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月の輪Memorial!!  作者: Yuki乃
EP01 Moon Light
4/52

Moon Light(3)

 その後俺たちには何ごともなく買えることができた。

 俺の住んでいるアパートは学園からバスで15分くらいの場所にある。2年前にできたばかりの新築だ。部屋は2LDKでキッチンもバスもトイレも全部ついている上に、ベランダまである。それに3階からの景色は中々のものだ。ベランダから石狩川が見えるのが特徴的で、冬にはダイヤモンドダストが見られることも ある。

 このアパートにはユーと俺の2人暮らしなのだが、時々3人になる時がある。それはその時にでも説明しよう。

 帰ってきてそうそう、お腹空き具合がそろそろ限界だったので、俺はただちに豚しゃぶの準備を始めることにした。

「ずいぶん、手際がいいのね」

 ユーは相変わらずのクールな感じを保ったまま、茶の間の食卓テーブルで俺の鞄に入っている、今日、図書室から持ってきて本を読んでいるように見えるが、あれは演技で、実はごはんが待ちどうしてくて、気を紛らわせているに違いない。

「もう、少しでできるから待ってろ」

「別にそんなことは聞いてない、それに待ってない」

 プイっとそっぽを向いてしまった。

「そっか」

 そういうところが可愛いところでもある。

 俺たちの関係は特に恋人とか夫婦とかそういう間柄ではなく幼馴染であるということは説明した、それだけではこの状況の説明としては不十分となってしまうだろう。

 俺たちの関係はもちろんただの幼馴染ではない。

 それはもう生まれた時からの幼馴染なのだから!!

 幼稚園は勿論、小学校、中学校、それに高校とずっと同じだった上に今は2人暮らしみたいになっているが、月代特区から見てもっとも外周になる北都区に住んでいたころも隣り近所だった。

 鍋をガスコンロに写し肉をテーブルに並べる。

「よし、食べるか」

「いただきます」

「いただきます」

 さっそくユーは肉を3枚も取って鍋に放投げる。

「あらぶり過ぎだ」

 俺は野菜や豆腐、キノコ類を鍋に投入していく。

 ユーがサッと肉を取り食べようとする。

「それまだ赤いぞ」

「嘘!?」

「本当だ。それしゃぶしゃぶ用の肉じゃないんだから」

 豚バラは割と厚いので食べごたえはあるが、火が通るのに時間がかかる。

 ユーは今餌を貰ったのに「待て」された飼い犬の様な気持ちだろうか。

 シャリシャリと湯がいたくらいのかなり生のネギを食べていた。

「辛い」

 涙目だ。

「まったく、ほれ、もういい奴あったぞ」

「そう」

 と言って皿を出した。

 それからというものユーは見かけに寄らずの大食いなので、もう既に豚バラは3パック目に突入していた。

 多めに買っておいて良かったな。

 ユー暮らしていて一番かかるのはもちろん食費だ。だがそれ以外はあまり使わないので、家計を預かる身としてはありがたいことだ。ユーは食欲が旺盛だが、服 とかそういったものこだわりは少なく。基本的に制服で出歩いている。これには単にこだわりがないという訳ではなく、ここ制服は炭素繊維とワイヤ繊維の複合 繊維によって編み込まれているので、防弾服としても使えるからだ。だが防げても同じところに1発が限界で50口径などの大口径の銃弾を防ぐことはできない ので、万能というわけでもない。

「明日からの活動予定表もう来てたか?」

「ママ」

「食べながら話すんじゃない」

「まだよ」

「そうか、部長にしては珍しいな、いつもはしっかりしてるのに」

「そういう時もある」

「そうだな」

 ……

 食事も終わり俺は食器洗いを、ユーは制服のままソファーの上で『ジジ』という名前のウサギを直立させたようなデザインの抱き枕を抱えながらテレビを見ている。俺もまだ制服だが……。

 ブーブーブー!!と着信のバイブレーターが鳴る。

 台所に置いてある俺の携帯だ。まだスマートホンとかにしていないので、折りたたまさる仕様の黒い携帯だ。

『姫神 美空』と標示されている。この人は『EARTH部』というかなり謎めいた部活の部長である。

「もしもし」

「今制服?」

  突然メッチャラフに話かけてくるこれが部長だ。

「何のようですか?」

「緊急指令よ!!」

「今の時間からですか?」

 流石の俺も驚くのは無理もない。緊急指令は基本的に校内にいる時に発せられることしかなかったからだ。緊急指令とは風紀委員会からの加勢要請である。

「こんな時間にか? もう7時過ぎだぞ!!」

「そんなこと言ってられないんだって、頼むわ!! 他の子たちはリニア通学だからさ、近い順で頼めるの京四郎とユーリ、それに私と同じ寮生の音子ちゃんしかいないんだよね~」

「つまり今から速攻できてほしいんですね?」

「もち」

「こっちも金かかるんだが、仕方ないな、俺は準備するからユーに詳しいことは伝えてくれ」

 そう言ってユーに携帯を押し付ける。

「私がテレビを見ているのに強引ね」

 そう言って携帯を受け取った。

「下りるぞ!!」

 アパートの外の駐輪スペースからゴッツイ車体を出す。

 『HONDA VFR1200F』それがこいつ型番だ。1200cc以上の排気量を誇るバイクだ。色はブラック、俺の愛車だ。

 美咲市では16歳から自動車免許が取れるので問題はない。 

 ヘルメットを被り、エンジンを始動する。 

「乗れ」

 ユーは後ろにいつものように乗りヘルメットを被った。

「しっかり捕まってろよ」

 俺はゆっくり加速し駐車場を出た。

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