんかになれるものか」

 大賀は相当腹を立てているらしい。その証拠に、今まで一度も「だっぺ」を語尾につけていない。

 僕は今までのやりとりに完全に置き去りにされたまま、茫然としていた。

 見れば見るほど、眼前の女の子は僕のパートナー・キャラ佐々木藍里そのものだ。

 しかしそんなことはあり得ない。

 藍里はゲームの中のキャラだ。

 現実の人間のはずがない。

 しかし現に今、僕の横に存在し、さらに僕の顔に眼鏡を架けてくれた。

 ということは藍里は僕に触れることができる。

 では僕は藍里に触れることが出来る?

 僕は無意識だが、右手を上げ藍里の顔に近づけた。

 僕の動きに気づき、藍里はにこやかな表情で待ち受けた。

 僕の指先が藍里の頬に触れた。

 柔らかな感触が伝わってきた。

 ゆっくりと藍里は頷いた。

 藍里の表情は「そうです。あたしは存在しています」と宣言しているようだった。

 大賀は怒りの表情で、僕と藍里を睨みつけていた。

 その時ズシン、と保健室が軽く揺れた。

 はっ、と大賀は顔を上げた。

 表情に恐怖が浮かび上がっている。

 度つきサングラスの奥の、両目が跳び出さんばかりにぐわっと大きく見開かれ、口がポカリと丸く開かれていた。

 ズシン、ズシンと保健室の振動が繰り返され、何かが近づく気配がした。

 大賀は浮足立ち、あたふたと周囲を見回している。

「そ、その話は後だ……俺はちょっと用事を思い出したので……」

 なぜかチョコチョコとした歩き方で、足早に保健室を逃げ出した。

「どうかしましたか?」

 藍里がぼんやりと呟いた。

 僕は答えなかった。

 いや、答えられなかった。

 なぜなら僕も、近づきつつある存在の正体を知っていたからだ。

 まさに真兼高校恐怖の象徴!

 暴君登場!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