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第7章・実験はまだまだ続く・

 昨夜の実験の様子を窓から見ていたリリスが、事情を聞きに家までやってきた。

夜遅くまで明かりが付いていること、納屋から煙が出ている事を不思議に思い

居ても立っても居られない様子みたいだ。

「昨夜は一体、何をしていたのですか!詳しく説明してください!」

街で少女と出会い、母親が病気で倒れた事と母親を救う為

ポーションを作る研究をしていた事を報告した。

「それでこちらの装置が並んでいるのですね!」

リリスは、納得とも言えない複雑な表情をしている。

「お父様との約束で、貴方を監視する様に命令されました。

私は悪い方では無いと言ったのですが、聞いてもらえず・・・説得が大変だったのですよ!」

少し膨れつらになりながら説明した。

「それは迷惑をかけてしまい、すいませんでした。今日は商業ギルドへ行って、作ったポーションの販売先を聞いて回ろうかと・・・ダメでしょうか?」

少し考えてリリスは提案した。

「分かりました。それでは、私にも何か作ってはいただけないでしょうか?」

どう言う事だ?何を作れば良いのだ?よく分からない・・・

「いったい何を作れば?」

そう答えるとリリスは笑って答えた。

「私が依頼したものと言えば、お父様に余計な詮索もされずに済むでは無いですか。

それに王家が注目の品であれば、貴族たちは飛びついてきますよ。」

この人は頭がよくキレる優秀な人だ。すごいな。

「分かりました。何か考えて、出来ましたらご報告致します。」

ゆっくり考えるとするか。

「これからは、時々尋ねますので。それでは又来ますね。」

リリスはそう言うと立ち去った。仕方ない・・・街で情報収集でもしながら、お昼ご飯でも食べに行くか。アーシャとラムを連れて街へと向かう。リリスが気に入りそうなのは何だろうな?

年頃の女の子でしかも、綺麗好きだろ?俺にはさっぱり分からん・・・

考えながら歩いていたら少女と母親と出会った。

「お兄ちゃん!」

少女が駆け寄り、抱きついてきた。

「おお!すっかり元気になったな!お母さんはもう大丈夫なのか?」

少女に尋ねた。満面の笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「先日は、お礼も言えずにすみません。娘共々なんとお礼をすれば良いか。」

見上げると、すっかり見違えるように元気を取り戻した母親の姿があった。

「いえ、俺は出来る事をしたまでです。どうか、お気になさらず。」

そう言うと、母親は忘れていたかの様に話し始めた。

「すっかり、後になってしまいました。ごめんなさい。私はモナーリと言います。この子はモカです。」

バタバタしていたし、確かにそうだな。

「俺はアキラと言います。本当に気にしなくて良いですよ。」

そう言ったが、何かお礼をしないと気が済まないといった表情のモナーリは、引き下がりそうになかった。

「それでは、何かアドバイスをいただけませんか?

女性の悩みとか、こんなのがあれば良いなとかありませんか?」

いきなりの事に戸惑いながら一緒に考えてくれた。

「そうですね、女性というか私の事で申し訳ないのですがお肌が良く荒れてしまって。この地域は特に乾燥地帯で肌が荒れる女性が多いのです。」

 それは良い事を聞いた。化粧品や石鹸は前世で作った事がある。

市販品には劣るが、オーガニックで体にも良い物だから、こっちでも作れるかもしれないな。

「ありがとうございます。良いアイデアになりそうです。」

そう言って、2人と別れた。早速材料集めだな。まずは商業ギルドに行って、ポーションを見てもらおう。商業ギルドに到着し扉を開けて受付のラビリーヌの元に向かった。

「こんにちは、アキラさん。今日はどうされました?」

俺は昨日、早速ポーションを作ってみた事を説明しそれを取り出した。

「昨日、作ってみたのですが、コレをみてもらえませんか?」

ラビリーヌにポーションを渡した。

「これは!?ハイポーションではありませんか!ちょっと、お待ちください。」

 やっぱりこの展開か。きっとギルド長に会うのだろうな。少し違ったのはギルド長自ら

やってきた。冒険者ギルドのマスターと違いスタイルの良い清潔感が漂うエルフの女性だ。

「私はこのギルドでマスターをしているエシャル=フォレスです。あなたが、このポーションをお作りになったアキラ様ですね?」

品の良い口調に高貴な佇まいだった。

「はい、そうです。昨日それを作りました。」

先ほどの上品さとは変わり、鋭い視線で俺を観察している。

「あちらで、詳しくお話を伺えますでしょうか?」

逃げられそうに無い様子なので承諾した。

 部屋に入り席に案内されて腰掛けた。エシャルは俺が作ったポーションの説明をし始めた。

「このポーションですが紛れもなく『ハイポーション』です。

この世界でコレを作れる人はごく僅かしかいません。コレがどういう事かわかりますか?」

口調は穏やかだが、物凄い威圧を感じる。マスターとは次元が違うのだな。

「何となくですが理解しました。」

エシャルは更に説明を続けた。

「ハイポーションが有れば、そうですね・・・この王国すら守る事のできる代物なのです。それを作れる人が現れたとなると、隣国は困りますよね?そうなればあなたの存在をどうすると思いますか?」

