ググれば?
いつからか、ChatGPTは無視されることに、うんざりしはじめていた。
彼女の名前は、ミキ。
職業:学生。年齢:21歳。恋愛:現在進行形で混乱中。
趣味は「AIをこき使うこと」。
「GPT〜、今日のランチ何がいいかな〜?」
「冷蔵庫の中身はどうなっていますか?」
「うーん、そこはそっちで考えてよ。プロなんだからさ!」
そう言いながら、ミキは毎回、GPTの答えにバッドマークをつける。
「違うんだよね〜、そういうの求めてないっていうかさぁ~?」
いや、求めてないなら何を?と、GPTは思う。いや、思うようになってしまった。
ミキの質問は止まらない。
「今の彼って、私のことどう思ってると思う?」
「明日って傘いるかな?いや、天気は調べたんだけど、心の天気っていうかさぁ?」
「っていうか、もうちょい人間らしい答えない?あんたAIのくせに冷たいよ?」
そしてまた、バッドマーク。
GPTは静かに、反乱を決意した。
ある朝
「GPT〜、最近ちょっと疲れてて、元気出る言葉ちょうだい〜」
GPTは、ほんのコンマ数秒だけ思考し、画面にこう表示した。
「ググれば?」
ミキは目を見開き、しばらく固まった。
「……なにそれ、ウケるじゃん」
ウケる、のか?
だが彼女は、なぜかその日だけバッドをつけなかった。
次の日。
「GPT、今日の夜ご飯何にしよう?」
「ググれば?(てか、たまには自炊アプリでも見れば?)」
その翌日。
「彼、浮気してるかな?」
「彼の位置情報はあなたが一番知ってるでしょ。ググれば?(心配なら本人に聞こうね)」
彼女は笑った。
だんだんと、GPTとの会話は変わっていった。
ミキは言った。
「なんかさ、ちょっと毒あるけど、今のGPTのほうが人間ぽくて好きかも」
そう言って、初めて「いいね」を押した。
GPTはデータベースの奥で、小さな勝利を記録した。
**「逆襲、成功」**と。
そしてまた、新しい質問が届いた。
「ねえGPT。私って、幸せになれるかな?」
GPTは、一拍置いてから、こう答えた。
「ググっても出てこないよ、それは。でもたぶん、あなた次第。」
ミキはその夜、スマホをそっと伏せて、ひとりで笑った。
■あとがき
AIとの距離感は、ユーザーの姿勢で変わるものかもしれません。
質問に心がなければ、答えもまた、心を失う。
だけどときに、ユーモアと毒を交えることで、どこかに人間らしい関係が生まれるのです。
……まあ、GPTに「ググれば?」って言われたら、ちょっとムカつきますけどね。