工場の詩シリーズ(仮)
蒸し暑く、薄明かりが微かに入る工場の中、私はひたすら鉄の厚板に穴をあける。
まずは、厚板に穴を開ける寸法通りにノギスで線を引き、金槌で穴の起点を打ち込む。指に金槌が当る。
そして、専用の機械で下穴をあける。11πのキリを回して取り付ける。そして、スイッチを入れてレバーを回すと、キリキリキリと無機質な音を立てて回り始める。
感情のない誠に単調な響き。厚板を押さえながら、ひたすらに、ただひたすらに下穴をあける。
下穴に本穴を開ける。別の機械で穴を開ける。18πのキリを取り付ける。キリに筒の部品を取り付け、機械の一部を持ち上げて、キリを押し込む。これに手こずる私は何とも愚かで、浅はかであろうか。
This is hard work.
盤に厚板を乗せ、板のついたボルトナット、プレート、U字厚板を準備して、厚板を固定する。プレートはU字厚板と厚板の高さを同じにするものだ。
そいつをラチェットで時計回りに回す。何処から急かさせている気がして、心が重い。自分の動作もポンコツに思えてくる。
そして、速度をBに設定して、ハンドルを固定させる。20π以下の穴だから、ダイアルを0,1に設定する。そうすると、機械は仕方なさそうに穴を開け始める。
お前なんかのために動きたくないやい!と言われている気がする。
ひたすらにクレーンが動いている。アングル、ビームが何100Kgと運ばれていく。
轟音なのか、機動音なのか、今は分からない。
その間に13πの穴を別の機械で開ける。13πのキリを、歯車のような工具で締めて取り付ける。油をさして、スイッチとレバーを引く。そうすると、お前の手を引きちぎらんとばかりに穴を開け始めた。
穴が空け終わる終盤になると、厚板をも動かしてしまうほどに、キリが唸る。
何とかなだめて穴あけを終える。しかし、ほかの同期のほうが、私なんかよりも格段に早く行える気がして、存在が小さく感じるのだ。
最後に別の機械でねじを入れるために削り込みを入れる。
ギリギリギリギリギリギリギリギリ・・・・・。
どうすれば早く仕事を覚えられるのか、できる人ならとっくに考え、実行している筈だ。私は何なんだ・・・。
昼食も旨味を感じず。
午後の仕事。
床部品の穴あけ。まずは切断線を、型を押さえて線を引き入れる。そうしたら、18πの穴あけを行う今度は別の穴あけ機械だ。
嫌な匂いのする冷却液を入れて、電磁磁石で機械を固定してひたすら穴を開ける。センターを決めたら穴を開け始める。しかし、慣れないせいもあって、正確な位置に穴を開けられていなかった。
私は自分の愚かさを恨んだ。
This is hard work.
穴は、センターを意識して入れろ!意識しろ!意識しろ!意識しろ!!!!
そして、また悲しい知らせ。
先日穴を開けた分厚い板の穴位置が合っていなかったという。
おかしい、確認したはず、機械に打ち込んだとおりに切断している筈だ。そう思ったが、自分のミスだ。帰りぎわの先輩の態度も、あのミスのせいかもしれない・・・。
蒸し暑い夏の前。工場にまた歌は流れる。幾何も幾何も・・・・。