Audit Committee(3)
~Misora Side~
図書館の自動ドアを潜り中に入る。
だが様子がおかしい。図書館内は異様な静けさ、人払いがされていることがわかる。図書委員すらいない。生徒会権限を利用したに違いない。
俺たちは音を立てないように近くの本棚と本棚の間に身を潜めた。
「部長、どうします」
「そうね……ここから脱出してもいいけど、さっきの手際の良さから察するに中で張っている可能性もあるし、外で待ち伏せもありうるわね。私が外の様子を見てくるから、ここから動いちゃダメよ」
「わかった」
部長は素早い動きでいなくなった。もちろん足音などしない。さっきは俺のペースに合わせてくれたことになる。
俺はもう一度『回路解析(Analyzer)』を発動させた。
高速で移動している部長を青くとらえた。辺りを見回すと一階に白い光が複数見える。3階は誰もいない。
すぐに部長が戻って来た。
「外は固められてるわ」
「下も敵だらけだったが上にはいなかった。後この階にも」
だがユーが心配だな、あの中に能力者がいる。詳しい解析には時間がいるので能力タイプしか判別させなかったが『Riot』という能力であることがわかった。浮かんだのはアルファベットのみであったため、詳しいことはわからないが『暴走』を意味する『Riot』と緑色の光つまり『強化系』であることから察するに、何かのステータスを一定時間最大にする能力であると俺は推測した。
強化系の特徴は自分の体の一部または全部の強化にあるので、ユーの能力に有効に働く能力は少ない。
「悠里が心配?」
「少しだけ、あの中に能力者がいたから」
突然足音が聞こえだす。階段の方だ。
「どうします?」
「京四郎は私の後ろに着いて来て、バックアップして」
「わかりました」
俺たちは本棚の間を次々に移動して、階段の近くまで来た。階段は全部で3カ所、一番大きいのは中央にある階段で、図書館内の中央吹き抜けになっており1階から3階まで見えるようになっている、そこに螺旋階段がある。もう2つは図書館をシンメトリーになるように両端に1つずつある。そっちは普通の階段となっている。
俺たちがまず最初に向かったのは中央の螺旋階段だが、そこから下を見るにぞろぞろと『グロッグ17』を持った監査委員がうろついている。
その中に一人だけグレーに光る奴がいる、女子生徒だ。グレーは白の上位互換であるらしい。つまり能力覚醒の一歩前の段階まで来ている人のことだ。御影先輩もそれに該当している。
「ここを突破するのは無理ね」
「それに一人やり手の奴がいる」
「それたぶん生徒会長よ」
「え!?」
「声が大きいわ」
何だかよくわからない内に大ごとになりつつあるようだ。確かに俺たちが風紀委員会から監査委員会に鞍替えすれば、戦力差はかなり開くことになる。
捕まえて拷問でもする気かね?
「左階段に移動するわよ」
「了解だ」
それから左階段、右階段に行ったがどちらも4人以上いて突破はできるがそれを抜ければ中央にいた連中とやり合うことになる。そうなれば俺の身がもたない。
「となると」
「中央突破が手っ取り早いわね」
俺の部長の意見が合う。確かに左右の監査委員を倒した方が楽だが、結局玄関は一つしかない。つまり中央階段で見張っている奴らとも戦わなければならない訳だ。なら最初から書 中央突破した方が効率的である。だが一瞬で突破しなければ意味はない。
俺の中にはもう一つ案があった。それは左右を叩いた後で中央突破する方法だ。これなら中央突破に時間が掛っても囲まれる心配はない。だがこれにも問題は生じる。この方法自体が中央突破に時間が掛かることが前提となっていることにある。弾薬を消費した状態で勝てるかどうかが分からない。だが八方ふさがりになることはないだろう。これなら退路を確保できることになる。
こっちを提案しようも思ったが、部長がチマチマしたことをあまり好まないので却下されるだろう。
「俺はどうしたらいい?」
どう考えても足手まといだ。部長一人ならどうにでもなる状況、俺がいるせいで強行的なアクションだけでは二人脱出は難しい。
「そっか、京四郎もいるのか!! これじゃ突破はできないね」
「やっぱり」
何だか残念な雰囲気になってしまった。これで俺が足手まといなことが証明されてしまった。少し悲しい気持ちになるのは仕方ないことだ。
「京四郎はここで隠れて待ってなさい」
「わかった」
部長が再び走って行った。
それから数十秒後に銃声が響いた。
部長はまず左階段を駆け下りた。
「いたぞ!! 撃て!!」
階段下で張っていた監査委員が一斉に撃ちだすが、やはり一発たりとも命中しない。
部長は正確な射撃で次々に倒していく。
ある程度倒すと一端上に引き上げ、右側も同じ様に倒していこうとした。
階段にさしかかり降りようと階段に出た時だった。
ババババババッババババッ!!!!
