陰魂が取り付く
「魂を認める?どういう意味?」鈴木美咲は「魂」という言葉を聞いて、肩が震えて、顔の筋肉も動いた —— 心の底で不安があるようだ。
俺は「陰陽繍は普通の刺青と違う、陰霊を使うものだ」と説明した。「陰陽繍には陰繍と陽繍がある。陰繍の技法はちょっと悪辣だけど、刺すと効果がすごくてほとんど思い通りになる。だけど禁じられてることが多いから、君には合わない。陽繍はもっと正統的で、主に神霊系の刺青を入れる。副作用はなくて効果もまあまあだ」
「でも陰繍でも陽繍でも、『陰霊』を尊重しなきゃいけない。魂を認めるのは、陰霊に君を知ってもらう過程だ。もし陰霊が君の体に取り付いて平安を守ってくれるなら、陰陽繍を刺せるけど、不本意なら無理に刺すと、陰霊が君に祟りを与えるから」
「ああ、そういうことか。でもお兄さん、魂を認めるにはどうしたらいいの?」
「簡単だ」俺は鏡を足元に平らに置き、「俺と君、中指を切って三滴の血を鏡の上に滴らせる。指示を待てばいい」
「この鏡が指示を出せるの?」
「もちろん」俺は余計なことは言わず、直接中指を切って三滴の血を鏡に滴らせ、口の中で呟いた:「呉紗がもう漂泊しないように、陰魂が主を認められるように」
呟き終わると、美咲にも早く中指の血を鏡に滴らせるよう促した。美咲はちょっと考えた後、俺の熱い視線に押されて、刺青の針で中指を刺し、三滴の血を鏡の上に滴らせた。
俺と美咲の六滴の血が鏡に滴り終わると、俺はさっき奥の部屋で切った「紅蓮夜叉」の小さな図案を慎重に鏡の上に置き:「陰陽繍の継承者が血を媒介に、夜叉様に友人の鈴木美咲を紹介します。もし様が彼女の体に取り付いてくださるなら取り付いて、不本意なら彼女の本来の姿に戻してください」
呟き終わると、鏡からの答えを静かに待った。
二三分解過ぎて、鏡の中の美咲の姿が少し変わった —— 眉が寄り合い、鼻が少ししわになり、口元が上がって、怒っているような表情になった。
「俺、なんでこんな表情なの?」美咲が聞いた。
俺は美咲に黙っているように指示し、小声で説明した:「君は今、夜叉の霊が乗っているから。夜叉はみんな凶暴な神様だから、鏡の中で怒っているのは君じゃなく、紅蓮夜叉だ」
説明している最中に、突然美咲が「クスクス」と怪しい笑いをした —— この笑いは自然に出たものではないようだ。
この笑いを聞いて俺もちょっと混乱し、心が浮き沈み始めた。美咲はベッドにポタリと跳び乗り、すぐ刺青ベッドの枕の下に頭を埋めた:「お兄さん…… お兄さん、刺さないよ、この刺青は刺さないから!本当に怖いの、俺、鬼に取り付かれちゃったんじゃないの?」美咲は自分の笑いに怖がっていたのだ。
実は陰陽繍の儀式は確かに怪しいから、初めて接触する人が心配するのは普通だ。だけど手順が間違っていなければ、陰陽繍は絶対平安を守ってくれるものだ。
俺は美咲を説得した:「陰陽繍を刺さないなら、後ろについてる目は怖くないの?その邪なものにいつか命を取られちゃってもいいの?」
「お兄さん、本当のことを言うよ。俺、実はその目が誰のものか知ってるの!暗で見張ってる邪なものも何なのか知ってるの!彼女は…… 田中紗織が変わった厲鬼だよ!俺に文句を言いに来たの!明日道士を呼んで法事をするから、同じことだよ。ただ値段が高くて、80 万円から 100 万円くらいするんだけど」美咲は焦って、本音を全部話しちゃった。
俺はちょっと怒った —— 美咲はどの邪霊に祟られているか知ってたのに、俺に陰陽繍を刺してもらうのはただ安いから?心は冷えたけど、この仕事を放すのは渋るから、続けて美咲を説得した:「知ってたのに、さっきなんで話さなかったの?今陰霊を呼んできたのに逃げ腰になると、俺はどうすんだ?あと、君のこと到底どうなったの?詳しく話してくれない?」
美咲はありのままに遭遇したことを話し始めた。実は先月、彼女の店に新しい技師が来た。その技師は自願で来たのじゃなく、彼氏に騙されて売られてきたのだった。




