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月の輪Memorial!!  作者: Yuki乃
EP01 Moon Light
5/52

Moon Light(4)

 ここから学園までは約10kmある、バスなら十五分かかるが、愛車なら八分でいけるはずだ。

 俺はアパートの前に道から二車線の大通りに出る。

「ユーは部長からの情報を俺に伝えてくれ」

「わかったわ」

 さらに右折して美咲新道に乗る。

美咲新道は基本的に直線で、信号が少ないため、他の道よりも明らかに良い上に道幅も広く走りやすい。

 この道なら学園の丘の手前まで真っ直ぐに行くことができる。

「事件が発生したみたい、場所は旧校舎と第三校舎、敵は三人確認、一人は紅蓮龍輝という二年生、『焔硝発火(Inferno:インフェルノ)の能力者』、他の二人は詳細不明、紅蓮龍輝は旧校舎に立て籠もっている模様」

「まずいな、旧校舎は木造だ」

「そっちは寮生の風紀委員で対応しているみたい」

「問題の二人は第三校舎禁止区域の三階にいることが確認されているけど、風紀委員では入れないみたいよ」

「なるほど」

 禁止区域とは第三校舎三階のことで、二年前までは軍事委員会の本部と会議室、作戦室、武器庫、倉庫などが存在しており、三階のフロアすべてを占領している状態だったのだが、2年前の事件以降、軍事委員会は衰退しており、現在の委員は委員長1人だけで、実質ないに等しい。それに活動していない。いや人数が確保できてないから活動できないのだ。

 禁止区域である理由明らかにされてはいないが、他の二権力は揉め事を回避するために、入ることを自発的に行っていない上に、そこに第二校舎からの渡り廊下と第三校舎の三階への階段には立ち入り禁止の看板が立ててある。

 そこで俺たちの出番ということになる。

 立場的には風紀委員会の傘下にあるものの、風紀委員ではないため、潜入することについてのリスクが低いという点と、戦闘力的にも『EARTH部』は他の部よりも優秀であるため、失敗のリスクも低いということだ。

「二人を確保することが目的か?」

「そうみたい」

「それにしては情報が少なすぎる、これでは潜入は難しい、もう少し風紀に情報を聴きだすことはできないのか?」

「聞いてみる」

 そうこうしているうちに『月見坂』に着いた。

 校門で待っていたのは部長と、おどおどした態度でいる、後輩の九戸音子(くと おとこ)である。

 部長である姫神美空先輩はアップル・ブロッサムのロングヘアーでエンパイア・ローズのつった瞳が特徴的、身長はやや低めだが、威厳は十分だ。目がつっているからと言ってツンな属性をお持ちなわけではない。

 次に九戸音子、彼女は一年生で俺の後輩、オレンジ色のツーテールにグレーの瞳で、俺の記憶では非戦闘員だったはずだが、どうやら寮生という理由だけで呼ばれた模様。

「遅かったな、諸君!!」

「後で燃料代は請求するぞ」

「ふぃ~ふぃふぃ~」

「口笛吹けてないし」

「現金な奴め」

「それ意味違うから、俺はコイツを置いてくる」

 そう言って、愛車を軽く叩いた。

 その後、ユーを下し、寮生の駐輪場にバイクを置きに行った。

「よし、みんなそろったわね!」

「4人しかいないわ」

「細かいことはいいの、それじゃ、まずは新情報から、二人のうち一人はここの2-Fの生徒でもうひとりはわからないみたい、このこと話した風紀委員が挙動不審だったから、まだ何かあるかもしれない、でももう時間もないしやるわ、侵入経路は生徒玄関から入って第二校舎の三階の渡り廊下を利用する、今は三階の空き教室に一人、もうひとりは軍事委員会の会議室にいるとの情報よ」

 これらの情報は目を凝らせばわかる。少し移動して、グラウンドに出ると、グラウンドの向こう側に見える第三校舎の空き教室には、確かに男の人影が見える。会議室方はブラインドが邪魔をして見えない。これでよく確認が取れると思ったのは俺だけだろうか。

 一見ただの校則違反の生徒のように見える。これなら風紀下の他の部活に頼んでも解決しそうなものだが、俺たちのような能力者を呼んだということは、他に事情がある可能性が高い。

