Moon Light(1)
図書館の個室の読書ルーム、そこに何十冊も本を積み上げジッと本を読み続けている。静かな部屋は本をめくる音だけしか立てない。
4時になり、チャイムが鳴る。
俺はやっとこっちの世界に戻ってくる。やけに高級そうな銀の腕時計を見て時間を改めて確認する。
「もう、こんな時間か」
そう呟く。
俺は持っている一冊を鞄にしまい、他の乱雑に詰みあげられた本をそのままに読書ルーム出てポケットから取り出した鍵で施錠する。
そう、ここは本の貸し出し件数が多い順に割り当てられる。読書好き専用の読書部屋となっている。どうやら図書館の改築の時にあまりにも大きく作りすぎた ようで、大量に部屋を余してしまったらしい。図書館は面積こそは普通であるが上に3階建て、地下に5階まであると聞いてことがあるが、実際は地下2階以降 は関係者以外立ち入り禁止であるため、何階建てなのかは正確には知らない。
俺の名前は各務原京四郎、この世界ではまだ認知されていない超能力者の一人で能力は『解析(Analyzer)』と呼ばれている。基本的な日常生活どころか自分を守れるようなものでもない。
読書ルームは地下2階にあるので階段をゆっくりと上がり、インフォメーションにいる図書委員の月宮さんに一礼し、図書館を去った。
図書館と第一部室棟は連結しており、渡廊下で行き来できるようになっており、第一部室棟と第一校舎は連結しており、渡廊下で行き来できるようになっている。この後第二校舎と第三校舎も同様となっているが、第二部室棟だけは別の場所にある。
このような感じでこの学園はとても広い。
それで今俺が向かっているのは、とある部室だ。第一校舎の図書館側の渡り廊下から見ては左奥、第一校舎側の渡り廊下から見てすぐ右にある部屋が部室となっている。
2年になって登校初日に部活があるのは珍しいみたいで、今この部室棟にいるのは俺たちくらいであると思う。
鞄から携帯を取りだしてメールをもう一度確認する。
『To:a-libraian-book@xxxxx.co.jp 件名:今日は4時半に部室に集合(>_<)』
やはり間違いではないようだ。
長い廊下を端まで歩きその中の一室の前で止まる。ドアには『IN THE ROOM・GOING OUT』と書かれた紙にマグネットが一つくっ付いている。
そして木製の弩デカい表札が置かれている。例えるなら家刑事ドラマの『XXXX事件捜査本部』とか書かれているあれに近いものを感じる。
そこには『EARTH部』という謎の部活動が宣言されている。ヘッダーファイルでも間違えたのだろうか?
こいつの名称は『Extracurricular Activity to Record The Historic event』約してアース部と呼んでいる。
日本語で言うならば、歴的大ニュースをこの目で記録しようみたいな趣旨を名目に創られた部で、過去も現在も未来も恐らくは仲良い奴らのたまり場みたくなるののだろう。
だがやる時はやる!!
これが座右の銘であると信じたい。
あらためてその紙を見ると『GOING OUT』の方にマグネットが置かれている。
「いや、そんな事はないはずだ」
俺は慌てて携帯を出しメールを確認するが、どう見ても4時半にしか見えない。考えられるのは午前と午後を間違えてくらいである。
だがおかしい部分は他にもあることに気づく。
何で俺にだけ宛てられたメール何だ?
普通、部長からのこういったメールは部員全員宛ての一斉送信のメールであることがほとんどだ。
とにかく入ってみるか。
ガチャッとドアノブを回すと鍵は開いているみたいで、扉が開く。
扉の向こうから今にも暮れそうな夕日からの赤い日差しが差し込み、その中に、窓の外を見ている女子学生が一人立っていた。
何だ、この光景は?
