Short Holiday(4)
それから直ぐに宮下三番街に着いたというか、『宮下中央駅』から徒歩5分程度で行ける近場中の近場だ。
他の班の中にはそこからさらにバスで移動する生徒も多くいたので、俺たちはかなりラッキーだ。
この辺が駅前ということもありデパートとかも立ち並んでいるが一本奥に行けばオフィス街になっている。
そこからさらに行くとカジノの建物があるらしい。ネオンライトとかで派手にライトアップされて建物が立ち並んでいるのだろう。
宮下三番街は朝早いにも関わらず結構な人がいた。てっきり空いているものだと思っていたが、もうすでにデパートは開いているので特に不思議なことでもないが、月代区に住んでいるとこの時間はガラガラなので流石は美咲市の経済の中心とか思ったりもする。
「それじゃさっそく服でも見に行くか」
遊び気分継続中の光圀がいきなり仕事放棄でデパートに入ろうとしたのだ。
「おい、もう飽きたのか?」
「ていうかこれ別にガチでやる必要ないしー」
ガツン!!と横からグーが飛んで生きた
「どうやら折檻が必要みたいだな」
ふざけて事抜かしてしいると横にいる先輩の本気の一撃を食らうことになる、俺は至って真面目なので問題はないが。
「いや~、あのですね。デパートの中も警備した方が良いっていう遠回しの意味でしてね~」
「まだ言い訳するのか、いいだろう」
指をパキパキッと鳴らして近づく。
「調子に乗りましたすみません」
「もうこのバカ置いて二人で回った方が効率的かもしれないなぁ」
「悪かったと思ってるって、京四郎も何か言ってくれよ」
「そうだな、もしお前がいなくなったら、お前の日当は御影先輩と半分で分けるから、その辺は安心しろ」
「京四郎までひどいぜ」
などと適当に話をしながら歩きまわる。どこも人が少ないので、特に何があるわけでもなく、暇なせいか時間の流れは遅い。
担当区域は30分で一通り見て回れる。
一周したところで配布された小型タブレット端末の無線機能で異常がないことを本部に報告し、近く小さな緑地にあるベンチで休むことにした。
光圀は飲み物を買ってくると言って自動販売機を探しに行った。
御影先輩と俺は少し距離を置いてベンチに座っている。
ベンチは一般的なもので木製の長い板が何個も等間隔でつなげられたものだ。それに雨避けもついているので、直射日光も避けられるので頭が暑くなることもない。
「何もなかったですね」
「そうだな、だが何もないことは良い事だぞ」
「何かあったら面倒ですからね」
俺は小さいカバンから文庫本を出して読む。
「京四郎くんはこんな時でも本を読むんだな」
「こんな時だからですよ。俺が平日本を読めるのは放課後と寝る前だかですから、こういう時こそ本を読まないと」
「授業中は本を読まないのか?」
どうやら俺は真面目に授業受けてないイメージがあるようだ。
「確かに読んでいた時期もありましたけど、本読み始めると周りが見えなくなるようで、先生にばれて本を没収されたんですよね」
「なるほど、でもいつも部活中は周りに反応するよな」
「話に参加しないとこんどが部長に没収されるので、あまり集中いて読んではいませんね」
「なるほどな……どうやら九戸が帰ってきたようだ」
光圀はペットボトルドリンクを2本持っている。
「御影先輩もどうぞ」
買ってきたお茶を手渡す。
「良いのか?」
「全然OKです。何かナンバースロットで当たってもう一本出ただけですから」
あれって当たるんだな、俺はてっきり期待させるだけの飾りだと思っていたのだが。
「もう一本は俺にか?」
「そんな訳あるか!!」
「俺たちの友情はどこに行った?」
「女の子の二の次だね」
何て良い顔してるんだコイツは。
「何か悪いな、私だけ貰って」
貰ったお茶を握りながら言う。
「俺も来る時買ったお茶があるので大丈夫ですよ」
そう言って、さっきの鞄からペットボトルホルダーに入ったお茶を見せる。
「そうか」
だがあまり良い顔はしていなかった。
「そうだ、さっき自販まで行く途中に大名行列みたいな人たちがいたぞ、俺たちもいこうぜ!!」
「へぇー」
「興味なさげだな」
「何か問題が起こるかもしれないし、行って見た方がいいな」
御影先輩の一言で見に行くことが決定した。
光圀が買いに行った自動販売機は結構遠かったようで、歩いて5分くらいかかった。一本曲がった先にある。
その自販機の通りの反対側を見ると向こうに黒服のSP的な恰好をした人たちが数十人にポニーテルの黒髪で腰には日本刀を持っている俺たちと同じ制服を着た女子が三人、それの中心には改造巫女服みたいな動きやすさを重視したような丈の短く、制服と同じ素材のものを着た黒髪で長髪の大和撫子、どこかで見たことあるような黒い瞳は従者と思われる制服の女子に向いている。何か話している様だ。
「確かに怪しげだな」
御影先輩は顎に手を置き言った。
「部長に連絡取ってみますか?」
「そうだな、それが良い」
俺はタブレットを起動して、画面から無線ソフト『M Radio』を起動する。周波数はあらかじめ調整してあるので、そのまま通信できる。
『こちらT-12、T-12、T-11応答せよ』
『どうした~、何かあったか?』
何かやる気のなさげなゆる~い部長の声が聞こえて来る。
俺が頑張って形式通りに通信したというのに……。
『宮下三番街二丁目付近で巫女服と多数の黒服がうろうろしてるんだが、何か報告聞いてないか?』
状況を事細かに説明する。
『いいや、こっちは何も報告受けてないけど、巫女服でしょ、もしかしたらあれかもしれないわね』
『具体的にお願いします』
『まあ、私の憶測なのだけど、その巫女服って日本刀ぶら下げてたりするのかな』
『そうですけど、どうしてわかったんですか?』
『その人たち、たぶん理事会の直下の結界師あたりじゃないかな。それから『三人の舞姫』の一角かな?』
『三人の舞姫』とは、俺たちの学園よりも山の上の方の深い森の中にある古い神社に住んでいる三人の姫巫女のことだ。この名は一般的に通っている名前ではなく、風紀と軍事とかそういう所で通っている名だ。流派とかそういうのは詳しくしらないが、剣術に長けており、さらには何等かの超能力をかなり強いレベルで持っているを噂されている。つまりこの美咲市ではかなりの凄腕の持ち主であるらしい。
俺は今初めてみたので、何とも言えないのだが。
『そうだったのか、じゃあスル―しといていいんだな』
『事情くらいは聴いてもいいと思うけど、それでも問題ないんじゃない』
『わかった』
『じゃあ引き続き頼むよ~』
『部長こそ』
そう言って通信を切った。
「聞いての通りです」
「へぇ~、あれが噂の巫女さんね、写真取っておくかな」
光圀が携帯を出してパシャリと、俺がせめてフラッシュはたくなよとか言う前取ってしまったのだ。
二、三十メートル離れているとは、これは流石に見つかった。
「何者だ!!」
黒服の男が拳銃を出して構えた。
どうすんだよ!! この状況!!
