第9話 ある透明少女の幼い初恋 後編
お腹はプヨプヨだし、ふともももムッチリ。
でもでも! ちょっと理想から離れても、御手くんなら一目で気付いてくれるはず!
バカバカしいことに、そう楽観視していたのです。
結果はご存じの通り。
全く気付いてもらえなかったんですよねぇ……。
いや、わたしも悪いところはあると思いますよ?
でもですよ! 彼はあまりにもデリカシーがないと思うのです!
教室でわたしの姿が見られたのは予想外でした。
正式に再会する前に一目見に行っただけだったのに……。
だってだって、彼より少し心の余裕を持っておきたかったんです!
ドキドキしすぎてうまく話せなかったら、幻滅されるかもしれないし、嫌われるかもしれない。そう想像してしまって……。
まあ、彼が気付かなかったのは不幸中の幸い……と言っていいんでしょうか。
複雑な心持ちです。
御手くん、かなり頑固でかっこよく育ってましたねぇ。
頭でっかちすぎますけど。
いや、ちょっと理解できますよ?
わたしとの約束を守るために、男らしくなろうと頑張って、今の彼になったんですよね?
そのこと自体はとっても嬉しいですし、かわいくていいなぁ、って思います。
で、でも。
だったら、わたしがあの時の妖精だって気付いてもいいじゃないですかっ!
わざわざ口調もあの時のまま、敬語に矯正したのに……。
最後の手段として、あの時みたいに抱きしめようとしましたけど、気づかれなかったときのことが怖くて、勇気がでなくて、おっぱいを揉ませましたけど……。
お腹だと間違えられるし……。
この約9年間、想い続けていたのがバカみたいです。
「ちょっと、明麻絵! なにボーッとしてるの!?」
そうでした。
今現実では御手くんが切腹しようとしていたんでしたね。
あ、ナイフがお腹に刺さった。
バタリと倒れた。
すごく張り詰めた顔のまま、全く動かなくなった……。
あの……そのナイフおもちゃのやつなんですけど。
引っ込むやつなんですけど。
なんでそんなに迫真の演技ができるんですか……?
あと、なんで御所さんもノリノリで介錯ごっこをしてるんですかっ!
「……ごほん」
あ、頬を赤らめてる。
一応恥ずかしいことをしている自覚はあるんですね。
「まあ、御手はそのうち起きると思うから。僕が蘇生させたとでも言えば納得するだろうし」
「なんていうか、すごい子に育ったわねぇ」
「なんでこんな風になったんだろうなぁ……」
あれ? さっきからパパが静かですね。
忍術を使えば、簡単に御手くんを止められたはずですから。
「………………」
あ、泡吹いて気絶してる。
そっか。
わたしが衝撃的カミングアウトをしたせいで、ショックの限界量を超えてしまったんですね。
まあ、暴れられても困るし、放置しておきましょう。
「えっと、改めて久しぶりだね、明麻絵ちゃん」
……あれ?
「えっと、はじめまして、ですよね?」
「何を言ってるんだい? 小学1年生の時、この家にあがって、御手を慰めてくれたじゃないか」
「……気付いていたんですか」
「もちろんだよー。これでも陰陽師だからねー」
なんていうか、あの時と比べると、御所さんはかなり柔らかくなりましたね。
「僕はね、君に感謝しているんだ。一生をかけても感謝しきれないぐらい」
「わたし、何かしましたか?」
本当に心当たりがありません。
「実は、君と御手の会話を聞いていたんだ。それで、僕は自分の過ちに気付いた」
盗み聞きされてたんですか。
めちゃくちゃ恥ずかしい……。
「厳しくし過ぎていたんだ。一人前の陰陽師に育てるために、自分基準で押し付けすぎていた。正直、御手がなぜ泣くのかも理解できていなかったし、厳しさが足りないのかとも考えていたんだ」
「…………」
そこまで苛烈だったんですか。
今の柔和な表情からは想像できません。
「本当にありがとう」
「……いえ」
こう、面と向かって純粋な感謝をされるのは、すごく照れてしまいます。
しかも、相手は大好きな許嫁の父親なんですから。
「それで、ここからが本題なんだけどね」
本題?
今回は許婚の顔合わせではなかったのですか?
「許婚同士、同居させないかい?」
「そうねー。私もそれがいいって考えてたのー。この子、透明人間だから奥手すぎるのよね~」
「ママ!?」
「御手もあんなんだからね……」
「お互い苦労してるわねぇ……」
許婚同士って、わたしと御手くんってことですよね?
同居?
え、同居ってどういう意味でしたっけ?
一緒に暮らすだったような……。
「…………えっ?」
さすがに予想外すぎる展開っ!
ちょっとエッチなラブコメみたいな展開じゃないですか!?!?
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
ようやく物語のスタート地点!
ここから本格的に物語が始まっていきます!
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