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第37話 親への報告

 正式にお付き合いをしたならば、これだけはしなければならないだろう。


 親への報告。


 本来は順番が逆になってしまったが、そこは仕方ないだろう。

 まずは俺の親父の元へ、どのように説明するべきか。


 当事者なのだから、明麻絵に相談したのだが――



「いや、普通は付き合ったからと言って、親に報告はしませんよ……?」

「そうなのか?」

「それに今さらじゃないですか? わたしたち、許婚ですよ。親公認じゃないですか」

「……むぅ。そうか」



 たしかに、親が指定した相手なのだから、おかしい話ではあるか。

 しかし、どうしても納得できない。


 何かが心の中でひっかかっている。


 

「何を悩んでいるんですか?」

「ん? なぜ悩んでいるとわかったのだ?」

「顔に出ていましたよ」

「おお。流石、我が恋人だな」

「いや、最初から御手くんは顔に出まくりでしたよ……。丸わかりでしたよ……」

「なんだと!?」



 常にポーカーフェイスを貫いていたつもりだったのだが!?



「まあ、とりあえずお茶の間に行きましょう」

「そうだな。朝飯の用意もしなければならない」



 今日の飯の支度(したく)は張り切らなければな。


 なにせ、恋人として作る、最初のご飯なのだ。

 ここは出来るだけラブラブしなければならないだろう。

 そうだな。ケチャップでハートを描いたオムライスでも作るとしよう。


 さて、その前に親父だ。


 テレビの音が漏れ聞こえてくるから、お茶の間にいるだろう。

 


「おや。御手、少し変わったね?」



 お茶の間に入って、たった一瞬で看破されてしまった。

 俺の表情筋はそんなにわかりやすいのだろうか。

 


「……俺は変わっていない」

「明麻絵ちゃんとセックスした?」

「はあ!?」



 結婚前に、そんなことをするわけがなかろう!


 そ、それに、一度も考えたことなどないっ!

 


「その感じは、そこまで行っていないみたいだね。正式にお付き合いしはじめたって感じだ」

「なんでわかったんだ!?」

「僕は御手の父親だよ。顔を見れば、それぐらいわかるさ。まあ、御手の顔はわかりやすいけどね」



 おい、明麻絵、何回も頷くな。


 

「……親父的には、よかったのか?」

「うん。こうなると思ってたし、望んでたよ」

「そうなのか?」

「御手の相手がつとまる女の子なんて、滅多にいないから」

「全くですよ」



 魅力的な益荒男のはずでは。

 俺は一体なんだと思われているのだ。



「それで、朝飯を準備する前に相談なんだが」

「なに?」

「紙透家に挨拶しに行った方がいいか?」



 明麻絵にも相談したが、親父の意見も聞きたい。


 

「あ~~~~。やめておいたら?」

「なぜだ? 必要なことだろ」

「明麻絵ちゃんもやめておいた方がいいと思わない?」

「……そうですね。ママは問題ないと思うんだけど、パパが……」

「彼は昔から、かなり激情的だからねぇ」



 明麻絵の父親。

 たしか、許婚の挨拶の時にいた忍者だよな。



「そのようには見えなかったが」

「まあ、彼、表情を完璧に隠せるから。その実、かなり愛が深いんだ」

「そうですね」

「お付き合いの報告なんかしたら、どうなるかなぁ……」

「確実に家が更地になりますね」

「だよねー」



 そうなのか……。そこまでなのか。

 ここは空気を読んで、2人に従っておくべきだろう。

 


「ああ、そうだそうだ。明麻絵ちゃん、君のご両親と言えばなんだけど」

「なんですか?」

「本当はこのタイミングで伝えるべきじゃないんだけど、君の身の安全にかかわることだから」



 む?

 いきなり不穏だ。


 

「君のご両親に頼まれて貼っていた防御の方陣が攻撃されたんだよねー」

「え!?」

「ほら、これを見て」



 親父が取り出したのは、御札か?

 それにしては、かなり黒ずんでいる。



「……これは、かなり強力な力を感じるのですが」

「そうだね。普通の妖怪相手なら、触っただけで消し炭だろうね。でも、この有様さ。まあ、まだ幾重にも貼り巡らせた結界のひとつにすぎないけどね」

「その……正体は……」

「ごめんね。かなり厄介な相手でね、まだ正体がつかめていないんだ」

「……はい」



 つまり、強大な力を持った妖怪が、この家に侵入しようとしたということか?

 しかも明麻絵を狙っている可能性があるのか?



「そう……ですか」

「明麻絵、大丈夫か?」



 明らかに顔色が悪い。


 

「すみません。ちょっと具合が……。不登校になったきっかけで……」

「辛いなら、話さなくていい」

「……ありがとうございます」



 明麻絵には、暗い顔は似合わせない。


 彼女を笑顔にする方法はひとつしかないだろう。

 俺は手塩にかけてハートのオムライスを出したのだが、明麻絵は困ったように笑うだけで、なぜか親父がむちゃくちゃ喜んでいた。

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