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 くたくたっと全身から力が抜け、倒れ込む寸前の檸檬を、中年男は素早い動きで支えた。鋭く振り向くと、突撃隊の制服を身に着けた男たちが無言でトイレに入室してくる。

 突撃隊員の手には、大きなバッグがある。

 意識を喪失した檸檬の身体を、隊員たちは手早くバッグに押し込んだ。檸檬は小柄で、バッグの中にすっぽりと隠れた。それでも高校一年生の女の子だ。それなりの重みがあるが、隊員は軽々とバッグを持ち上げた。

 一連の作業は、すべて無言であった。

 突撃隊員と中年男は、トイレから駅構内に戻った。

 トイレの前にはずらりと突撃隊員が並び、鋭い視線で辺りを睥睨している。トイレの出入り口には「テロ警戒中」という文字が書かれた看板が出されている。

 構内を行き交う人々は、隊員たちの姿を目にしないよう、一様に視線をそらし、急ぎ足で通過した。

 中年男と突撃隊員がトイレから、駅の改札口へ向かうと、入り口で警戒していた他の隊員たちは看板を撤去し、その場を離れた。

 全員、猛然とした速足で改札を抜け、駅の外へ駆け込んだ。

 駅前のロータリーには、突撃隊専用のワゴン車が停車していた。ワゴンのスライド・ドアが開くと、一同は一瞬で車内へ突入した。席に落ち着く暇もなく、ワゴン車は慌ただしく出発していった。

 車が動き出し、車内ではようやく緊張がほぐれたようだった。

 中年男は端末を取り出し、きびきびとした口調で報告を開始した。

「新山檸檬を確保。これより帰還します」

 それだけ口にすると、姿勢を楽にした。

 バッグを運んだ隊員は、一同に確認してから、バッグの口を開き、閉じ込めていた檸檬を抱え上げた。

 檸檬は完全に意識を喪失しており、ぐったりとしている。軽々と檸檬の身体を抱え上げた隊員は、身を捻じって後部座席に檸檬を座らせた。隣に座るもう一人の隊員が、檸檬の身体にシートベルトを装着させた。

 都内をワゴン車は通過し、突撃隊本部へと向かった。

 突撃隊本部の地下駐車場にワゴン車が進入すると、すでに連絡を受けていた迎えが待っていた。迎えの中に、免外礼博士の長身が見えた。

 ストレッチャーが運ばれ、ぐったりとした檸檬の身体が横たえられた。看護師の服装をした隊員が駆け寄り、首筋の頸動脈に手を触れ、脈拍を計る。看護隊員は、免外礼博士に頷きかけ、口を開いた。

「脈拍、呼吸ともに正常です。あと一時間以内に覚醒する見通しです」

 博士は頷き返し、答えた。

「よし、運べ」

 ストレッチャーは隊員たちの手によって、駐車場のエレベーターに運搬された。博士はワゴン車に残された、檸檬の物入を掴み上げた。物入の口を開き、爛々とした目つきで中身を確認した。

「これは……!」

 免外礼博士は物入から、黄色い布の塊を引っ張り上げた。軽く一振りすると、布地はさっと広がり、上下続きのスーツの形になった。

 博士の表情に、勝利の色が現れた。

「これが奴らの戦闘服! このような薄地で、あれほどの性能を発揮するとは、驚きでしかない……」

 博士の唇が笑いの形に歪み、低い笑い声が漏れ始めた。

 やがて声は大きくなり、高笑いとなった。

「わははははは……!」

 駐車場に、免外礼博士の笑い声はいつまでも響いていた。

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