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真名と号

前書いた式神のアレと同じ世界観

式神に限らず、呪術的なやりとり、契約などにおいて、名というのは重要なものである。

号より通名、通名より真名の方がより深く相手と繋がりを得られるし、影響を与えられる。交わす名は同程度の重さのもので行うべきだし、本人の実力差にもよるが、例えば、号と真名で行われた契約は後々破綻することになりやすい。ただ、お互いの実力差や相性によってはそれで吊りあいが取れている場合もあるが。

もっとも、呪術師であっても己の真名を把握していない事はけして珍しい事ではない。この場合の真名というのは、己の本質を表す、(カルマ)とも言うべきものだからだ。本名は呪術的には通名のくくりになる。真名は不変のものだからだ。本名は不変のものではない。手続きで変えられるものだ。

だが、真名に限りなく近い通名、というくくりのものもある。名付けによって呪的な意味を持った名である。逆に呪的な意味を持たない名付けは号として扱われる。名付けの儀は相手との感情の結びつきと、縁を結ぼうという意思が不可欠になる。名付けをもって契約とすることも少なくない。それだけ名というのは重要だという事だ。

己の真名を把握する事もしない事も、呪術師には同程度のリスクを伴う。真名を支配されれば抗う事は難しいからである。だが、己の真名を知らぬ者から真名を知ることは難しい。だから、己の真名を守るために知らないままでいるというのは一つの選択肢として在り得る事ではある。当然、真名を伴う儀式はできないし、真名を支配された時に抗う術が殆どないが。己の真名を知ることのメリットデメリットはその逆になる。どちらがいいと一概には言えない。

真名のやり取りは重い。それこそ、己の一生、場合によっては死後や来世まで賭けることになる。真名を用いてかけられた呪いは相手の魂さえも苦しめられる。故に、軽い気持ちで交わすべきものではない。知られてしまったものをなかった事にすることはできないのだから。

外つ国の文化にある洗礼名というやつがどのくくりに入るかと言えば、それはやはり真名に近い通名になるだろう。不変であり、呪的な意味を与えられるが、他者と共有しているものでもあるからである。宗教的な意味を伴うためにただの本名よりは呪的に重くなるのも確かだが。ちなみに、子供の時分に親によって受けた洗礼よりも長じてから己の意思で受けた洗礼の方が呪的拘束力は高くなる。これは与えられた名に対する意識の差であると推測される。与えられる名を只受け入れるより、己の意思で求め受け取る方が強く刻まれることになるのはまあ当然の事だろう。

号とは、呼び名として、他者と区別するためだけの用途で付けられた名である。広義ではあだ名、ニックネームも号に含まれることになる。ただし、その号も愛着が生じれば相応の呪的な重さを得ることになる。名の重さとは、人の思いによって生じると言っていいものだからだ。意味も持たない名は、ただの音の連なりだ。思い入れのある名には意味が生じる。記号でなくなった時点で、それはえにしを宿す。

基本的には、把握していようがいまいが、皆真名を持っている。だが、例外もある。人の手で作られたものは、真名を持たない事が多い。そうしたものの真名は、名付けによって与えられたものを、本人が深く受け入れた場合に刻まれる。それが己の本質であり業であると、認めた時にそれが真名となる、まあ、それも契約者の適切な名付けがあってこその事だろうが。

名付けられる名とは、願いでもある。相手に望むカタチの表れとも言える。それは少なからずそのものの在り方に影響を与える。沿うにせよ、反発するにせよ。だからこそ、名付けに呪術的な意味が与えられるとも言える。

式神と契約を行う場合、号か通名を与える事が多い。それが分霊であれ、本霊であれ、真名を世にかわすことは危険であるからだ。真名を呼べばそれだけ繋がりは深くなり、えにしは強固になる。また、場合によってはその本質と異なる名をつけることでその性質を抑制することを狙うこともある。

名を縛る呪は相手の精神に強い影響を与える可能性がある。支配に属する呪としては軽いものから強いものまで存在するが、組み合わせるものとしては基本になる。しかし、名を封じるとなるとまた異質なものとなる。真名を守る方法としてはこれ以上に確実なものはないが、同時にその力を封じる事ともなる。






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