4.さあ異世界転生です!(4)
4話にしていまだ異世界に行けず………
「あのう、これ大きすぎて恥ずかしいんですけれど、もっと細くて、僕が持っていた腕時計のバンドくらいのものにできませんか。できたらデザインも似せてもらって。」
すると、いかにもめんどくさそうに「チッ」という舌打ちが聞こえてきた。
えっ、いま「チッ」とやりましたよね。「チッ」と……。
ブレスレットからセシルフォリアさんに視線を変えると、そこには相変わらず穏やかな顔をしたセシルフォリアさんがいたので、ちょっとホットした。たぶん気のせいだよね、気のせい。
セシルフォリアさんは、「少しお待ちください」と微笑んで言うと、またフッとどこかに消え、同時にセシルフォリアさんが「アームレット」と呼んでいた不格好なブレスレットも消えた。
この消え方、慣れないから繰り返されてもやっぱり驚く。
それと、今回は部屋の色変化はないけど電話の保留音みたいな音楽が聞こえる……。
「おまたせしました。」
今度は数秒で戻ってきた。
短時間の場合は保留にしておくのね。
「これでいかがですか。デザインはあなた様がご愛用されていました時計に似せてあります。ただしプラチナの土台に金の装飾に変えさせていただき、同時に強度を高める特殊な加工済みです。」
腕には学生時代にバイトで貯めて買った腕時計の金属製バンドによく似たデザインのブレスレットがあった。僕のはメッキだったけどね。
「ああ、素敵ですね。これなら文句なしです!」
でもよく見たらバックルがない。一生取り外せないのかな。
「アームレットは取り外しできますが――」
あ。取り外せるのね。
「あなた様と一心同体型アイテムですので、名前を付けてあげてください。取り付けるときは名前を呼べば腕に巻き付きます。実体のあるアームレットですので耐用年数がございますが、あなた様の神定寿命の間は壊れません。」
セシルフォリアさんは相変わらずアームレットと表現している。
「それと、念のために情報提供しますと、転生するのは十歳の平民男子です。異世界の十歳は成人なのでちょうど合っているかと思います。」
確かに人体も物体だから持っていけないものね。
でも十歳に戻ってやり直し人生ってのは少しきついかな。
それと、さりげなく言ったけど「平民?!」。それって身分制度のある世界ってことだよね?
「まああとは行ってみればわかります。疑問点はアームレットを反対方向に回すと、カチッと音がする場所がありますので、待っていてくだされば私と話せるようになります。ではお待たせしました。これから異世界転生です。それではごきげんよう。」
はやっ。
ええと、まだ聞きたいことがあったような……。異世界転生直後はちゃんとパンツ履いてる?とか……。
転生直後に真っ裸で街中放置プレイはさすがに厳しい。せめてパンツくらいは。
ブラック企業にいた結構イケイケの先輩女子が、忘年会の席で酔っ払って、
「わたしぃー、去年車で事故っちゃってぇー、救急車で運ばれたのよねぇー、生きるか死ぬかの大怪我してぇー、全身血だらけの瀕死状態だったのにぃー、救急車の中でぇー、『今日は見られても大丈夫な下着つけてたかな』ってそればっか心配してたのよぉー。出血多量で死にかけてそれどころじゃないってのにねぇー。それ以来いつでも大丈夫なようにぃー、勝負下着を常に身につけてるってわけよぉー。があっはっはっはー」
って男性社員がいっぱいいるとこで大声で話してたな。あの気持ちが今わかった気がするよ。
なんてボーッと考えていたら、深い闇の中に落ちるように眠気が襲ってきて、それ以降の記憶がなくなった。




