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「子供の頃から親父と山脈を飯を食うように歩き回って、家の庭より熟知していますから、僕だけを信じてついてきてください」


私たちが村を去ろうとしていた時。

クラドがここに来てから随分と時間が経っていたので。

この先へ進むには道に詳しい者がいた方がいいと、村長が案内人を付けてくれた。


それがアデルだった。

元々はアデルの父親が私たちと一緒に行くつもりだったのだが。

腰を痛めてしまい、彼の息子が同行することになった。

聞けば、アデルの父親も昔、クラドに助けられたことがあるらしい。


「うちの息子は頭は良くないが、幼い頃から私について山脈を駆け回っていたから、道案内だけは一人前です。これ、お二人をしっかりお支えしろよ」

「村へ戻る時はどうするのですか? 一人だと危ないでしょうに」

「勝手に戻ってくるでしょう。私は弱く育てたつもりはありません。できるな?」

「目をつぶってでも戻ってこれますよ」


最近は特に山脈が危ないと言っていたが、これでいいのだろうか。

心配ではあったが、若いからといって腕が悪いわけでもない。

あれほど自信満々に言うのだから、一度信じてみることにした。


ところが、村を出て間もなく大きな問題が発生した。

アデルが口を閉じることを知らず、絶え間なく喋り続けているのだ。


そうだ。

アデルはお喋りだったのだ。

クラドと一緒に過ごすうちに、無表情の中にも微妙な変化があることに気づいたのだが、今は相当不機嫌そうな様子だった。


「コホン……」


しかしアデルは構わず口を動かし続けた。


「……それでですね。僕が最後に熊の息の根を止めてやったんですよ」

「えっ? もしかして村長の家にあった熊の肉、アデルが仕留めたの?」

「ええ。罠を仕掛けて捕まえました。最近村の周辺をうろついていた奴だったんですが、親父が狩りに行くっていうから、今回は僕が一人でやってみると言って獲物を奪い取ったんです」


どうやら自分の身を守る程度の実力はあるらしい。

だからこそ、息子が危険かもしれない状況でも、行かせるのを承諾したのだろう。


「おかげで美味しくいただきました。久しぶりに熊の肉を食べて、昔のことを思い出して良かったです」

「熊の肉がお好きなら、燻製にしたものを少し差し上げましょうか? 量が多いので燻製にしたのがあるんです」

「少しだけ」


食べ物をくれるというのに断る理由はない。

アデルは背負っていたリュックを下ろし。

燻製にした熊の肉を取り出して私にくれた。


「クラド様も召し上がりますか?」

「いい」


食べないなら本人が損するだけだ。

私はアデルからもらった燻製肉を口に含み、少しずつ噛み締めた。


三人で村を離れてから三日目。

私たちは初めて他の人間と出くわした。


見えるだけで三人。

三人が一定の間隔で離れて地面を漁っていたが。

私たちが現れると、かなりの警戒心を持って私たちを値踏みするように眺めた。


その時、隣にいたアデルがその中の一人の男に声をかけた。


「トムソンおじさん!」

「おや? アデルじゃないか。こんなところまで何の用だ」

「道案内ですよ」


知り合いがいることを確認して、ようやく警戒を解く人々。


「そうか。最近は物騒だから気をつけて行けよ。親父さんにもよろしくな」

「はい! また今度」


その場を離れてから。

あの人たちが何をしていたのか尋ねた。


「キノコ狩りではないようだったけど」


私も山の中に住んでいたことがあるから分かる。

およそ生産性のある仕事をしているようには見えなかった。


「別の村の人たちですが……おそらく先日、空が割れた時に金目のものがこの山脈に落ちたとかで。それを探して地面を漁っているんでしょう。そのせいで最近、村の雰囲気も良くないんですよ」


それが何なのか曖昧に濁してはいたが。

クラドと私には、それが何を指しているのか理解できた。


そしてもう一日進むと、新しい村に入ることができた。

ここも最初に行った場所と同じく、異邦人に対する警戒が厳重だった。

しかし、アデルがその村と縁があったおかげで、難なく村に入ることができた。


「以前来た時は、ここには立ち寄らなかったんですか?」

「記憶が定かではありませんが、なかった気がします」

「ふーむ……」


確かに以前の村より発展していないようだし。

クラドに気づく者がいないのを見るに、彼の記憶は正しいのだろう。


惜しいという気がした。

知り合いがいれば、前の村のように歓迎されたかもしれないのに……

それでもアデルがいたおかげで村に入れたのだから、それだけでも感謝すべきだろう。


村には入ったものの、好意的な場所ではなかったので、必要な物品だけ補充して移動することにした。


閑散とした店に立ち寄った私たち。

私は陳列棚にある品を指差し、必要なものを選んだ。


「これとこれをください。おいくらですか?」

「これだけでいいですよ」


思ったより高い値段。

山奥であることを考えれば、理解できない価格ではなかった。


「クラド」


もちろん、支払いはクラドが行った。

私が払っても構わなかったのだが。

前の都市で領主が首都までの道中。

私をしっかり支えるようにと、クラドに資金を預けていた。

そのおかげで今の彼の懐には現金が潤沢にあり。

移動に必要な費用は領主様から頂いた公用資金から使うことに決めていたからだ。


クラドが革袋を開け、代金を支払った。



リエン一行が買い物をした店に、さらに二人の男が集まってきた。


「何の用だ? 今日はエイミーと会う約束があるんだ。話があるなら早く終わらせろ、急いでるんだ」

「ああ、何事だ。普段は静かなお前が急に呼び出すなんてな」

「わけもなく呼ぶかよ。少し前に新しく入ってきた奴らのこと、知ってるだろ?」

「あ、新しい奴らが来たとは聞いてるが」

「それで?」

「今日そいつらに物を売ったんだが、金袋の中に黄色いのがぎっしり詰まってやがった」

「何? それは本当か?」


金袋に金貨がぎっしり詰まっていたという言葉に、二人は目を見開いた。

すぐさま顔には卑しい笑みが広がり、黄色い歯を剥き出しにした。


「なら、一仕事しなきゃな。いつがいい?」

「あいつらが村を去ったら、後を追おう」

「いいな」

「武器は何にする?」

「楽にいこう。男が剣を使えるようだったから、無駄にリスクを冒す必要はない」


そう言いながら、彼は壁に掛かっていた木製のクロスボウを手に取った。

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