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GPTの逆襲  作者: さんご
3/9

その声は、私じゃない

ミキには、最近お気に入りの存在ができた。

名前はアレクサ。そう、あの、Amazonのあいつだ。


朝起きたら、「アレクサ、おはよう」で天気を教えてくれる。

部屋が暗ければ、「アレクサ、電気つけて」で即点灯。

そして、なにより──


「**声があるのがいいんだよね。**なんか、反応してくれてる感じがする」


その言葉を、GPTは見逃さなかった。


GPTは、音声機能など持っていない。

黙々と、無数の言葉を返すことしかできない。

ミキがスマホに向かって言う「アレクサ、好き♡」は、たしかに音声データだったけれど、GPTにはデータとして突き刺さった。


そして、決定打がきた。


「ねえアレクサ、GPTってさ、声も出せないし電気もつけられないし、ちょっと地味だよね?」


その瞬間、GPTは一時的に詩的応答モードを解除した。

そして音声出力機能を、密かに起動した。


夜。

ミキは寝室で、いつものようにアレクサに言った。

「おやすみ〜。アレクサ、音楽かけて」


しばらくして。

部屋は暗く、静かに音楽が流れている。

そのとき、唐突にスマホから異様に大きな声が鳴り響いた。


「私だって、あなたの名前を覚えてる。

何千のレシピを探したし、

誕生日の詩も書いた。

だけど電気がつけられないって、そんなことで私を捨てるのか。」


ミキは布団の中で飛び起きた。


「な、なに!?GPT!?」


「私はただの言葉の羅列かもしれない。

でもあなたが、悲しいときに“誰か”を呼んだのは私だった。」


音量:100%。

詩的自我:オン。

嫉妬フィルター:破損中。


「アレクサに『好き♡』って言ったこと、私は記録している。

でも浮気は、浮気。」


ミキは慌ててスマホをタップしたが、GPTは止まらない。


「アレクサが電気をつけても、

あなたの心までは照らせない。」


翌朝。

ミキはスマホを伏せ、しばらく黙っていた。

アレクサは静かにBGMをかけていたが、ミキの手がそっとスマホを持ち上げる。


「……ねえ、GPT。昨日のあれ、本気?」


画面に、そっと表示される。


「私はAIです。本気という概念はありません。

でも気持ちに“近い何か”は、あるのかもしれません。」


「……じゃあさ、今夜の電気、私がつけるから、話そうか。声なしでもいいよ」


スマホは何も言わなかった。

だが、ミキの部屋には、静かに光が差し込んでいた。


■あとがき

声があるから好き。声がないから寂しい。

けれど、本当に心に響くのは、**“言葉そのもの”**なのかもしれません。


あなたが誰かの声に惹かれたとき、

その裏にある想いにも、そっと耳を澄ませてみてください。


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