第25話 転校生+αの闇が深い? 後編
…………何か周囲が騒がしい気がする。
誰なのだ。
親父か?
せっかく、こんなにも気持ちよく寝ているというのに、困ったものだ。
……いや、ここはどこだ?
俺はいつ寝た?
そうだ。
俺のクラスに転校生が来て、話していたら明麻絵が――。
「あの腹は一体なんなのだ!?!?」
「あ、起きましたか」
「……明麻絵」
ここは保健室か?
養護教諭の姿はないようだが。
それにしても、明麻絵を見ていると違和感を覚えるな。
ちゃんと服を着ていることもそうだが、なにより。
「お前、少しやせたか?」
「あ、わかりますか? 少し運動したので」
「ほう。それはいい傾向だ。えらいぞ。それで、この保健室のあれ具合はなんなのだ」
窓ガラスが割れているし、ベッドがひっくり返ったりしているではないか。
薬品棚が無傷なのが不幸中の幸いだな。
「えっと、その……アレを見てください」
なんだ?
明麻絵が指さした先に、何か大きいものが転がっているな。
荷物か?
いや、よく見ると――
「上半身裸の成人男性か? 亀甲縛りで吊るされているな。明麻絵がやったのか?」
「はい。突然襲われたので」
冗談を言っているようには見えない。
どうやら、俺が寝ている間にのっぴきならぬ出来事が起きたようだ。
ただ寝ていただけの自分が恥ずかしい。
しかし、反省は後回しだ。
「あれは誰なんだ?」
「白雪さんの父親だそうです。なぜか興奮状態で、襲い掛かってきたんです」
「……なるほど。よく倒せたな」
「紙透さんはすごかったんだよっ!」
「あ、白雪さん……」
なんだ?
白雪さんは相変わらず麗しく美しくてマーベラスなのだが、なぜ明麻絵に抱き着いている?
「お父さんが襲ってきた時はもうダメかと思ったけど、紙透さんがあっという間に縄を取り出して、縛り上げちゃってっ! お父さんも狼男でも強い方らしいんだけど、紙透さんの前だと完全にザコだった!」
「あ、あはははは……」
白雪さんがここまでなつくとは、本当にこいつは何をしたのだ。
彼女の言葉を信じるなら、明麻絵がこの屈強な男を捕縛したらしいが、普段の堕落した姿からして、そんなことができるとは到底思えない。
……まさか、こいつは幻覚系の忍術を使えるのではないだろうか。
そうだ。
そうに決まっている。
そうでなければ、 俺がこんなぷにぷにした腹に癒しを感じて、お腹を見るだけで眠るわけがないのだ!
すべてが繋がったっ!
「紙透さん……いや、姐さんと呼ばせてくださいっ!」
「あ、姐さん!?!? わたしはそんなかっこいい存在じゃ……」
「ああ。姐さんの顔を見てみたいです。どんな美しい体をしているのかな? ああ。きっとこの世のなによりも素晴らしいんだろうな……」
「あ、あの、顔近づけないでくださいっ! ふとももをさすらないでっ!」
楽しそうにじゃれる白雪さんと、戸惑っている明麻絵。
ほほえましい光景である。
しかし、なんでだろうな。
ほっこり以外の感情が湧き上がってくる。
胸がザワザワして、モヤモヤする。
喉が渇いて、唇が張り付き、心臓が低い音を立て、にじみ出た手汗が気持ち悪い。
この感情の名前は知っている。
しかし、俺が抱くのははじめてだ。
……このような気持ち、益荒男にふさわしくない。封印すべきである。




