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第16話 亀甲縛りはくのいちのたしなみ 後編

「では、解くぞ」

「は、はい。お願いします」

「見えないゆえ、変なところに触れたら申し訳ないが、我慢してくれ」

「変なところ!? わ、わたし、濡れてないですよね!?」



 女性は刺激を受けると、どこかが濡れたりするのか?

 まるでかっぱのようだな。


 さて、まずは結び方を確認するとしよう。



「……あっ」

「どうした? 変な声を上げて」

「い、いえ……御手くんの手、想像していたより硬かったので……」

「それはそうだろう。俺は立派な男だからな」



 まあ、ほとんどは水仕事によるあかぎれの結果なのだが。

 素振りして、竹刀ダコをつけるべきだろうか。


 

「そ、そうですよねっ! 御手くんはかなりの変人ですけど、男の子なんですよね……うん」

「俺は変人ではない。男というのは否定しないがな」

 


 そんな当たり前のことに驚くとは、どういう了見だ。

 さすがの紙透明麻絵でも、緊縛されている現状に危機感を抱いているのかもしれないな。


 さすがにかわいそうだ。

 すばやく解いてやるべきだな。



「……これはどう縛っているのだ?」

「すみません。結構複雑に縛ってしまって……」



 まあ、仕方がない。時間をかけてといていくしかないだろう。



「ちょっ、そこはダメです!」

「む? ここは一体どこなのだ」

「い、言えません!」

「どこか教えてくれないと、気をつけようがないだろ」

「……えっと、下腹部です」

「なっ!」



 あの柔らかい感触が――。


 

「すまなかったな」

「え、なんでそんな反応するんですか?」

「……続けるぞ」



 姿が見えないせいか、女体であることを強く意識してしまっているようだ。

 なんでこんな肌がスベスベでもちもちしているのだ。


 俺や親父の肌とは全く別物ではないか。


 くそっ、くやしい。

 口を動かして、気を紛らわせるとしよう。



「ちゃんと昼飯は食べたか?」

「あ、はい。おいしかったです。ありがとうございます。でも、ちょっと野菜が多かったので、お肉を増やしてもらえると……」

「ダメだ。若い時こそ野菜を食べねばならん。成長において、ビタミンは重要だぞ」

「野菜は全然嫌いじゃないんですけど、食べた気になれないんですよぉ」

「ちゃんと噛めば問題ない」



 ふむ。

 親父は「おいしい」としか言わないし、これほど素直に言われると嬉しいな。



「あ、でも、メンチカツはすごくおいしかったです。冷めているのにサクサクで」

「昨日の余りものだがな。……ん?」



 いや、おかしいぞ。

 こいつのために用意した作り置きには、メンチカツは入れていなかったはずだ。

 どういうことだ?



「親父の作り置きに手をだしてないよな?」

「まさか……もうあんな目には遭いたくないです……」



 親父は普段温厚だが、食べ物の恨みはしっかりと抱く。

 特に俺の作る料理への執念はすさまじいのだ。

 それを知っているということは、こいつ、一度やらかしているな。


 では、なぜこいつは今日の昼にメンチを食べたのだ?


 ……いや、待て。

 今日の昼食時。

 突然弁当の中身が消えていたな。



「お前、まさか透明になって、俺の後をつけていたわけじゃないよな?」

「い、イヤですねー。そんなことをするわけ――」

「いい傾向ではないか。その調子だ。学校に来ただけでも素晴らしい」

「え?」



 どこに不思議そうな声を出す要素があった?



「怒ったりしないんですか?」

「これぐらい、特に怒ることではない」

「い、意外と心が広いんですね。もっと厳しい人だと思ってました」

「自分以外に厳しくしても仕方なかろう」



 幼い頃、厳しくされすぎて病んでいたからな。

 あんな想いはさせたくない。



「……あ」

「ふぎゃっ!!!」



 縄が解けて、紙透明麻絵が落下してしまった。



「すまない。いきなり解けてしまった」

「い、いえ……助かりました。ありがとうございます」

「ケガはないか?」

「大丈夫そうです。縄の」

「それは痛々しいな」

「え、エロくないですか?」



 面倒な話なのでスルーしておこう。

 さて、この後は夕食の準備だ。ハンバーグは少し手間がかかる。

 いや、その前に紙透明麻絵から不登校の理由を聞かなければならないか。


 って――



「…………おっと」



 一瞬、視界が揺らいでしまった。

 頭がわずかに痛い。

 目がぼんやりする。


 

「大丈夫ですか!?」

「すまない。ちょっと立ち眩みをしただけだ」



 気にするほどのことではない。

 


「本当に大丈夫なんですか?」

「最近、あまり眠れていないだけだ」

「……わたしのせいですか?」

「それは違う。最近は寝不足なだけだ」

「え、でも、毎日寝てますよね?」



 たしかに、寝てはいるのだが。


 

「目をつむっているだけだからな」

「そ、そうなんですか……」



 本格的に眠ると悪夢を見るのだから仕方なかろう。

 今は安定しているが、幼い頃に色々あったのだ。



「あの、縄を解いてもらったお礼をしたいのですが」

「別に気にするな」

「今夜、一緒に寝ませんか? わたし、寝かしつけるのが上手なので……」

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