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マジェスティア・アエラ ~希望したチートアイテムはレベル1から上がらない異世界でのんびり過ごせるブレスレットひとつだけ~  作者: 園之野希乃路


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59.初めてのパーティ(1)

翌朝、いつものようにお母さんお手製のお弁当を作ってもらい、冒険者ギルドの建物に向かった。


いつものように冒険者ギルドでまずは依頼掲示板を確認して、受けられそうな依頼があったら受けてから、最初は『蒼の誓』クランのアジトに向かい、お掃除などのお手伝いをして、それから依頼をこなしに行く。今日はそういうスケジュールを立てていた。


冒険者ギルドの建物に到着したら、さっそくGランクの依頼掲示板のところに真っ直ぐ向かった。朝は特に活気があるみたいでエントランスでまごまごしてると、突き飛ばされて大けがしそうだからね。


掲示板の所まで行ったら、おととい僕が風車の修理の依頼書を読んでいたとき、声を掛けてきたEランク冒険者の三人が、難しそうな顔をして立っていた。


「やあ、おとといはどうも。覚えてる? テムリオだけど。……確かライクと、エノと、ベラスだよね。」


奇跡的に名前を覚えていたのは、異世界に来て僕に声を掛けてきた人なんて、滅多にいないので、とても印象に残っていたから。それも三人まとめて名前を覚えたから、すらすらと出てきた。


「おう、テムリオか。また会ったな。あのときは攻撃術士と勘違いして悪かったな。今日も依頼を受けに来たのか?」


ライクは前と同じように気さくに返事をしてくれた。


「うん、何かできそうな依頼がないかと思ってね。そっちはどう? あの後、魔法が使える冒険者見つかった?」


それに対してライクが渋そうな顔で返事をした。


「いや、なかなか見つからない。そもそもヒーラーは数が少ないから上のランクからも引っ張りだこなので、Eランクと一緒になんてなかなか行ってくれないんだよ。前にいたヒーラーもDランクのパーティから誘われたのでって言って抜けちゃったけど、そっちのDランクパーティで討伐に行ったら、自分もすぐにDランクに昇格したって、さっき自慢げに話していたよ。」


なかなか厳しい世界なんだね……。と、自分も同じ世界にいるはずなのに、全く外の世界の話のように聞いていた。だって僕は万年Gランクだし、パーティなんて全く無縁の単独冒険者だしね。


「大変そうだね。俺に手伝う能力があれば手伝ってあげたいけど、何の能力も無い万年Gランクだからね。もし偶然魔法が使える冒険者と知り合ったら紹介するから、連絡先だけでも教えておいて。」


すると三人はお互いの顔を見合わせながら、そろってため息をついて、そのなかの大きい盾とハンマーを持ったエノがライクの代わりに返事した。


「連絡先といっても、自分達の家は南外門西地区だから、テムリオにわざわざ来てもらうのは気が引けるよ。」


荒くれ者が多いってイメージの冒険者だけど、この三人は全然そんな雰囲気のない、控えめな性格のようだった。


「えーっ、そんなこと無いぞ。俺の家だって南外門の中央だから、わりと近いんじゃないかな。友達の少ない俺に声を掛けてくれた三人は、もう俺の中じゃとっくに友達になってるんだから、そんな寂しいこと言わないでくれよ。」


「あ、ありがとうな。せめてこの近くにアジトでもあればいいんだけど、そんなもん、俺たちには望んだって絶対無理だから。」


確かにそうだよね。連絡場所があるだけでも、仕事は、やりやすくなる。


「だったら、うちのアジトを使えばいいんじゃねぇか?」


不意に横から声がした。


「あっ、トラヴィス。どうしたのこんなところで。」


驚いた。あとで教えてもらった話ではトラヴィスは『蒼の誓』のサブリーダーってことだったけど、そんな人がGランク掲示板に用があるわけないし。この人よっぽど暇なの?


「こんなところって、テムリオおまえなぁ、ここは俺の普段の仕事場だぞ。いてあたりまえだろう。それより坊や達、アジトが無いんなら、うちのアジトを使ってもいいんだぞ。。このテムリオはうちのメンバーなんだから、その友達も自由に使える。遠慮する必要はないぞ。」


「みんなも使っていいの?」


ちょっと驚いたのでトラヴィスに確認したら、うんうんと頷いてくれたので、本当に使っていいみたいだ。


「ああ、そうだね。うちのアジトなら、ここの近くだから、連絡するにも何かと便利だね。どう? みんな。急ぎの用がなければ今からアジトに案内するけれど。」


でも、どうみてもハイクラス冒険者に見える筋肉が盛り上がってるトラヴィスって、初めて見たら怖いよね。僕だって初めてメンバーに取り囲まれたときは、きっと死ぬって思ったもの。


「テムリオってアジトを持ってる仲間がいるの?」


弓矢を持った、ちょっと栄養が足りてない長身のベラスが、小声で僕に聞いてきた。他の二人は、怖いのか固まってる。


「うん、まあいろいろあってね。でもみんな優しくていい人だよ。」


「おお、俺はトラヴィスという、優しくていい人だ。よろしくな。」


トラヴィスは、三人の頭を乱暴にポンポンと叩いた。エノは今にも泣き出しそうな顔だ。二階に用があるらしいトラヴィスは、そのまま階段の方に行ってしまった。


「冒険者のアジトって、どんなところか、一度行ってみたかったんだ。テムリオ連れてってよ。俺たちもいつか自分のアジトを持てるくらいに頑張ろうって、いつも目標にしてたからな。」


