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17. マンティコアとの戦いで、クラドに魔法を見せた一件

夕食を終えた私は、もう一度温泉に入った。

温かい温泉に身を沈めていると、悩みなどすべて消えていくようだった。


元々は日が暮れてからの温泉街が一番の見どころだと聞いていたので、

外に出て屋台の食べ物を食べたり、街を一周したりするつもりだったのだが。

少し前の出来事のせいか、今日はこれ以上動きたくなくなって温泉に来ることにしたのだ。


クラドが悪いわけではない。

贈り物を受け取ることくらいあるだろう。

ただ、指輪を渡しながら言った彼の言葉が、その意味が、私をそわそわさせているだけだ。


別に、自分が世界を救えるなんて思ったこともないし。

勇者になりたいからそうしたのではなく、できるからやっただけだった。

本当は、首都に行くのも私が勇者ではないという誤解を解くためなのに……。


事実を話したら、クラドはひどく失望するだろうか。

教えてあげてもいいけれど、なんだか素直に言い出せなかった。


手を持ち上げ、クラドから贈られた無骨な指輪を眺めた。

宝石がついているわけでも、装飾が華やかなわけでもないけれど。

お湯に浸かった指輪が月光を浴びると、明けの明星のようにキラキラと輝いた。

男のクラドが指輪を贈るなんて意外だったけれど、これくらいなら派手すぎず、ちょうどいいと思う。


翌日の夜は、果たせなかった観光をするためにあちこちを歩き回った。

両手に食べ歩きフードを持って見物していたので、口が寂しくなる暇がなかった。


美味しい食べ物が多くて最高だった。


指輪を受け取ってから数日間、温泉街でのんびりと過ごした。

そろそろ次の目的地へ向けて出発しなければならなかったのだが、久しぶりにとても気に入った場所だったせいか、出発しようと言うのが嫌だった。


もう少し長居しようかとも思ったのだが、私がクラドに「ここでこうしている時間はない、早く行こう」と言い出すことになったのは、彼から「少し太ったのではないか」と言われた時だった。


その言葉に、私は奥歯を噛み締めながら荷物をまとめた。


「十分に休みましたし、出発しましょう。準備はいいですか?」

「私はリエンさえ良ければ、いつでも出発できます」


出発したくてうずうずしていたってわけ?

太った私が騎士様を満足させてあげなきゃ、どうしようもないわよね。

たっぷり食べて寝て遊び倒したのは事実だから、良心は痛むけれど。


よく遊びました。さようなら。


結局、私の第二の故郷になりかけた温泉街を後にした。

温泉街に立ち寄るために、すでに遠回りの時間のかかるルートに移動していたので、

今回は安全だが遠い道のりを行く代わりに、山脈を越えて一気に時間を短縮する道を選んだ。


「クラド、これ見てください」

「……?」

「温泉街の水がいいのか、肌がぷるぷるになったのを見てくださいよ」

「はい」

「『はい』じゃなくて、共感してほしかったんですけど」

「はい」


もう、どんくさいんだから。


その時だった。


ドォォン。


空で巨大な爆発が起きたのは。

その爆発に天地が震えた。

木に止まっていた鳥たちが、その音に驚いて一斉に飛び立つ。


再び聞こえてくる轟音。

今度は、前よりもさらに大きかった。


ドォォォン――。


私は音がした方に向かって、おそるおそる顔を上げた。

空から大量の火の粉が地上へと降り注ぐ光景に。

ただ呆然と口を開けたまま、眺めることしかできなかった。


「……あれは何でしょうか?」

「天上の神々が、我らの敵と戦っておられるのです」

「へぇ……神様が地上で戦ったら、生きとし生けるものは全滅しちゃいますね」


遠くで分裂した大きな火の塊が、尾を引きながら私たちが向かっている方向にも落ちていく。

その様子を見守っていたクラドが、溜息をついて言った。


「大変なことになりました。人々が押し寄せるでしょう」

「どうして? なぜ人が?」

「神々の副産物からは質の良い鉄と、少量ですが神恩が得られますから」


あらまあ。

クラドの話を聞いて。

火の塊をもう一度見ると、すべてがお金に見えてきた。

私の前にも一つ落ちてきてくれたらいいのに……。


「クラドは神様について詳しいんですね? 私は女神様のことしか知らないんですけど」


正直に言うと、女神様の名前しか知らない。

つまり、神々については何一つ知らないということだ。


「騎士の修行中、神学も必須科目でしたから。人並みには知っているつもりです」

「お、知識人〜。じゃあ、私に教えてください。私、よく知らないので」


知らないことは罪ではない。

知ろうとしないことが罪なのだ。

実のところ、暇だというのが一番の理由だったけれど。


「難しくはありません。では、太古の時代から……」


クラドの話を聞きながら歩いた。

興味深い昔話を聞いているようで、退屈する暇がなかった。


あ、昔話で合ってるのかしら?

正直、万年だの十万年だのという単位が出てくるので、私の認識の範疇を超えて久しい。

そうしているうちに、私の知っている話がクラドの口から流れてきた。


「最も最近のことなら、女神様が地上に聖剣を授けてくださったことでしょう。つまり100年以上前、リエンの先代の勇者様が、最後の戦いで魔王に大きな打撃を与えたことで、地上に100年間の平和が訪れたのです」


先代の勇者様、すごーい!

もう少しだけ頑張ってくれていれば、もっと良かったんだけど。


「ところで、勇者様はどうして聖剣を聖所に刺したままにしておいたんでしょう? 他の人に譲ったり、王室で保管したりすれば良かったんじゃないですか?」

「さあ……詳しい事情は分かりませんが、女神様の召命を受けたのではないでしょうか」


うーん……そうなのかな。


「あ、見て。あそこに村が見えます」


喋りながら歩いているうちに、いつの間にか木々の間に丸太で作られた柵が見えてきた。

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