表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

起床

 ぼやけた視界に映りこむ、見慣れたいつもの天井と壁。カーテンの隙間から差し込む薄日が、そこにうっすら光と影の境界線を描き出す。どうやら朝が来たようだ。

 寝ぼけ眼を再び目を閉じ、今度は耳をそばだてる。スズメのさえずり、風の声。したたる水の音はなし。どうやら雨ではないらしい。

 雨の日には、雨の日なりの良さもあるけれど、屋外スケッチをすることが多いワタシにとっては、やっぱり晴れていたほうが都合がいいのだ。

 コロリと一度寝返りを打ち、目覚まし時計を確認する。いつもより10分早い目覚め。ちょっともったいない気もするけれど、今日はこのまま起きるとしよう。

 ゴソゴソ布団から這い出ると、窓辺に移動しカーテンを開ける。そこに広がるいつもの風景。うちの庭木の植え込みも、お隣さんの外壁も、昨日と変わらず同じもの。いつもの日常の始まりだ。

 普段聞き慣れた『日常』という言葉。そこに『つまらない日々の繰り返し』という意味を読み取る人は多いらしい。だけど、ワタシのソレはちょっと違う。

 この世界に、まったく同じ存在がふたつとないように、繰り返される日々もまた、すべてが同じということはない。

 たとえば、一口にワインといっても、それぞれ色や香り、味わいなどに違いがあるという。テイスティングとは、その差異を楽しむものらしい。

 お酒はまだまだ早いけど、ワタシは違いのわかる高校生を目指すのだ。

 その日その日の少しの差異。ワタシはソレを楽しもうと思うのだ。 

 決意新たに朝日に向かい、大きくグーっと伸びをする。こうやって日光を浴びると、体内時計がリセットされるらしい。だけど、その体内時計って一体どこにあるのだろう? やっぱり腹時計と一緒で、お腹のあたりにあるのだろうか? お腹を見つめ、グ~って鳴るあたりをさすってみる。

 ジリリリリッ! 

 けたたましく鳴り出す目覚まし時計。ビクッと体が跳ね上がる。

 うっかり、うっかり。

 アラームを解除するのをすっかり忘れていた。思いがけないドッキリに、ついつい笑顔がこぼれ出る。

 少しビックリしたけれど、これもまた、堪能しうる差異なのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