Short Holiday(6)
ゴールデンウィーク四日目、一日目は大きな事件というか内部抗争があったが、その後二日、三日と特に目立った事件や事故はなく。
組織だった事件もないし、あったのは酒に酔ったサラリーマンにイザコザや学生の喧嘩程度で初日と比べると銃撃戦もないし、可愛いものだ。
今日も朝十時には『宮下中央駅』前に集合していた。
今日からはいつものメンツではない。
昨日風紀委員会から直接連絡があったのだが、人員がそこまで必要なくなったとのことで、今ここにいるのは俺、ユー、部長、御影先輩の四人だけ、九戸兄妹は一般生徒なので人員を減らすなら妥当な判断だ。
それに初日のあの事件以降、武装を強化することとなった。前までは替えのマガジンは一つだけだったがもう一つ追加で配られた。それにダガーやナイフなどの刃渡りの小さい武器ではなく少し長い太刀系の武器の装備が推奨されていたので、俺は御影先輩から小太刀を借りることにした。
今日から人員が減ったことは名目上としては『ピーク期間の終了による観光客の減少』であるが、予備の風紀委員で一般生徒を大勢動員した作戦は恐らく初日に失敗に終わり、必要なくなったからだと思われる。だが理由がなかったため昨日まで雇ったのだと思われる。
それにあんな一般人が多くいる繁華街であれだけの規模の戦闘を行う集団であっただけに一般生徒には危ないと判断したのかもしれない。
それでも『EARTH部』が警備に当たっているのには、超能力者がいるからだと思われる。
俺はさて置くとして、ユーに部長が能力者である。通常四人一組で行動することが多い中で四人に一人も能力者はいない。三部隊に一人くらいの確率だ。つまりその辺の一個小隊よりも強いことになる。
それでも風紀委員会にいる能力者の密度、この街の能力者の数は日本のどの都市よりも多いはずだ。
風間風紀委員長からの連絡は五つあった。
それも委員長自ら出向いて情報を手渡したのだ。月代学園から今日出ている風紀委員は全体に二割程度、つまりそちらも精鋭に絞っている。
その文章を要約するとこうなる。
一.下級能力者による窃盗が増加している
二.カジノ付近で銃を持ったマフィアと思わしき人間を確認した
三.『Area Z1192』に破壊された形あり、Aクラスの能力者の犯行である可能性が高い
四.『Area Z1086』に侵入の形跡あり
五.ピークを過ぎたからと言って気を抜かないように
とのことだった。
『Area』から始まる区域は花咲区の地下のことで地下街はA~Fまでの符号が振られているが、それ以外の符号が付いている区域は関係者以外立ち入り禁止の区域をさしている。
それを通達されるなり、
「これはちょっと厄介かもしれないわね」
「というと?」
部長は眉間にしわを寄せる。
「『Area Z1192』、ここは今使われていない倉庫だから問題ないはずだけど、『Area Z1086』は今も使われている。軍事省の地下実験施設よ」
「やけに詳しいんですね」
「それくらいユーも知ってるはずだけど」
横で黙っていたユーだったがそっと口を開いた。
「興味ないわ」
シレッと言ったが、俺はユーの階級がそこまで高かったことを知らなかったので少し驚いた。
「私とユーは風紀省でも『一人大隊(One-man Army:ワンマンアーミー)』として評価は高いしね、自慢じゃないけど」
「いや、自慢だろ」
「話を戻そう」
「逸らしたのは部長ですけどね」
「ああいう関係者以外立ち入り禁止の場所って普通に考えれば、扉は金属製とかのぶ厚い防弾扉だったり、監視カメラとかムーブ感知センサとかついているはずよ。それなのに侵入の形跡だなんて言ってるということは」
「犯人はセンサ類を潜りぬけるようなステルス系の能力を持っているとも考えられる」
御影先輩と部長にいう通りだ。少し考察すれば誰にでも分かる。
「それに加えて侵入されたことに誰を気づいていないことからすると、かなり優秀な人間の犯行である可能性もある」
何だか雲行きが怪しいが、それでも警備は続行される。
それにこのことはあまり公にはなっていない。テレビやラジオなどのニュースでは報道されていない。インターネットニュースは掲載されているようだが、記事がとても小さく重要な情報が欠けている。
この事件は周知されておらず、風紀省内で事を荒立てずに解決したいらしい。
俺たちは配置も昨日までとは異なり、カジノに隣接する通り『宮下八番街』とカジノ内の警備に別れることとなっている。
カジノは月代学園を経営している『株式会社 LEGEND』が同じく経営しているもので、系列は同じだ。こんな街中にあるにも関わらず、大きな噴水を中心に派手なビルは勿論のことだが、古い洋館と30階建ての高級ホテルと50階の展望タワーがある。
カジノの周りを囲うように深い堀には水が流れていて、それをさらに囲うように木々が生えている。堀は綺麗に整備されているので圧迫感はない。
ゲートは北門と南門が主で北門が駅の方を向いていて正面玄関となっている。それに洋館に直接入れる東門と、非常用出口として西門がある。
どの門も通常は車両が入れないようになっているが、非常時の場合は西門以外で車両が通れるようになるようだ。
駐車場は敷地外に地下駐車場があり、地下でホテルと繋がっており、送迎などで困ることはなくなっている。
補足するが外堀や木で囲ってあるのは防犯上の理由が大きい。
カジノ内で事件が発生した場合に逃走経路を絞ることができ、犯人を逃げにくくする効果やあからさまなので犯罪意欲を削ぐ効果も期待できる。
カジノは18歳未満も入ることはできるがゲームに参加することはできない。
施設を見学くらいだが、中の店舗やサービスはどこも高級なものが多く、富豪や貴族の御用達のようになっているので、地元の生徒が行ってそこまで面白いものでもない。一回行けば十分って感じだ。俺は言ったことはないが……。
従業員はみな正装、カジノでは恒例とも言えるバニーガールもいるようだ。
カジノの周りは背の高いホテルばかりが立ち並ぶので遠くからは見えない。
部長と御影先輩は外の警備、俺とユーはカジノの中の警備をするが昼で配置をチェンジするらしい。それに前は四時までだったが昼夜付きで十時まで行うようだ。
それでも時間は短いようで、風紀委員は夜も交代制で行うという話を聞いた。
よって日当も五千円から一万二千円に大幅グレードアップした。それに二食付きだ。
ユーが特に浮かれているのは言うまでもないことだが、今日はそれを聞いて俺も若干喜んでいる、食費が浮くなぁと。
仕事内容や注意事項を再確認した後、
「そうそう、これを言えばすぐに通してもらえるから」
と言って部長が四つ折りになったコピー用紙を俺に渡して警備に向かった。
「俺たちも行こう」
こうして俺たちはカジノへ向かった。




