第21話 君は完璧で究極な転校生 前編
正直、久しぶりの登校でかなり疲れています。
まだ一限目が終わったところなのですが、すでに家が恋しくなってきました。
……不思議ですね。
15年住んでいた実家よりも、まだ1か月も住んでいない島田家を思い浮かべるんですから。
自覚している以上に、今の生活を気に入っているのでしょうか。
「……はぁ。服を着ていると、ムズムズします」
普段は下着姿でいるせいでしょうか。制服には慣れません。
せめてもの抵抗として、ブラジャーでも外してみましょうか?
……いや、やめておこう。わたしは御手くんの許婚なんですから、せめて学校の中では品行方正でいないといけません。
あんなにぐ~だらしても許してくれるのは、御手くんぐらいしかいないでしょうし。
「御手てん……かぁ」
教室の出入り口にいたり――しませんよね。そうですよね……。
「……はあ」
わたしは何を期待しているのでしょうか。
休み時間のたびに会いに来てくれる、なんて乙女チックなこと。
朝の心配具合のせいで、無駄に期待しちゃったじゃないですか。
まあ、仕方がないですよね。
大体、許婚だけど恋人ではないのです。
わたしは結局、同居人で枕でしかないのでしょう。
それでも、かなり大事にされている感じはありますけど、うーん……。
進展しているだけいいのでしょうか?
「ねえ、あの子……」
「今まで来なかったのに。本当にきもい」
「島田くんの許婚らしいよ」
「男に守ってもらえるから、登校してきたの?」
「いやねぇ。しかも、透明人間なんて」
「きっとブスよブス」
「間違いないわね」
……ずっと来なかった人間が突然現れたら、陰口ぐらい叩かれますよね。はあ。
登校しただけで褒めてくれるのなんて、御手くんぐらいのものです。
クラス内は完全にグループが完成してしまっています。
きっちりと友達同士で固まり、わたしは完全に腫れもの。
ボッチ確定演出。
まあ、わたしは中学時代も友達がいなかったので、全然大丈夫ですけどねっ!
「…………ふぁっく」
わたしは恵まれています。
透明人間なので、いくら嫌な顔をしても、変顔をしても、中指をたててもバレませんし、ついでに太っていてもきづかれません。
これは大事な特権なので、全力で舌を出して、中指を立てておきましょう。
ふぁっきゅー!!!!
今のわたしはロックンロール!!!!
…………はあ。
「……なにやってんだろ」
いきなり虚しくなってきました。
まるで転がり落ちる石の気分です。
「ね、ねえ! となりのクラスに」
となりのクラス。
つまり、御手くんがいるクラスでしょうか。
こんな中途半端な時期にですか。
「…………」
学園アニメではよくありますよね。
転校生が来たことで、主人公の人生が変わって、恋に落ちるんです。
幼馴染とか許婚って負けヒロインポジションになりがち。
…………少し様子を見に行きますか。
御手くんのことだから、どんな転校生が来たとしても動じないと思うのですが、一応確認しておくべきですよね。
さて、一体どんな転校生……が……。
「え……?」
わたしは夢でも見ているのでしょうか?
「君はこの世の何よりも美しい……」
御手くんが、涙を流しながら、ひざまずいている……?
一体なにが起きているんですかっ!?




