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 護衛艦「ひぐらし」から飛び立ったティルトローター機は、真っ直ぐガッツ島へ向かった。ガッツ島の桟橋近くに着陸すると、ドアが開いて朝比奈亜利紗総理の姿が現れた。ローターの巻き起こす風で、総理の長い髪の毛が激しく乱れたが、彼女は一切気にする様子もなく力強い足取りで歩き出した。

 時刻は昼近くで、強い日差しを避けるため、総理は濃いサングラスを架けていた。総理が地面に降り立つと、即座に護衛のSPが周囲に散会し、鋭い眼差しで警戒した。

 崩壊した収容所の建物の方向から、突撃隊員がぞろぞろと姿を現し、担架を運んできた。担架には赤田斗紀雄の姿があった。担架が近づくと、朝比奈総理は鋭い叱責の声を上げた。

「赤田! 失望しましたよ。あなたにはガッツ島管理という、最低限の任務すら果たせないのですか?」

「申し訳ございません……」

 赤田は担架に横たわり、弱々しい声を上げた。息をするのも大儀そうで、総理がわざわざ耳を寄せないと聞こえないほど、消え入りそうな小声だった。

 隊員の中に、百九十センチという長身の姿があった。

 免外礼博士だった。

 朝比奈総理は博士に手招きした。博士はゆっくりと歩いて、近づいた。総理は博士に向かい、質問した。

「赤田の容体は?」

 免外礼博士は快活な口調で答えた。

「はい、主に打撲と疲労ですが、二、三日ほど休養すれば元通りになるでしょう」

 朝比奈総理は眉をしかめ、さらに質問を重ねた。

「それにしても、こうまで酷くやられるとは、相手は何者です?」

 赤田は呻きながら囁いた。

「〝赤い奴〟です! 全身、真っ赤なスーツを身に着けた女だ。ちっこいのに、凄いパワーで、俺が特別プロティン・ドリンクでパワー・アップしたのに、まるで歯が立たなかった」

 赤田の言葉には、悔しさが滲み出ていた。

 免外礼博士は軽い口調で、赤田の説明を補足した。

「多分、強化服{パワード・スーツ}でしょうな。その真っ赤なスーツは。着用者の筋力を増加させ、戦闘力をアップさせる。赤田君が適わなかったのも無理はない」

 朝比奈総理は腰に手をやり、考え込んだ。

「ガッツ島を襲撃するとは、大胆な犯行です。背後に何か、大掛かりな組織があるのでしょうか?」

 総理の言葉に、赤田は全身の力を振り絞り、上体を起こした。

「そうです! 俺を倒した赤い奴のほかに、緑、黄色、オレンジ、薄紫、ピンクのスーツを着た女たちが収容所を襲ったんだ! きっと奴ら、何かの組織に違いない。全員、同じデザインのスーツだった……。多分、政府に反抗する反政府の組織ですよ」

 総理の表情は深刻なものになった。

「これは重大な事態ですね。反政府組織が存在するとは、今までまったく公安の把握しない組織があるということです」

 かりかりと総理は爪を噛み、考え込んだ。

 何か思いついたのか、きりっとした目で免外礼博士に視線を向けた。

「博士。強化服に対抗する手立てはありますか?」

 博士は慎重そうに答えた。

「一つあります。相手が強化服を使うのなら、こちらも同じような武装が必要でしょう。幸い、わたしも以前から人間の能力を向上させる強化装置の開発を進めておりましたので、その研究を進めましょう」

 免外礼博士の言葉に、赤田は必死の面持ちで訴えた。

「博士! その強化服は、是非とも俺に使わせてください! どうしても、あの赤い奴と戦いたい!」

 免外礼博士は力強く頷いた。

「任せて下さい! それに、オタクたちをツッパリに洗脳する研究も大詰めに近づいております。もうすぐ、全国のオタクたちが、素晴らしいツッパリ、ヤンキーに精神改造され、この国からは、呪わしいオタクたちは一掃されるでしょう!」

 博士の断言に、朝比奈総理は初めて表情を綻ばせた。

「それは素晴らしい! 日本が理想の国となるのも、もうすぐですね!」

 総理、博士、赤田の三人の笑い声が、高らかに響き渡った。

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