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【プロローグ1/2】大体、勇者は召喚されるもの

主役は彼であっても、主人公は彼じゃない

「よくぞいらしてくださいました、勇者様!!」

「どうか我が国をお救いください!!」

「お願い致します勇者様!」

「勇者様!」

「「「勇者様!!」」」


 俺は今、連れてこられた部屋の中央で大勢の人に懇願されていた。しかも『勇者』と呼ばれている。

 ・・・うん。

なんか釈然としない。


(どうしてこうなったんだっけ?)



 ☆☆☆




 俺の名前は水野みずの 優希ゆうき

 高校二年になった。部活は無所属…つまり帰宅部で、たまに運動部の助っ人に入ったりして時間を潰しつつ友人と話して帰るのが日課。変わった友人が多かったりはしたけれど、俺自身はいたって普通の人間だと自負してた。ああ、『してた』。


 それは、いつもの学校からの帰り道でのことだった。


 俺はいつものようにやたら帰り支度が早い友人を捕まえて、話ながら一緒に歩いていた。

 話していた内容は最近はまっているオンラインゲーム。この時一緒に帰っていた友人は俺とは性格もプレイスタイルも全く違う奴だったけど、聞き上手でしかもゲームもうまいからよく話していたんだ。いやゲーム下手なんだよな俺。それにアイツは最近の俺の事情っていうか『悩み事』も知っていたから丁度良かった。


 で、しばらく歩いていると、唐突に頭痛がやってきた。加えて例の声も聞こえた気がする。


「(げげっ、いつものあれか?)」

「ん…どうした」

「あっ、いや、なんか頭が」


 ちょっと頭痛がきつくて思わず会話を止めると、友人が不思議に思ったのか聞いてきた。ちなみにコイツ、無表情以外の表情を見たことが無い。さらにいえばかなーり無口だ。初めて話しかけてからしばらくは苦労した。何でもかなりの人見知りと考えすぎだとか。

 とりあえず、きりきりと痛む頭で遠回しに『悩み事』の件だと伝えると、アイツは無表情のままで納得したように頷いた。


「それは振った女の怨嗟の声」

「いやいやいやそれは無い!というかちゃんと断ってるから恨まれても困る!」


 そっちじゃない!いやそれを思い出しても確かに頭は痛くなるけど!?それをネタにするのはやめろ!好意を持ってくれた子を振るのは断る側も大変だし辛いんだぞ、というか今日も大変だったんだからな!お前分かって言ってるだろ!?たまに俺と立場逆転するくせにこの中身残念系無口クールくんがっ!!


「仮に、それ以外なら」

『仮に』は余計だ。


「…いつものアレか。最近ますます増えてる」

「やっぱり分かるか?いやーおかげでこの頃授業が聞きづらくてさ」


 俺は最近、妙な頭痛に悩まされている。

 それは痛みと一緒に人の声みたいなものが聞こえるというものだ。聞いた感じ女の子の声だと思うのだが、喋っている内容がさっぱり分からない。

 初めのころこそは

「なんだこれファンタジー?ファンタジーフラグか!?」

 と思ったもののそれから数週間経っても別に何事もない。心配した親や友人に色々と連れて行かれたのは記憶に新しい。まぁ、一応頭を調べてもらったりしたが特に問題もないらしいので安心だ。おそらく精神的なものじゃないかとだけ言われたが、別に何か強烈に強いストレスがあるわけでもないので謎は謎のまま。

 今となっては、授業妨害と安眠妨害の原因でしかない頭痛である。


「大丈夫か」


 別に何事もないことを知っているが、それでも心配してくれる友人がいるというのはいいものだ。

 いつもと違って次第に酷くなっている気がする頭痛を堪えながら、「多分大丈夫だ気にすんな」と答えようとして…ふと足元に何かが見えた。


(あれ、これって…)

「何かあるの…か?」


見えたものの衝撃で固まっていた俺の視線を辿って、友人もまた固まった。

 そこにあったのは、よく二次元の世界で見かける・・黒光りする魔法陣だった。


「「えっ」」


やっぱ空想の見過ぎかなって思ったころに来るなよ!?ノリで作った『異世界生活セット(笑)』も家に置いてあるんだよ!?せめてとってくるまで待って!?

そんな思いもいざしらず、魔法陣の光は次第に強くなっていく。

パニックになった俺は思わず逃げようとしていた友人の腕を掴んでいた。


「ちょっ、まっ」

「待て、お前、」


掴んだ瞬間、光は一際大きくなって、同時に俺の意識は暗転した。

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