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マジェスティア・アエラ ~希望したチートアイテムはレベル1から上がらない異世界でのんびり過ごせるブレスレットひとつだけ~  作者: 園之野希乃路


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21.市場に行こう(3)

東京の浅草橋駅周辺には、ビーズアクセサリー用のビーズなどを売ってる、ハンドメイド用アクセサリー小物ショップがたくさんあります。

「お兄ちゃん怖い。」

胸の中に抱えたエルが、震えるような小声で甘えてきた。


「大丈夫だよ。お兄ちゃんがいるからね。」

抱えたままエルの背中をポンポンした。


そうはいっても、何か大きな事件が目の前で起こった様子に、僕もかなり恐怖を感じた。

アゼリアが本気モードでこの混雑している市場の中を疾走して追いかけていたのだ。それが普通であろうはずがない。僕はエルを不安がらせないよう強がりを言っただけだ。


『こんな臆病な小心者に、冒険者なんて無理だよアゼリア。』

心の中で叫んでいた。また心の中の声が外に漏れないよう注意しながら。


「エル、どうする? 怖かったらお買い物は次にする?」

まあ、本当は僕が怖くなったんだけどね。


「ううん、エルシェは大丈夫。あれ? お兄ちゃん、そのアームレットはどうしたの?」

突然僕の腕にブレスレットが現れたら、それはびっくりするよね。しかもプラチナと純金でできてるブレスレットだよ。


でも、エルまでブレスレットのことを『アームレット』って呼んでる。まあいいか。


なにか適当に言いくるめようと考えていたら、アクセサリーショップの、じゃらじゃら全身装飾した、おじさんか、おばさんか、よくわからない人が先に声を掛けてきた。


「ほーんと、危なかったわよね。坊やと嬢ちゃん、大丈夫だった? もう絶対に間に合わないって思って、思わず目をつぶっちゃったわ。」


あ、声は、おじさんだ。


「ところで、すごいアームレットね。何処のお店で買ったの? いや、中央市場の露店で買えるようなものじゃないわね。よーく見せて? 大丈夫よ、このマーガレット様は、子供の持ち物を取りあげたりはしないわ。」


マーガレット!

よく見たらうっすらお髭もあるし!

口紅が赤すぎるし!


こっちのインパクトが凄すぎて、いま目の前で起きた大事件の影が薄くなってしまった。


「どうぞ。確かに露店で買ったものじゃありません。残念ながら外せませんので、このままでもいいですか?」


「まあ、どこかの貴族様みたいなしゃべり方!

それに、外せないって、奴隷リングでもあるまいに、あはは。

こんな豪華な奴隷リングがあったら、私、奴隷になりたくなるわ。」


そう冗談を飛ばしながら、何やら小さなものを取り出すと、ブレスレットに当てて、のぞき込むようにしてきた。きっとルーペみたいなものだろう。


「これ、魔法アイテムじゃないの? 坊やもしかして冒険者?」

「そうですが、どこで魔法アイテムだって気づいたんですか?」

「あら、これでも宝石を扱うアクセサリーショップ経営者よ。鑑定魔法くらい使えるわよ。もっともこれは鑑定できなかったけど、ただのアクセサリーじゃないことくらいは読み取れるわ。」


何の役にも立たない珍しい能力が付与されてるってだけで、魔法アイテムってほどのものじゃないけどね。


「これ国の宝になるほどの名品よ。大事になさい。誰かに狙われないよう注意するのよ。でも大丈夫、よほどの目利きじゃなければ、メッキと区別は付かないわ。ほら、たとえばこれ。」


といって、お店の奥から、金属製のブレスレットをいくつか出してきてくれた。


「ほら、安物だけど、しろうと目じゃ区別付かないでしょ? こちら彼女? 坊や、お揃い用に買ってあげたら?」


「彼女じゃなくて妹」と、エルが小声で言ったけれど、間違えられたことが少し嬉しそうだった。


すっかり怯えていたエルが、「マーガレットおじさん」のおかげで、大分機嫌を直してくれたみたい。いまは、夢中になってアクセサリーを選んでる。


「まあ可愛い嬢ちゃんだ事。ほら、これでもお飲みなさい。」


マーガレットが、なにやら黄色くてまるい果物を手に取ると、反対の手に持っていた、ちいさなナタで、頭のあたりをポンとたたき切って、ストローのような物を指すと、僕とエルに一個ずつ手渡してくれた。


知らないおじさんに物をもらってはいけません、とは習ってはいないのか、エルは嬉しそうにお礼を言うと、ストローに口を付けながらアクセサリー選びを続けた。なぜか、きゃあきゃあ、おかしそうに笑いながら飲んでる。


僕も飲んでみたら、なんとストローがぷくぷく膨らんだりへこんだりしながら、中のジュースを口の中に勝手に流し込んでくる。確かにこれは楽しい。これって元の世界の子供向けアニメでみたことある。


マーガレットが自慢そうに説明してくれた。

「『ぷくぷく麦藁(むぎわら)』よ。そのうち、流行の発信源の、このマーガレット様の口紅を、みんながつけるようになるから、そうしたときに必要になるって思って開発したの。口紅付けたら、器に直に口を付けて飲めなくなるものね。魔力吸収力のある品種の麦藁をカットして、色を付けてから魔力を込めたのよ。」


そうだね、悔しいけど、目の付け所はすごくいいかも。何が悔しいのか、思いつかないけどね。


「なら、この『ぷくぷく麦藁(むぎわら)』を『ぷくぷくストロー』って名前にしたら? ストローって、子供達の呼び方で麦藁のことだよ。」


自分が呼びやすいからだけどね。そうしたらマーガレットも、『ぷくぷくストロー』が気に入ったようで、嬉しそうに繰り返していた。


「お兄ちゃん、エルシェはこれが欲しい! お兄ちゃんのアームレットのクチドメリョウで三個買って。」


エルや、どこで『口止め料』なんて言葉を覚えたの? よい子は使っちゃだめだよ。


でも、確かに割高だけど、この店のアクセサリーなら『口止め料』になるかな。

僕がどこかの貴族の子だろうと勘違いしているらしいエルは、僕のブレスレットに妙に納得してる様子だった。


今日の報酬を全部はたいて、エルに金属製のブレスレットを三個買ってあげた。


「まいどあり。坊や名前教えて。もしそのアームレットのことで困ったことができたら、必ずこのマーガレット様を思い出して頼ってきてね。いつもここでお店をやってるわ。きっと役に立つわよ。」


僕は名を名乗ると、ありがとうと言ってお店を後にした。


一通り、この国の貨幣価値や物価について確認できたので目的は果たせたかな。

屋台で何か食べたかったけど、残金が足りないので、エルに謝って、いい匂いの屋台街を通り過ぎて帰宅した。


僕の初任給で買ってもらったと、エルが嬉しそうにブレスレットを自慢して、「お父さんとお母さんにもあるよ」と、あとの二個をふたりに手渡した。


お母さんは大喜びだったけれど、お父さんは微妙な顔をしていた。


でも、ああ、こういう効果があるんだね。

お母さんもお父さんも、僕の腕にあるブレスレットは市場で一緒に買ったと勘違いしてくれた。エル、そこまで考えて、僕におねだりしてくれたんだ!


市場であった騒動についても話してみたら、お父さんの話では、街中の騒動は『市中警備隊』というのが以前はあって、そこが対応していたけれど、冒険者ギルドに吸収されて廃止になったみたい。冒険者が警備の仕事を依頼されて、賊をおいかけていたんじゃないか、という事だった。


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