御影先輩は冷静に角からこっそりの覗くような態勢を止めて堂々と路地に出た。
「私は臨時風紀委員でこの地区担当の治安維持として配置されている者だ。怪しい恰好をしていたのでn撮影しただけだ」
流石は御影先輩だ。あの光圀の隠し撮りみたいな行為を正当化したのだ。
「なるほど、例の風紀の治安維持要員か」
何だかよくわからないが、風紀委員会に対してあまり良い印象ではないことだけはわかる。
「それは失礼した。我々は理事会直轄特殊治安維持科のものだ。君たちが我々に気にせず、巡回をしてなさい」
「一応、ミッションの報告は受けていないでの、活動内容報告義務がこちらにはありますので」
そう言って彼らに近づいていく。
「何だ、その口の訊き方は、報告はている。お前たちの上司にもう一度問い合わせることだな」
「ですが」
「だから何度も言わせるな、クレセントの癖に図に乗るなよ、この世界には暗黙のルールというものがあるのだよ」
黒服の男が拳銃に手をかける。
それと同時に腰の刀に手をかけ抜刀できるような態勢になった。
「階級は関係ありません」
クレセントとは校章の中央についている月の形のことで三日月のこと、月が満ちるほど階級が上ということになり、三日月は一般人を表しており、半月からはこの都市の権力の三本柱にどれかに属していることになる。
俺たちはアルバイトみたいなものなので校章の模様は三日月のままだ。
この制度の目的は事件や戦闘が起きた時の避難時に一般人と関係者を一目で判断できるようにすることで、三日月は優先的な安全な場所に避難する権利を有しているからだ。
その男の胸についている風紀でも監査でも軍事でもない羽で月が包み込まれるような形のバッチには半月と☆が一つ付いている。何等かの階級を持つことはわかるが、その辺のことに詳しくないので階級の名前とかまではわからない
一触即発というところでさっきまで見ているだけだった巫女服の少女が前に出て来る。
「落ち着いてください」
静かに言ったその一言で場が一瞬で静まりかえり、黒服の男が一歩後ろに下がる。
この街の現代的なビルが立ち並ぶビルとビルの間の小さな路地で、一際浮いている古典的なデザインの巫女装束をアレンジしたような長けが短くなっていて足がかなり露出している。それだけではなく腕もかなり露出していて、コスプレだと思ってしまってもおかしくないほどにデザイン性に優れた服を着ている。
黒髪の美しい長髪と黒の瞳が表情をなくしたような声色で淡々と話している。
落ち着いているや冷静よりも無関心な瞳と言った方がしっくりくる喋りだ。
「私たちは軍事省所属の理事会管轄の者ですので、この区域の治安維持を担当しているものです。ですから仕事の邪魔をなさらないでいただきたいのです」
この状況を簡単に解説すると、風紀省と軍事省の両者ともにゴールデンウィーク中の警備強化のためにこの地区に職員や委員を配置しているようだ。
よって警備している地域が被ったらしい。
そしてこっちが不審者だと思ったのが軍事省の警備だったため、元々仲の悪いので、喧嘩腰になっているという訳だ。
敵対している者に不審者扱いを受けたとなれば確かにあの怒り方も納得はいく。
「こっちも仕事で行っていることだ。そもそもそんな恰好で出歩いていて、不審に思わない方がおかしいではないか!!」
先輩はここでも一歩も引かない。
「この巫女装束は私の制服のようなものですので、そんななどと言わる筋合いは御座いません」
「うぅ……」
「それでは私たちはこれで失礼したします。仕事はまだ残っていますので、呑気にお話している時間はありませんので」
一礼して彼らは俺たちのいる方向とは逆方向に歩き去って行く。
「!!」
先輩は一瞬キレたかと思ったが、すぐに冷静ないつもの顔に戻った。
これでこの件は一件落着で思えたがそれは大きな間違いだった。