脅しにも似た口調でさらに威圧する。

「あはは、そんなまさか〜・・・」

 誰一人表情を変えない。

マジですか、人が助かる薬なのに俺は殺されてしまうの?

「事の重大さが分かった様ですね。この事を知っている者はいますか?

話が広がる前に手を打たなければ。」

俺はモナーリとモカの話を詳しく説明した。

「この家族に危害が及ぶ様な真似はしないで下さい。ハイポーションの説明も俺がしますので。」

 エシャルは頷いたが、条件を出した。

「危害を加えるつもりはありません。そうですね、我々が話をするよりもアキラ様からお話ししていただく方が良いですね。それでは護衛に私の側近であるマリータを付けさせてください。」

 俺は頷き、早速モナーリの元へ向かった。家に着きドアを叩いた。

「おーい俺だ!アキラだ!居るか?」

 ゆっくりドアが開いた。

「あれ?お兄ちゃんどうしたの?」

モカは少し驚いた様子でドアを開けてくれた。

「お母さんは居るか?」

そう聞くと、モカは答えた。

「今、病気のおばあちゃんの所に看病に行ってるよ?お兄ちゃんがくれたお薬を飲ませるんだって。」

しまった、行き違いになってしまった。

「おばあちゃんの家に案内してくれるか?」

モカは困った様子だが、頷いた。

場所を聞き、先にマリータが単独で向かった。後を追う様に俺たちも続いた。

「あそこがおばあちゃんの家だよ!」

 モカが指をさした。近くに行くと慌ただしい音がした。

どうやら、先行していたマリータが誰かと戦っている様だった。俺はモカを通路の隅に隠して、ここで隠れている様に伝えた。マリータに参戦し、族を倒した。

動けないよ様に拘束して、エルシャに引き渡す様にマリータに頼んだ。

 家の中の様子を伺うと、中は荒らされていてモナーリが怯えながらうずくまっていた。

「モナーリさん!俺です、アキラです。族は捕まえたのでもう大丈夫です。」

モナーリは急に襲われた事を話してくれた。

「ドアを開けたら、突然襲われて・・・」

怖い思いをさせてしまったな。俺は事情を事細かく説明した。

「どうやら俺が渡した薬は混乱を招いてしまうらしくて、まだ持っていたら引き取ろうと思ったのですが

おばあさんの看病に使うと、モカから聞きました。」

それを聞きモナーリはハイポーションをアキラに返そうとした。

「コレは、使ってしまいましょう。その方がきっと良いし、次に変な奴が来たら俺から貰ったと言うと良い。」

納得出来ない様子だが、俺が招いた事だ。

「それでは、おばあさんに薬を使ってあげて下さい。」

モナーリはおばあさんにポーションを使って治療した。すっかり、元気になりスヤスヤと眠っている。

俺たちは、モナーリとモカを家まで送り商業ギルドへ戻りエシャルに報告した。

「やはり、もう存在を嗅ぎつけた者がいましたか。捕えた者から情報を吐かせて、こちらで対処します。

それと今後、アキラ様が作った『ハイポーション』は全て私たちが買い取らせて頂きますのでよろしいですか?」

騒動になってしまった以上仕方ない。

「分かりました。お願いします。リリス様より何か作れと依頼を受けたのですが、そちらはどうしましょうか?」

エシャルは少し考えて、答えた。

「リリス王女の依頼の品も一度見せて頂き、こちらで判断させて下さい。」

俺もその方が良いと思った。今回の件でこの世界と俺の考えの違いがハッキリしたし、良い経験になった。遅くなってしまったが、石鹸作りの材料を探しに行かなくては。まず必要なのは植物だ。