突如『Colt M16』が火を噴いたのだ。
「この弾数なら処理しきれないでしょ」
そう言ったのは生徒会長の椎名緋煉だ。『Colt M16』を片手で持ち、両手で2丁、フルオートで部長を狙ってきたのだ。
さっきまで中央にいたはずだ。
まさか、こっちの動きを先読みされたのか。
確率は三分の一、いや中央突破を考えないとすれば二分の一、偶然も十分あり得る数値ではあるが、普通中央から動くことない。いずれ中央に行かざる負えない状況になるからだ。
「しまった!!」
部長が慌てて引き返そうとしたが間に合うはずもない。
七、八発の5.56×45mmNATO弾が胸や溝内、肩に命中して後ろに飛ばされたのだ。
「残念だったわね姫神、あっちでうまくいったからって調子に乗っちゃだめよ」
その光景を能力によりとらえていた。
俺は言われたことを無視して走りだした。
俺は階段か30m常所で監査委員が2人、階段を上って来る。
俺は走ったまま狙い撃ちにした。
監査委員が撃たれて蹲っているのを見た会長が牽制射撃する。だが会長は階段を上って来ないので当たらない。
階段から10mほどの距離で気絶している部長が見えて来る。
俺は数発威嚇射撃した後、銃をしまい、部長を抱き上げた。俺はよくユーを抱えたりするので、ユーよりも部長は小さいのでとても軽く持ちやすかった。それに戦っている時は感じらないほど細く柔らかい体に密着すると微かに甘い女の子特有の匂いがしたのだ。
だがそんな余韻に浸っている暇などない。俺はすぐさま走って逃げる。
「突入だ!!」
後ろでは生徒会長の命令とともに中央階段を張っていた監査委員が一斉に2階に上がるのが『解析(Analyzer)』で確認できた。
まずい、このままだと包囲されて袋叩きにされる。俺は部長を抱いているので銃を取り出せない。一瞬部長の銃ならスカートの中なので取り出せると思ったが、さっき床に倒れた時の衝撃で銃を離してしまっている。
俺はなるべく遠くに逃げるようにかつ見つかりづらいルートで移動している。
右側の壁の突き当たった時、『関係者以外たち入り禁止』の黄色と黒のラベルが付いた扉が目に入る。
鍵穴が銃弾を数発受けて破壊されていた。俺はドアノブを回し金属製の防火扉のようなドアを開けた。ここで何があったかわ知らないがとりあえず助かった。
天は俺たちをまだ見捨てていなかったと言わんばかりに扉が開いたのだ。
中は薄暗い通路になっていた。バックヤードとかそういった類の場所ではなかった。廊下くらいの幅で段ボールがいくつも通行の邪魔にならない程度に置かれており、中は弾薬や手榴弾系のものばかりだった。窓はなく壁のスイッチで蛍光灯が点灯したが数が少ないため暗い。
通路は左に一回曲がっていてその先に下に続く階段があった。
考えているだけ時間の無駄だ。どっちにしても戻ることはできない。なら進めしかないだろう。
階段を下りるが一階に降りる階段ではなかった。おそらくこの天井が一階の床であろう場所の階段の天井が開くようになっており、簡易梯子が下りたたまさっていた。
階段は地下に入ったと思われる所で終わっていた。壁にあるスイッチで灯りを点けた。そこからは段ボールも何もない通路となっていた。そこひたすら100mは歩いたと思う。
そこに再び上りの階段が現れその先の金属製の重くて厚い扉を開けて外に出たのだった。




