とあるクリスマスの夜
今日は待ちに待ったクリスマス。
森の近くに住むアミちゃんもクリスマスを楽しみにしていました。
おいしいごちそうもいっぱい食べ、お腹いっぱいになりとても幸せでした。
しかし・・・
「お母さんなんて大嫌い!お人形さんが良かったのに!」
最近友達にお母さんに買ってもらったという可愛いお人形さんを見せられ、アミちゃんもすっかり自分も欲しくなっていたのです。ところが、お母さんがくれたのはお母さんの手編みのマフラーでした。
それを見たアミちゃんはすっかり怒ってもうお母さんの顔なんて見たくない気分でした。
そして、そのまま家を飛び出してしまったのです。
「お母さんなんて大嫌い。私もお人形さん、欲しかったのに・・・」
つい飛び出してしまったアミちゃんでしたが、行く当てはありません。
このあたりの道は知っているのでどこへ行っても大丈夫だと思い、ひたすら家から走り続けました。
今は少しでもお家から遠くへ行きたい気分でした。
どれくらいたったのでしょうか。気が付けばあたりは気に囲まれていて自分の知らない場所でした。
「ここ、どこ・・・?寒いよう。」
とっさに飛び出して来てしまったため、とても冬の夜の寒さに耐えられるような服装ではなく、不安だけでなく寒さも襲ってきます。
あたりもぼんやりしており、周りの木がまるで幽霊のように見えます。
「怖いよう。誰か助けて...」
すると、奥から誰かが歩いて来ました。
それは大きな体をしたクマさんでした。
「やぁ、お嬢さん。どうしたの?」
「・・・・・・。」
「こっちで一緒に遊ばない?僕も一人で寂しいんだ。」
アミちゃんは小さく頷きました。
それからしばらくアミちゃんとクマさんは木登りやかくれんぼ、おままごとなどいろいろなことをしました。
やがて、疲れて来たのでいったん休むことにしました。
アミちゃんとクマさんは休みながらいっぱいおしゃべりをしました。
お互いの趣味や普段の生活の様子などなど...
そしてある時クマさんがアミちゃんに聞きました。
「アミちゃんはお家に帰らなくていいの?もう夜遅いよ。」
すると突然アミちゃんは喋るのをやめました。
そして、しばらくしてから言いました。
「...いいの。お母さんの顔なんて見たくないから。」
「何かあったの?」
アミちゃんは少しずつ話し始めました。
「お母さんがイジワルなの。クリスマスプレゼントにお母さんはマフラーをくれたの。私はお人形さんが欲しかったのに...。きっと私のことが嫌いなんだよ。」
クマさんは少し考えて、それから答えました。
「別にお母さんはアミちゃんに意地悪をしたかったわけじゃないよ。」
「じゃあどうして・・・!」
「アミちゃんはマフラーを貰ったんでしょ。お母さんの手編みの。そのマフラーにはお母さんの心がこもっているんだよ。本当に嫌いだったらそんなことはしないよ。マフラーを編むのはとても大変だしね。」
「お母さんの心・・・?」
「そう。アミちゃんに元気でいてほしいなぁっていうね。」
そのとき、アミちゃんの名前を呼ぶお母さんの声が聞こえてきました。
「早くお母さんのもとに行っておいで。お母さんが待ってるよ。」
「でも・・・クマさんは良いの?また一人になっちゃうよ。」
「僕は大丈夫。だから行っておいで。」
「分かった。また来るね。」
そういってアミちゃんはお母さんのもとへ走っていきました。
その日、森の近くの家では笑い声が響いていました。
せっかくのクリスマスなので一つ作ってみました。
短編としては初の投稿となります。
少しでも皆様に楽しんで頂けたら嬉しいです。
ここからは宣伝を。
私の連載小説「桜の舞う頃に」も宜しくお願いします。
では、良いクリスマスを。
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