「とりあえず、ユーと京四郎の二人で突入して」

「わ、わたしはどうしたら?」

 やはり音子はおどおどしている。

「私と二人で待機よ」

「労働する気はないようだな」

 呆れたように言う。

「そうでもないわよ、第二女子寮『神楽寮』の屋上に狙撃手が待機してるみたい」

「何だと」

 思わず屋上を見る。

「しかも、あれは『One-Man Army』つまり観測者無き狙撃者、射撃部に入ったばかりの1年生、倉崎紗音(くらさき しゃのん)、全国中学生クレー射撃選手権優勝の子よ、それに射撃部だから軍事の連中の手下ね、今は『守護部(GUARDIANS)』にも所属しているし。今旧校舎側は守護部と風紀の手柄の取り合いになっているはずよ」

 なるほど、大体の状況が頭の中で図となっていく。

「なら、早めに解決して加勢した方がいいな」

「そうね」

 ユーも同意する。 

「そうだこれ持って行きなさい!」

 投げ渡されたのは、刃渡り20㎝のダガーだ。」

 そして部長が手を振りかざしたのを合図に走り出す。

「ミッション開始よ!!」

 俺とユーは予定通り、生徒玄関から入り、駆け足で第二校舎まで行く。

廊下は窓から差す『満月の光(Moon Light)』に照らされ比較的明るい。俺たちの足音だけが廊下に響き不気味さを際立たせる。

 第二校舎の階段の前で停止する。

「ここからは警戒して行く」

「うん」

 ユーが頷く。

 なるべく音を立てないように三階まで階段を上りきる。50mほど直進すると渡り廊下の立ち入り禁止の看板が鮮明に見えて来る。

 そして看板の前で立ち止まった時、渡り廊下の向こうに人影が見えたのだ。

「!!」

 慌てるようにナイフに手をかける。

 ユーも攻すぐに撃の構えを見せて動きを止めた。

 その男は長身でガタイがよく、腰にはデザートイーグルを携帯しているようにも見える。

 こういうよくわからない敵にこそ俺はコイツを使う。

「『回路解析(analyzer)』起動」

 冷静にそう唱える。

 頭の中の複雑な回路の一部に信号は走り、覚醒していく。

 俺の視界が一変して、ユーを青くとらえている。『回路解析(analyzer)』を起動中は、視界に入って来る人間を無能力者なら白、それ以外なら、様々な色に見えてくる。

 超能力とは人間の脳の覚醒によって発生する。通常の脳は10%ほどしか使われておらず、それ以上の活性によって使用領域が拡大した時に能力が発生するとされている。

 超能力の分類方法には『五角柱表示』と『五角形パラメーター表示』が主流であるが、ここでは『五角形パラメーター表示』説明しよう。

 『五角形パラメーター表示』の五の能力分類は『強化系』『EARTH系』『物質系』『時間系』『変化形』に大別されており、この五つの値の変化によって能力は異なる。これが五角形の部分である。

 次にその五つの能力にはプラスマイナス表示のパラメーターが存在しており、これによっては能力の効力が異なることなる。

 例えば、『物質冷却(Refrigeration:レフリジレイター)』であるとプラスマイナスの効力が反転すれば『物質加熱(Over heat)』に変化してしまうようなものもある。これらはプラスやマイナスのような方向を持っているように見えるので、数学用語だとベクトル量に例えると わかりやすい。

 しかし俺たちの能力のようにプラスやマイナスのような方向がないものもあり、数学用語だとスカラー量に例えられる能力も多い。

 改めて、彼を見るが彼は白く目に映る。つまりはノーマルということになる。

「奴に能力はない」

 俺たちは先手必勝で踏み込もうとした時のことだ。

「……」

 彼は何も言わず、ただ、「来い!」と言わんばかりの視線の俺たちに送って空き教室の再び入って行った。

 俺の能力は壁一枚通してもわずかにぼやけて、色が見えて来る、つまり透視に近いが、イメージ的には透かしてしるのではなく、人間の方が眩い光を放っていて、それが壁を貫通するイメージ、つまり、裸が見えるとかそういったことはない。

 俺の能力でみる限り、彼は、開けて窓に腰を掛けたまま、俺たちが入って来るのを待っているように見える。

 ゆっくりと前進していく。

 中央の階段手前には四つの部屋があるがどれも空き教室になっていた。どの教室にも『Keep Out』と書かれた黄色と黒のテープで閉ざされており、まるで何かの事件現場を連想させる。中央階段の奥には軍事委員会の施設が並んでいた。

 そして俺たちはついにその教室に到達した。

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