トラヴィスがいなくなって、ホッとしたのか、やっとライクが口を開いた。


「普通の屋敷だけどね。じゃあみんな一緒に行こうか。女主はちょっと変な人だけど、乱暴な人じゃないよ。」


そうして僕は三人を連れて『蒼の誓』クランのアジトに向かった。きっとこの三人だって『蒼洞のアゼリア』のことは知ってるだろうから、今言うと怖がってきてくれないように感じたのでアゼリアのアジトだってことは黙ってた。


「おお、おいテムリオ。ここは貴族の館じゃねぇか。間違ってないか? 俺たちのような平民が正面から入っていって大丈夫なのか?」


ベラスが、僕にしがみつくようにして、門番のアレックに聞こえないよう小声で聞いてきた。他の二人は屋敷を見上げて、また固まってる。


「うん、大丈夫だよ。一緒に来て。……アレック、こんにちは。」


アレックに挨拶したら、「はっ。お帰りなさい。」と最敬礼してくれた。

はあ、ここは僕にとってもアジトなんだね。じゃあ「ただいま」って言うのが正しいのかな。まあ指摘されるまではこのままでいいか。


「門番が様になってるよ。」


アレックに小声でいうと、アレックは嬉しそうにした。僕は三人を連れて正面から屋敷の中に入っていった。今日はアレックはついてこない。


「おう、テムリオ、今日も早いな。おや、かわいいお客さんを連れてきたね。秘密の会議なら小応接室がいいんじゃないか?」


魔道士のイグナスが、まるでもう僕のことはクランの一員扱いで、気楽に声を掛けてきて、いつもの応接室とはエントランスを挟んで反対側の部屋を指差した。


「ありがとうイグナス。丁度良かったイグナス相談に乗ってほしいことがあるんだけど。」


「おおいいぞ、じゃあ俺も一緒に行こうか。」


そして小声で、「アゼリアは二階にいるぞ。あとで行って驚かせてやれ。」と笑った。


イグナスに案内されて入った小応接室は、いつもの応接室の十分の一くらい狭い部屋だったけれど、それでも会議室としては十分な広さで、装飾も応接室に全く劣らない豪華なものだった。


三人が言葉なく勧められるままに椅子に座ると、テーブルを挟んで反対側に僕とイグナスが座った。


「悪いが自己紹介されても、どうせ俺には覚えられないと思うから勘弁してくれ。それより何の相談だテムリオ。相談されるのは悪い気しないな。」


「うん、魔道士として魔法が使える人と仲良しなんじゃないかって思うから相談するんだけれど、この三人のEランク冒険者には魔法が使える人がいないらしいんだけど、イグナスはこの三人とバランスが取れるような冒険者に知り合いはいない?」


「なんだ、そんなことか。いくらでもいるぞ。10人くらいいればいいか?」


「い、いえ、ひとりいれば充分です。それと、すでにパーティに入っている人を引き抜くって、自分がされていやだったので、やりたくないです。」


ライクが勇気を振り絞ってる様子がよくわかる緊張した声でイグナスにそう言った。


「なんだ、テムリオにそっくりだな。こんな謙虚な坊やは、なかなかいないぞ。やっぱり類は友を呼ぶんだな。わかった、じゃあ、坊や達によく似た、おとなしめのヒーラーを紹介してやろう。ヒーラーが欲しかったんだろう?」


「はっ、はい、お願いします。」


ライクがパッと明るい顔になって、立ち上がってイグナスに伝えた。


「ところでヒーラーって何?」


僕が聞いてみたら、たぶんこれは知っていて当たり前という基本中の基本だったらしく、三人とイグナスまでも、お互いに顔を見合わせて、驚いていた。


「まさか、知らなかったのか……?」


でもそんな僕を馬鹿にすることなくイグナスは丁寧にヒーラーについて説明してくれた。


「一般的には、回復魔法を使える魔道士のことを言う。だがな、冒険者が『ヒーラー』って言うときは、それだけじゃ足りん。戦いながら仲間の様子を見て、誰かが深手を負えば治療に回り、体力が落ちてるやつがいれば回復魔法で支える。

常に自分の魔力の残りを計算しながら、パーティ全体の持ちこたえる力を底上げする――そんな役目だ。」


「ふうん、パーティの要になる重要な役目なんだね。」


「そうだ、だからこの三人はその要になるヒーラーがいないから困ってテムリオに相談したんだ。違うか?」


三人は黙って頷いた。


「テムリオも、この三人のパーティに入るのか?」


僕は全力で首を横に振った。とんでもない、僕に討伐パーティに入るなんて絶対にできっこない。


「なんだ、つれないな。ここまで友達を連れてきて、テムリオは友達思いのいい奴だと思ったばかりなのにな。きっとテムリオがいればヒーラーなんていらないと思うぞ。」


僕が驚くより先に三人が驚いた。


「えっ、そうなんですか。テムリオってそんな凄い魔道士なんですか!」


「いいや魔道士じゃない。防具も武器ももっていない、魔力もゼロの、ただの冒険者だ。」


イグナスは笑いながら否定したが、三人は意味がわからずポカンとしていた。


「イグナス、それはもういいよ。三人とも首をかしげなくても、大丈夫。イグナスはいい加減な話をしてるだけだよ。何の力もないって所だけが正しいんだから、あとは忘れて。」


いい加減なことなんて言ってないぞと、愉快そうに笑ったイグナスは、よしっといって立ち上がった。


「じゃあ善は急げだ。いまからヒーラーに会いに行こう。場所は魔道学院だ。」


へ?そんな学校があるんだ……。


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