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第34話 我慢の限界はキスの味 後編

 キスというものは、ゲームやアニメの中では頻繁に目にしたりします。

 そのどれもこれも素晴らしいものだと描写されていて、幸せの第一歩や物語の終わりの象徴みたいに扱われている気がします。


 キスってなんなんでしょうか。

 

 わたしの両親は娘の目もはばからずイチャイチャしています。そのせいか、両親のキスって特別感がないんですよね。またやってるなー、って感じ。


 ですけど、本当はもっとキラキラしたもののはずですよね。大事な人と二人っきりになって、色気ムンムンなムードを作って、一生記憶に残るような激しいキスを……。

 そんなのは、きっと理想論なんでしょうねぇ。

 世の中の学生ってどういう時にキスをしているんでしょうか。


 考えれば考えるほどわかんなくなって、異様に意識してしまいます。

 御手くんの、手入れしてなさそうで、ちょっと硬い唇を。

 ご飯を食べさせている時なんて、ずっとドキドキしっぱなしで……。


 わたしって、自分が思っていた以上に御手くんのことを好きになっていたみたいです。

 ……まったく。自分の恋心に実体があったら、本気でぶん殴ってやりたいです。


 そして、当の御手くんはというと――



「ねえ、島田くん、あたしのこと、好き?」

「ああ」

「えー。私の方が好きでしょ?」

「ああ」

「やっぱりー」



 もはや、御手くんは女子にかこまれながら「ああ」とつぶやくだけの機械に成り下がりやがっています。

 あんな心のない肯定を聞いて、何が嬉しいんでしょうか。



「やっぱり、素直な島田くんはかっこいいなー」

 


 ああ。

 腹が立つ。


 この女は何もわかってない。


 御手くんの良さは、そんなところじゃないんですよ。

 頑固で、変人で、家事は何でもできて、自分に厳しくて、なんでもかんでも極端。

 でも、誰よりも他人の頑張りをおもんばかっていて、普通の人なら「当たり前でしょ」って言って終わらせるようなことでも褒めてくれて……。


 島田家にお世話になって、最初の頃。

 こっそり学校へ行く御手くんの後をつけていって、

 くんで帰ってアリバイ作りに亀甲縛りの修業をしたら、絡んでしまって、結局口を滑らせてバレてまって、こっぴどく怒られるかと思ったんですが……彼は褒めてくれたんです。

 

 必死に隠しましたけど、すごく嬉しかったんですよ。

 本当に、あれがわたしの一生懸命でしたから。

 ほとんどの他人ができているのに、自分はできない。それがどれだけ辛くて、苦しいことかわかりますか?

 頑張って、自分のすべてを振り絞って、他人と同じになっても、元々できる人はその大変さを理解してくれないんです。

 彼以外は。

 きっと偉大な父親と比べられてきたから、寄り添えるんでしょうね。


 わたしは幼いころから、ずっと彼のことを想い続けてきたのです。

 だけど、今はもっと好き。


 B(ぼくのほうが)S(さきに)S(すきだった)なんてものじゃありません。


 大体。

 大体ですよ。


 あんな緩み切った顔をして……。


 御手くん、実はもうちゃんと意識があるんじゃないんですか?

 女の子に囲まれていたくて、演技してるんじゃないんですか?


 なんて。

 そんなこと、あるわけないですよねっ!

 あははははは。



「……………………ちっ」



 苛立ってきました。

 彼にも、周りの女にも、こうなるまで放置してい自分自身にも。


 もう、いいですよね。

 御手くんは意識がないんだから、不意打ちしちゃいけないなんて倫理観、ちゃんちゃらおかしいですよねぇ!

 わたしが幼いころに出会った少女だと全然きづいてくれませんしねえ!!!



「どいてください」

「ちょっと、なんなのよ、あんた」

「……どいてください」

「は?」



 最近のわたしはどうにかしてました。

 色々考えて、相手がわたしとのキスを喜んでくれるか考えて……。

 全然、わたしらしくない。

 紙透明麻絵っぽくない。


 そんな繊細な気持ちを持ってたらねえぇ!

 こんなに肥え太ってないんですよおぉぉおお!!

 

 もう。

 自分が怒っているんだか、飽きれているんだか、ムカついているんだか、悲しんでいるんだか――


 胸が苦しくて、頭がぼんやりと痛くて、足がムズムズして、腕がワチャワチャして、口が叫びたがっていて――


 もう、スッキリしましょう。


 全部。

 全部全部。

 全部全部全部全部全部全部全部。

 ぜえええええええええええええええええええええええんぶ!!!!


 スッキリ!!!!!!

 しましょう!!!!!!!!!!!!



「ちょっと、島田くんに何をする気!?」

「あ、姐さん!?」



 周囲がなんですか。


 こうすることで、スッキリする。

 直感が耳舐めASMRみたいに囁いています。


 

「御手くん、全部あなたがわるいんですよ」



 御手くんの顔。

 肌のキメが見えます。

 鼻にかかる、鼻息。


 近づいていきます。

 もっと。

 もっと。


 彼の体温。

 唇の味。


 とっても蕩けそうで、体の芯が熱くなっているような。


 でも、唇だけじゃ、全然足りない。


 彼を舌を歯茎を、わたしの舌が届く全部。

 味わいつくして、塗りつぶして、染め上げたい。



「……は……え……?」

「…………」

 

 

 ああ、やってしまいました。


 キスの後って、本当に糸を引くんですね。



「あ……ま、ぇ……?」

「おはようございます。御手くん」



 目が覚めたなら、キスをしないといけませんよね。許婚ですから。

 それに、彼にはもっと味わってもらわないといけません。


 全然足りない。

 彼の意識に刻み付けたい。


 わたしを。


 2度目のキスは、1度目よりもおいしかったです。

 余裕が生まれて、味わえて、わたしが激しくするたび、御手くんの体がビクリと反応して。



「……すご」

「でか。ふっと」

「舌入れてた……?」

「え、やば」

「うそでしょ?」

 


 クラスのみんなに、全部見られてしまいましたか。

 いつの間にか透明じゃなくなっていますし、興奮しすぎたでしょうか。

 ドン引きされているのか、それとも息を呑んでいるのか。よくわかんないです。

 まあ、もうどうでもいいですよ。


 いつもいつも透明なせいで無視された腹いせです。

 

 これで、みんなわかったことでしょう。


 わたしこそが、御手くんの許婚なんですよ……。




ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


ついにここまできた……!


これ以上、どこまで行くの!? と気になった人は☆評価やブクマなどをして抱けると嬉しいです!

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