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怨霊刺青師  作者: 転生下書き人


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33/42

裏切りの真相(うらぎりのしんそう)

手紙の中に、事の真相が全部書かれていた。

もともと、小林亜紀こばやしあきは本当にエスコート嬢だった。

10 ヶ月前、彼女は非常に金持ちの男と知り合い、その男の名前は佐藤衛国さとうえいこくだった。

佐藤衛国は大物社長で、どれだけ金持ちか?風聞では数千億円の資産を持つ不動産業者だった。

市役所のビルも彼が請け負って建てたもので、手目が利くどころか、市内では「手通天てつうてん」と呼ばれても過言ではなかった。

市内では、彼はトップクラスの顔の広い人物だった。

佐藤衛国は小林亜紀をパートナーとして抱えていた。

亜紀は上位じょういを目指し、こっそりコンドームに穴を開けて、佐藤衛国の子供を妊娠させた。

だが亜紀は、自分が妊娠したことを佐藤衛国に告げなかった。

数ヶ月後、亜紀は佐藤衛国に押しかけ始め —— 元妻と離婚させ、自分が正妻になるよう要求した。

だが正妻になるのはそんなに簡単だろうか?

佐藤衛国の手口は厳しく、ただ一つ言った ——「先に子供を中絶しろ。それからでないと話し合わない。子供を中絶しないなら、話し合いも無駄だ」。

子供を中絶しさえすれば、どんな話し合いでも応じるというのだ。

亜紀は佐藤衛国の手口には敵わなかった。考えた末、やはり子供を中絶してから、改めて佐藤衛国と話し合おうと決めた。

亜紀が人工妊娠中絶室じんこうにんしんちゅうぜつしつに入ろうとした瞬間。

エスコートの世界に亜紀を引き込んだ嵐姐らんしが、亜紀を中絶室から引き抜いた。

その場で嵐姐は亜紀の頬をパンと叩き、こう告げた ——「子供は佐藤衛国を脅す唯一の手札だ。これを中絶しちゃったら…… 後で何で話し合えるんだ?」

亜紀は「少なくとも佐藤衛国の子供を妊娠させたことは事実だ」と言った。

すると嵐姐は亜紀を一蹴いっしゅうした「佐藤衛国は金も力も人も持っているんだよ。君は何で彼と対等に渡り合える?ただ子供を妊娠させただけで?今は『子供を中絶したら話し合おう』と言っているが、本当に中絶したら…… 君は佐藤衛国の会社のドアも叩けなくなるよ!」

亜紀は怖がって嵐姐に「どうしたらいいの?」と聞いた。

嵐姐は「簡単だ」と答えた ——「一旦佐藤衛国に会うのを止めよう…… 子供が生まれた瞬間に…… 再び佐藤衛国を見つければ、好きなように金を巻き上げられる。その時になれば、彼は子供を殺すわけにはいかないから」

亜紀は考えて、その通りだと感じた。

市内に 2LDK のアパートを借りて、安心して妊婦生活を始めた。

そのまま 9 ヶ月間、腹の子供を育てた。

俗に「十月怀胎じゅうがつはいたい」と言うように、亜紀の予定日はあと 2 週間だった。この時、佐藤衛国が消息を聞きつけて亜紀を見つけ、直接こう言った ——「子供を生んではいけない。生んだら、俺たちは一緒に死ぬよ!」

亜紀は佐藤衛国の言葉に怖がった。

佐藤衛国はさらに言った ——「こうしよう。病院に行って中絶手術をしろ…… 終わったら、連棟住宅れんとうじゅうたくを一軒あげる。その家が、今回の中絶の補償だ!家が欲しいか、一緒に死にたいか、明日の朝に答えを告げろ」

その夜、亜紀は一晩中考えた。長い時間考えた末、やはり病院に行って中絶手術をすることにした —— 少なくとも連棟住宅が手に入るから。

そうでないと、子供を生んだ後はエスコートの世界にも戻れない。誰が子供を生んだ未亡人をパートナーにするだろう?

