第23話 転校生+αの闇が深い? 前編
え、あ……。
御手くん、本当に私のお腹を見たら寝ちゃったんですけど……。
冗談のつもりだったのですが……。
こういう反応は『パブロフの犬』って言うんでしたっけ。
なんていうか、ちょっとかわいいかもです。
「えっと、なんで寝ちゃったの……? 透明人間が服をまくしあげただけで? え、どういうこと……?」
混乱しますよね。わかります。
御手くんは一見、普通のメガネ男子なんですけど、その中身は色々とぶっ飛んでるんですよねぇ。
「えっと、彼、わたしのお腹を枕にして寝ているので……。わたし、許婚なんで」
「え、腹枕!? 許婚!? どういうこと!?」
「不眠症だったので、成り行きで……」
「い、イヤじゃないの!?」
「イヤとは思いませんね。わたしのお腹の上で寝ていてかわいいなー、とは思いますけど」
「…………」
他人に話すと自覚してしまいますね。
すごいことしてるなー、って。
「えっと、その、君たちはお似合いだね」
「そうですか?」
うれしいですけど、ちょっとバカにされてませんか?
「ちょっと彼を保健室に連れて行くので、付き合ってくれませんか?」
「あ、えっと、ボクは脚を持てばいい?」
「運ばなくていいので、一緒に来てくれるだけでいいです。わたしだけで持ち上げられますから」
「え、あ、本当だ。すごい」
人ひとり分の重さぐらい、お茶の子さいさいです。
まあ、忍術でちょっとズルしていますが。
「透明で見えないけど、筋肉質なの?」
「いいえ。ちょっと体が頑丈なだけです」
忍者であることは、あまり言いふらしてはいけないのです。
透明人間なせいで目立っちゃうし、わたし自身はもういいんじゃないかと思うのですが、パパから口すっぱく言われているんですよね。
さて、保健室に向かいましょう。
ついでにお話し――というか、この薄幸美少女さんと話すのがメインの目的です。
「えっと、あなたが転校生ですか?」
「あ、はい。白雪月夜って言います。よろしくお願いします」
「わたしは紙透明麻絵っていいます。好きに呼んでください」
「は、はい。よろしくお願いします、紙透……さん?」
ちゃんと話をするためにも、まずは相手の緊張をほぐさないといけなそうですね。
「あなたの頭に生えているケモミミはなんですか? とってもかわいいですね」
あ、にっこり笑っても相手からは見えないんでした。
透明人間で愛想よくするって難しいんですよねぇ。わたしの人生、ハードモードです。
「えっと、ボク、雪女と狼男のハーフなんです。あはははは……」
「へー。妖怪と怪異の間の……。珍しいですね」
雪女。
たしかに、白雪さんの美貌はぴったりです。
狼男らしさはケモミミだけでしょうか。
「……あ」
揺れで御手くんのメガネが落ちてしまいました。
本体を置いていくわけにはいきませんね。
「すみません、白雪さん、そのメガネを拾ってくれませんか?」
「あ、うん」
素直に言うことを聞いてくれる、いい子です。
御手くんとは大違い。
「……っ!」
あれ?
メガネを拾っただけで、なんでそんなに顔をゆがめているんですか?
「な、なに、これ――っ!」
「どうかしたんですか?」
「触っただけで、すごく気持ち悪くて」
「……どれどれ。うわっ」
たしかに触るだけですごく嫌な感じがしますね。
呪物とかそういうのを触った時の感覚に近いです。
「……あー。御手くんって確か特殊な体質でしたね。妖怪とか呪いとか、そういうものに対して途轍もない耐性があると聞いた気がします。そのせいで色んなの力を利用できなくて、陰陽師としての才能がないらしいです」
「へ、へー」
「だから、そのメガネも呪いの道具みたいなやつなのかもしれないですね」
透明人間が見えるという時点でかなりの不思議アイテムでしたが、まだまだ謎が秘められていそうです。
よし。話している間にも、保健室に着きました。
先生はいないみたいですね。
好都合です。
今からする話は、他言できるようなものではありませんから。
「それで、白雪さん。しれっと言っていましたよね。『父親を殺してほしい』って」
「あ、そうなんだよ。彼が起きたら早速相談したいのに」
聞き間違いではなかったですか……。
いきなり親殺しとか…………。
ちょっと世界観変わってませんか?
御手くんには誰も殺してほしくないんですよ。