そう思いながらも恐る恐る部室の足を踏み入れた。
ドアの音に気付いた女子学生はこっちに振り向いた。
「久しぶり、京」
エメラルドグリーンの透き通った大きい瞳、グラスグリーンのセミロングの髪が特徴的なクールな少女がそう言った。
「3か月ぶりかなユー」
そう彼女の名前は久遠悠里、いつも大人しく冷静な俺の幼馴染だ。それに成績優秀で学年10番以内の成績を誇る。だが読書は好きではないらしい。そこが一番残念なところだ。
「心配した?」
首をかしげながら言う。
「あたり前だ。と言いたいところだが、ユーなら大丈夫だろうと思ってた」
「そこはか弱い女の子を心配するシーンじゃないの?」
悪戯っぽく笑いながら言う。
「それはユーがか弱い女の子だったらの話だろ、ユーと比べたら俺の方がか弱いな」
「そうかも」
また悪戯っぽく笑う。
「今日はわざわざ部長のメールアドレスで呼び出すとは、随分凝ったサプライズだな」
「これくらいでもしないと京は驚かないと思って、それどころか、気にもせず本読んでるみたいなことしててもおかしくないから」
「確かに」
これには納得せざるおえなかった。
恐らく戻ってきても「おう、もう帰ってきたか」くらいしか反応せず、いつものように本を読んでいるに地下街ないからだ。
「驚いた?」
「もちろん、ここまでのサプライズで驚かない奴の方が珍しい」
「お褒めに預かり光栄よ」
「それで行った成果はあったか?」
「まずイギリス支局に行ってきた」
「どうだった?」
「まずまず、でもシュバルツバルト大佐には会えた」
シュバツルバルト大佐とはイギリス軍の特殊部隊の隊長で『高速(High Speed)』の使い手だとかとうい曖昧な情報しかない。
ユーがヨーロッパに行ったのには理由がある。
一つ目は依頼を受けたからだ。
俺たちが所属する私立月代学園は総合警備会社の『LEGEND』という警備会社下になる学園で、警備・警護するものを育成するために創られた高等教育機関だ。
ここ北海道美咲市以外にも日本全国点々と存在する。その中でも本校というか1番目に設立されたのが月代学園だ。この系列の学園には名前に『月』の文字が必ず使われているらしい。由来はこの学園の創設者の苗字が『月神』だからだそうだ。
現在もこの学園でもそういったカリキュラムを行ってはいるが、そういった学科は存在せず、任意で教える制度になっているため、基本的には普通科と変わりはない。
任意で教えるというのは課外授業ということだが、授業は行わない。その代りに部活という形で行われる。
それに該当する部活を紹介する前に学園の統治する制度を紹介する。
この学園は生徒自身で様々な活動ができるように、風紀委員会・監査委員会・軍事委員会の3つの権力に別れている。
風紀委員会は主に学園の風紀が乱れないように注意を促したり、時には喧嘩や揉め事の仲裁、服装チェックなどを行っている。言わば警察のような存在である。
監査委員会とは、主に部活やその他の委員会の財務に関する権限を有しており、予算配分は生徒会の仕事であるが予算執行は監査委員会の仕事となっている。
最後の軍事委員会が特徴的であると言える。
主な活動は風紀委員会で防ぎきれない大きな事件や事故の解決および外部から戦闘行為に対する完全な武力行使を行うことができる機関であるが風紀の上位互換ともいえるため両者の線引きは難しい。
この3大権力にはこの都市の仕組みと大きく関わっているのだが、ここでは話が長くなりすぎるので今は省略する。
本題の該当する部活の監査所属はアーチェリー部のみ、軍事所属は守護部、狙撃部、剣道部、超能力研究会、ミリタリー同好会、薙刀部、風紀所属は科学部、空手部、射撃部、そして我らがEARTH部だ。
その中で総合警備会社『LEGEND』にスカウトされているものが存在しており、その一人が久遠悠里である。
正確には入社という訳ではないが判断能力や『One-Man-Army(単独戦闘力)』を高く評価されていることは間違いない。
何せ今回もユーは一人でミッションを行ったのだから。
「話に進展はあったか?」
「そこそこ、大佐とはこっちに交換留学できている娘の話ばかりされたわ、その子今守護部に所属しているみたい。大佐とは味方同士でもその娘さんとは敵同士とか何かとっても複雑だった」
そうこの3大権力は常に競い合い時々武力抗争まで引き起こしている。その時に召集される可能性が高いのがその傘下に入っている部活だ。
つまり敵同士とはそういうことだ。
「せっかくなのに仕事の話ばかりさせるのも悪い。今日はもう帰ろうか?」
「そうね、お腹が空いたわ」
時計は気づかない内に4時半をとっくに過ぎていた。
「俺も昼飯食い損ねたから空腹だ」
「今日の晩御飯は豚しゃぶで♪」
なぜここで上目使いなんだ!?
そんなこんなで俺たちは家に帰ることになった。
結論から言えばシリアスな状況であっても空腹には勝てないということだ。