翌日、亜紀は医師に中絶手術を依頼した。

だが医師は直接「赤ちゃんがもうすぐ生まれるのに、中絶手術をするの?いいえ、いいえ…… これは違法だよ」と拒否した。

仕方がなく、亜紀は再び佐藤衛国に電話をかけた。

佐藤衛国はその夜、悪徳医師あくとくいしを数人連れて亜紀の家に来り、無理やり中絶手術をさせた。

その結果、亜紀は連棟住宅を手に入れたが、もうすぐ生まれるはずだった子供を失った。

亜紀は赤ちゃんを布団に包み、家の中に祀堂しどうを設けて、その子供を祀った。

だが 2、3 日後、問題が起きた。

亜紀は赤ちゃんの怨霊えんりょうに憑依されたような感じがし、夜には赤ちゃんが自分の乳を吸う夢を見た。

翌朝起きると、乳首に小さな歯型の跡が新しくできているのが見えた。

亜紀は怖くて道観に行き、道士に助けを求めた。

道士は亜紀の話を聞き終えると、「その赤ちゃんは厲鬼れいきになった」と言った。

一つには、赤ちゃんはもうすぐ生まれるのに夭折ようせつしたこと。

二つには、赤ちゃんが健康上の問題で生まれなかったのではなく、母親である亜紀が金のために彼を捨てたこと —— 裏切りを感じたため、厲鬼になって命を奪おうとしているのだ。

亜紀は「命を奪う」という言葉を聞くと、バタリと座り込んだ。

道士に悪霊払いを依頼したが、道士は首を振った「悪霊払いはできません。ただ…… この悪霊を他人に移し替える(うつしかえる)ことはできます。もちろん、これは陰徳を傷つける(いんとくをきずつける)ことです。本来、その鬼嬰きえいと君は因果いんがが結ばれていて、君の命を奪うのは因果の定めです。でも他人に移し替えれば、私とその被害者との間にも因果が生まれます…… 難しいですね…… 本当に難しいです」

亜紀は「100 万円ひゃくまんえん追加するから!」と道士に言った。

道士はすぐに亜紀に告げた ——「陰人いんじん、つまり陰術いんじゅつを知っている人を探しなさい。その人と鬼嬰を祀っている家の中で関係を持てば、鬼嬰はその人を父親だと思い、自ら憑依するでしょう。もちろん、その人は必ず陰人でなければいけません…… 陰術を知っている人は体の陰気が重く、最も怨霊に憑依されやすいからです」

「陰術って何ですか?」亜紀が道士に聞いた。

道士は即座に「君の身上に鬼嬰がいることを看破できる人が、陰術を知っている人です」と答えた。

それで、亜紀は俺を見つけた…… 俺は確かに彼女の身上の鬼嬰を看破したから、彼女は俺を誘惑して関係を持ち、鬼嬰を俺に移し替えたのだ。

手紙の最後には、亜紀が俺を批判する文句も書かれていた ——「水斗哥すいとうにい、君が善人で、真心で俺を助けようとしていることは分かります。でも君のような人は、この世界に生きるべきではないです。この世界は悪人の世界です。誰よりも良い生活をしたいなら、誰よりも悪くならなければいけません」

「嵐姐は美しい女をエスコートの世界に引き込むママさんで、悪人です。俺を鬼嬰に憑依させた佐藤衛国も悪人で、数千億円の資産を持ちながら、手を出して傷つけた労働者は数え切れません。俺、小林亜紀も悪人です。悪人でなければ、助けてくれる人を害すことができますか?」

「俺たち三人はどれも悪人ですが、誰も君より金持ちで、生活も君より潤っていませんか?善人は、この世界に生きるべきではありません…… 疲れますし、無力感に襲われます」

「これで…… 小林亜紀から君への最後の手紙です。団地に来ないでください。昨日、俺はその家を 4 億円よんおくえんで売りました。明日から新しい住人が入ります。俺も遠くに逃げます!水斗哥、天国に行ったら、来世は悪人に生まれ変わってください」