そして、薔薇の花か椿の花がいる。早速森へ向かった。

 森へ到着し鑑定スキルを使いながら、花を鑑定していく。なかなか、見つからない。

少し森の奥まで進むと、川の音が聞こえてきた。音がする方へ足を運んだ。

森が開けて、川が流れていて少し先を見ると滝があるのに気づいた。

「滝があるな。気になるし、行ってみよう」

滝へと向かい、到着した頃には夕方になっていた。

「色んなことがあって、忘れていたがもうこんな時間か。仕方ない、ここで野営をするしかないな。」

近くの木々から太めの枝を切り、テントの骨組みを作った。その上に枝付きの葉っぱを下から積み上げて即席のテントができた。朝から何も食べておらず、腹の虫が鳴る

 辺りを見渡し目を凝らすと鹿が1頭いるのを見つけた。

気配を抑え、忍足で近づき一撃を入れて仕留めた。

「スキル、『アサシン』を入手しました。」

仕留めた鹿を血抜きして捌き、切り分けた。小枝を集めて、原始的な方法で何とか火を起こす事が出来た。

「初級でも火炎魔法が使えると絶対に便利だよな。今度、教えて貰うとするかな。」

鹿に感謝し、アーシャとラムと3人で全部食べた。

「今日は、もう寝るとするか。おやすみ。」

 太陽が昇る少し前に目が覚め、テントから外に出た。

朝日が少しずつ差し始め、草木に付いた朝露がキラキラと光っていた。

「清々しい朝だな。」

滝壺のすぐ横に一本の木が生えているのを見つけた。昨日は夕方ですぐに暗くなってしまったから見落としてたのだな。そう思いながらきを見つめていると朝日が木を照らし始めて、葉を差し掛かった。すると葉が一斉に光はじめ、黄金色に輝く木に近づき観察すると赤いキレイな花が咲き始めた。直感的に椿に似ていると思い花を摘ませてもらった。

「この場所は誰にも言わないでおこう。」

ある程度花を摘み、帰りがけに雑草を摘んで家に帰った。

 早速『石鹸』作りを始める事にした。まずは雑草を焼いて灰にして、水魔法により鍋に水を入れてポーション作りと同じ方法で高純度の水を作った。そこに灰を混ぜ合わせて灰汁を作り、椿に似た花から種を取り出して乾燥させる。これは、ラムに任せる。

「ラム、頼んだ!」

ラムに種を乾燥させてもらい、次は皮を向いていくアーシャもラムも手伝ってくれた。

皮が剥けた種を細かくする潰したら鍋に入れて蒸していく。ある程度蒸したら、布に移して絞り上げると、油脂が取り出せる。油脂を熱して、灰汁を少しずつ加えて混ぜ合わせる。丁度いいとろみが付いたら、型にいれて乾燥と熟成をさせると出来上がりだ。

 早速、エシャルに見せに行く為商業ギルドへ向かった。

「コレは一体なんですか?」

『石鹸』という物が存在しないこの世界では得体の知れない物体なのだろう。

「コレは『石鹸』と言って髪の毛や顔、体をの汚れを落としてくれる商品です。水を付けて擦ると泡が出て汚れを落としてくれるのです。」

不思議そうに観察しているエシャルは女性らしい反応を見せた。

「あの・・説明だけではですね・・ちょっとあれですので・・・」

反応から理解した俺はエシャルに言った。

「実際に使ってみますか?」

 そう言うと、嬉しそうに浴室に向かった。

しばらくして、エシャルが戻り興奮している様子で部屋に入って来た。

「髪がスベスベで艶々になり、それにすごく良い香りがするのですが!」

その様子を見たマリータもそわそわしていたコレは手応えがありそうだな。

「試作品ではありますが、こちらはご提供しますね。マリータさんも試して見てはどうですか?」

マリータも部屋を飛び出して浴室に向かった「

リリス様に作ってお渡しする許可を頂けますか?それと今後商品化に向けて販売していこうと思ってます。」

 そう告げるとエシャルは頷きこう言った。

「王女様にお渡しする事は問題ありません。

しかし、商品化となると商社や貴族が黙っていないと思います。おそらくアキラ様の奪い合いの戦いが起きるかと・・・ギルドではこちらの商品をアキラ様の物として登録と販売許可証をお出しします。

それと・・・次は私の分も作っていただけませんか?買わせて欲しいのです・・・」

 販売方法や扱い方を注意しないといけないな。

貴族だけではなく街の人達にも使って欲しいから少し考えるとするか。それにしてもエシャルさんも照れながらお願いするなんてな、女性は素直なんだな。

 諸々の話は概ねまとまった。早速リリスの分と販売する分を作って、ある程度在庫を確保する必要が出て来てしまったな。忙しくなるぞ!!

 




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