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すきや

作者: 土溝井

 トングから落ちた紅生姜が牛丼の上に着陸する。

 懐の深い牛丼は紅生姜をあたたかく迎える。

 残酷な箸が紅生姜だけを掴んで持っていく。

 牛丼はけたたましく泣く。

 紅生姜だけ食べるならどうして俺の上に載せたんだ、と泣く。

 意地悪な箸は牛丼に突き刺さる。

 肉だけが攫われてご飯は残される。

「これあんまりうまくねーな。ベチャベチャしてて」

 再び紅生姜が落とされ、牛丼が迎える。

「こんにちは」

「はじめまして」

 また紅生姜だけ食べられる。

「駄目だ。まずい。もう要らねえわ」

 牛丼は残される。

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