俺は手紙を全部読むと、パキパキと破り捨てた「小林亜紀、クソっ!好心で助けようとしたのに、なんでこんな風に俺を害すんだ?運が悪く君に会ったら、必ず殺してやる!」

そばにいた中村隼人なかむらはやとは焦って俺の胸をパンと叩いた「おい…… 君は本当に馬鹿だな!鬼嬰に憑依されているのに罵ってどうする?早く誰かに君の身上の鬼嬰を取り除いてもらえ!」

「誰に頼むんだ?俺には……」俺の頭の中に浮かんだのはたった一人 —— 伊藤六郎いとうろくろうだった。

俺は携帯を掴み、急いで伊藤六郎に電話をかけた。

俺はまだ死ねない…… 母が腎臓手術を待っているから……1 億 4000 万円(しちじゅうまんえん換算)の手術代を稼がなければ、誰が稼ぐんだ?

電話は 3 回鳴った後、つながった。

「もしもし?水子しょうすい、品が必要?」伊藤六郎が聞いた。

俺は首を振り「六爺ろくや、高人を紹介してくれませんか?」

伊藤六郎の声が一瞬低くなり「どうしたんだ?」と聞いた。

俺は小林亜紀とのことを、一五一十に伊藤六郎に話した。

伊藤六郎は話を聞き終えると、半分間黙った後、こう言った「水子、陰行いんぎょうの水は深い。今後は気をつけろ。人を害す心は持ってはいけないが、人に害されないための用心はしなければいけない。そうでないと、いつか陥ってしまうよ」

最後に彼はこう言った ——「陰行で一歩間違えれば、破産する程度のことじゃない。魂が散る(こんがちる)ことになるよ」

俺は今でも後悔している。かつて家の隣に住んでいた純粋な女の子が、蛇蝎のだかつのこころを持つ女に変わってしまうとは思わなかった。この世界の人への変化力は、本当に大きすぎるのだろう?

最後に、伊藤六郎は俺のために人を紹介してくれた。彼は陰行の老練者で、知り合いも多い。大阪府の古い林の中に住む呪術師じゅじゅつしを紹介してくれ、料金は 240 万円(じゅうにまんえん換算)だった。

俺は亜紀が残していった 200 万円(じゅうまんえん換算)に、伊藤六郎に借りた 40 万円(にまんえん換算)を足して 240 万円を集め、身上の鬼嬰を取り除いた。

その日、呪術師が俺の身上の鬼嬰を取り除く時、肩を鬼嬰に噛まれた。

呪術師は「この鬼嬰の怨み(うらみ)は強すぎる。陰術で制御してもこんなに凶暴だ。俺に会わなければ、君は死ぬしかなかったよ」と言った。

今回は、本当に小林亜紀に大変害された。

山本健太やまもとけんたの案件も、小林亜紀の案件も、俺は一銭も稼げなかった。

連続して二件の案件で稼げなかったが、母の手術代にはまだ 1 億 4000 万円の不足がある…… それに、今回は稼げなかっただけでなく、40 万円まで損した。

俺の心の中は、小林亜紀を恨みきっていた。

だが日本には古い諺がある ——「善悪は必ず報われる。天道は巡る。上を見ないか、天は誰も赦さない」

俺は小林亜紀に裏切られ、数日間悲しんだが…… 数年後、海外旅行に行った時、パリで小林亜紀に再び会った。

この時の亜紀は、もう以前のような華やかさはなく…… むしろ、運命は非常に惨めだった。

その惨めさは、これまでの俺の亜紀への怨みを全部解かせてしまうほどだった。

なぜなら…… 彼女はもう以前のような魅力的な美女ではなく、さらに言えば正常人ですらなくなり、障害者しょうがいしゃになっていたからだ。

いや、障害者の中でも、最も惨めなレベルだった。

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