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マジェスティア・アエラ ~希望したチートアイテムはレベル1から上がらない異世界でのんびり過ごせるブレスレットひとつだけ~  作者: 園之野希乃路


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3.さあ異世界転生です!(3)

電話の保留音が鳴ってる間って、「おせーなー」なんて言ってませんか?

実は保留音を鳴らしている間も相手の声がスピーカーから流れる電話機って結構多いんですよ。


「ほう、スキルではなくアイテムですか。例に出しておきながら申し訳ありませんが、実はアイテムボックスは最低のものでも初級レベルよりはるかに上なので今回は無理です。」


だろうね。


「はい。僕が欲しいのは、少し抽象的なのですが、『のんびり過ごせるブレスレット』のようなものなのですけれど。」


そう、僕の欲しいのは、のんびり過ごせる人生。

社会人1年未満の僕が残業続きの毎日で思っていたのは、『のんびり過ごしたいな』ということばかり。


本当は残業しなければならない仕事なんてなかったんだけどね。でも小心者の僕が「お先に失礼します」なんて言って、ひとりだけ先に帰ることができるはずもなく、残業しているフリして時間を潰し、妄想の世界に逃げ込んでいた。


たぶん、あの会社は僕に何らかの圧を無言でかけていたんだと思う。これは僕がブラック企業認定した理由のひとつでもある。


久しぶり会った大学時代の友人に誰にも話せないその悩みを打ち明けたら、「仕事が遅いお前には最初から期待しないで定時で終わるような仕事を与えてるってことはないのか?」なんてひどいことを言われてかなりへこんだっけ。


そんなときに一瞬にして『のんびり過ごせる』モードに強制的に切り替わってくれるボタンなんてものがあればいいのになんて、残業の毎日で、お気に入りの腕時計をチラチラ見ながら妄想して現実逃避していたっけ。


いまもとっさにそれが頭に浮かんだ。


というより、今気がついたけど、あの腕時計だけじゃなくて、着ていた服も全部消えてる。思わず確認したら、かろうじてパンツだけは履いてたけど。神様は見苦しいと思うものだけは隠したのかも。


死んでしまったのに、あの腕時計のバンドのデザインはお気に入りだったので、せめてバンドだけでも返して欲しいという、なさけない物欲が本音だけど、それをチートアイテムってことにすれば異世界に持って行けるんじゃないだろうかって、とっさに思いついたわけ。


「はあ、確かに抽象的ではありますね。でもその程度のものなら初級レベルとしてはちょうどいいと思いますよ。希望通りではないかも知れませんが、似たような能力をアイテムに付与できますので、それをアームレットに付与させていただきます。」


こんなものを欲しがるような変わった方はあなた様だけですがと、微妙に馬鹿にしたようなことをつぶやいてるけど、異世界で勇者並みの活躍を期待されても困るから、そういう認識でいい。


「では、そのまましばらくお待ちください」

と言ったかと思うと、いきなり視界からフッと消えた。


「おお神様っぽい」

セシルフォリアさんが消えた途端にモノトーンだった神の国の風景が、突如レインボーカラーに輝きだした。グラデーションでいろいな色に徐々に変化していき、流れる川のような模様になったり、色とりどりの風船が膨らんではじけるような模様になったりしている。ちょっと歩いてみたら、波紋のように虹が足元から広がっていく。これは楽しすぎる!


これは、「待っている間、こんなのでも楽しんでいてね」ってサービスなんだろうね。


どのくらい待たされたのか、なんにもない空間ではいくら待っていても時間の感覚がまったくわからない。それでも、カラフルな演出のおかげで、ほんのわずかに感じられる時間でセシルフォリアさんは戻ってきた。


戻るときも突如目の前に現れ、また何の変化もないモノトーンの世界に戻った。


「はい、チートアイテムが完成いたしました。『のんびり過ごせるアームレット』です。真ん中が回るようになっています。腕を前に出した状態で手前に回すと『のんびり過ごせる』能力が起動します。異世界転生するのは『意識』だけなので『物体』は持って行けませんが、チートアイテムだけは例外です。」


言われて左腕を見ると、何とも悪趣味な黄金色に輝く金属の太い輪っかで、映画で見たことのある古代ギリシャの裸の戦士がつけていたようなものがついていた。僕としてはこんなのをつけて街の中を歩けったって恥ずかしくってとても無理。


アームレット?

これ、どうにかならないのだろうか。僕はブレスレットと頼んだのだけれど、どうみてもブレスレットとはとても呼べない。


それと、「物体は持って行けません」って、このブレスレット以外は何も身につけていない全裸転生? そんなの転生直後に逮捕されて詰んじゃうよ。


まあそれはいいとして。よくないけれど………。ブレスレットに意識を戻す。


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