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売られてる?

ティルンみたいなキャラは多分初めてなので、探り探り書いてます‥。

翌日、大きな物音が朝早くから響いてきて、マヒロはその音で目覚めた。昨夜は考え事をしながらぼんやりと時を過ごして、知らぬ間に寝ていたらしい。強ばった身体をほぐしながら外を見ればうっすらと明るくなってきている。夜が明けてまだ間もないほどの早朝と思えたが、何の音だろう。

洗面所で顔を洗い、普段着に着替えて外の廊下に出た。物音はやはり玄関口の方からしている。

そちらの方へ向かっていくうちに、少年のような声が響いてきた。

「その荷物もだよ、気をつけて!」

あれは昨日聞いた、国王の第四子ではないだろうか。‥王子とかは呼ばないんだな、とその時マヒロは思った。

挨拶、した方がいいだろうか。だがかなり早い時間だし‥というかこんな時間に引っ越しみたいな作業をしている?なんでだろう。

そっと廊下の角から玄関口の方を覗けば、やはりあの金髪のヒトがいた。名前は確か‥

「ティルン様、こちらにどうぞ」

ルウェンがそう言って奥の方に案内しているのが見える。談話室に行くのだろうか。‥荷物は客室の方に運ばれるようだ。マヒロは、朝食の時にでも挨拶すればいいか、と思い直して、自室の方へ踵を返した。



部屋に戻るとジャックがやってきていてお冠だった。

「マヒロ様!やっぱりあのまま寝ちゃったんですね?ドレス、皺になってるじゃないですかっ」

「あ、ごめ‥」

「あー!しかもお化粧落とさないで寝たでしょう!?信じられない、もう!落ち切ってませんよ、こちらにいらしてください!」

ぷんぷんしているジャックに逆らえるはずもなく、言われるがままに椅子にかけた。ジャックはお湯を入れた洗面器を持ち、手には何やらのボトルと白い布をもっている。そしてボトルの中身を布に出し、少し湯をつけて丁寧にマヒロの顔を拭い始めた。絶妙な力加減でまた眠ってしまいそうに気持ちがいい。

「ジャック‥眠くなる‥」

「まだ早い時間ですから、お休みになっていてもいいんですよ。‥あの騒動で目を覚まされたんでしょう?」

ジャックがそう言ってくれる。あの騒動、とは引っ越しの事だろうか?

「引っ越し‥してた?」

「‥ティルン様がお荷物と一緒に来られたんです。今日と言われたから朝早くてもいいですよね、ってことらしいですけど‥」

ジャックの手の動きが鈍くなった。マヒロはどうしたのかと思って声をかける。

「ジャック?どうしたの?」

「‥いえ!マヒロ様、本当にお肌は大切にしてくださいね。ジャックがいつでも力をお貸ししますから!」

「うん?ありがとう」

顔を全て拭い終わると、もう一度湯にくぐらせた別の布で優しく拭きとられ解放された。すっきりとして気持ちがいい。

「‥マヒロ様、これから薄くお化粧しましょう」

「え?なんで?」

今日は何かイベントがあっただろうか?アツレンに戻るのは三日後くらいだと聞いているし‥。

「なんかあったっけ?」

ジャックはきょとんとした顔をするマヒロを見て、ハア、と大げさにため息をついた。

「何もなくたって化粧するんです!美のために手を抜かない!」

「‥それは、ちょっと面倒く」

「マヒロ様」

ジャックがマヒロの目の前に、両手を腰に当てて立ちはだかった。ゆっくりと顔をマヒロに近づけてくる。

「ジャックがお仕度を致しますからね?」

「ハイ‥」



薄化粧を施してもらうと、やはり肌艶がよく見える。気分的にも上がるなあ、と思ってジャックに礼を言うと「毎日の積み重ねが大事ですからね」とにやりと笑われた。なんだろう、なんか怖い。

暫くして朝食の支度ができたと言って呼ばれる。ダイニングルームに行くと、やはりティルンがいた。そしていつもマヒロが座っている、アーセルの斜め前の席に座っている。

(ありゃ。どこに座ればいいかな)

カトラリーが置いてある様子を見て、ルウェンの隣に座った。いつもであればテーブルのお誕生日席にアーセル、その左斜め前にマヒロ、右斜め前にルウェン、という並びだったのだが、そのマヒロの席に今はティルンが座っている。

遅れてやってきたルウェンが、マヒロが座っている席を見て慌てて言った。

「マヒロ様、俺の席と変わりましょう。アーセルの隣に」

「なんで?ルウェンはいつもの席にいればいいじゃない?」

向かいの席からティルンが鋭い声を出した。へ、と思ってティルンの方を見れば、心底嫌そうな顔をしてマヒロを見ている。‥嫌われてる?でも何もしてないけど‥ていうか喋ってもないけど‥。

そのティルンの声にも負けずルウェンは言葉を続けた。

「いえ、マヒロ様はこちらのお席でいいですから」

「‥なぜ、それをルウェンが決めるの?」

ティルンは不機嫌そうにルウェンを軽く睨んだ。二人の間に漂う不穏な空気を、マヒロはどうしていいかわからない。一度座った椅子から中途半端に腰を浮かし、あわあわとしているところにアーセルがやってきた。

「アーセル様!おはようございます」

アーセルはティルンを見て軽く会釈をするが、その席を見て眉を顰めた。そしてマヒロが座っている位置を見る。ルウェンがアーセルの顔を見て、重ねて言った。

「マヒロ様、どうぞこちらに!」

譲られた席に座った方がいいのか、と思いながらもルウェンの勢いに押されて座る。するとティルンが鋭い目でこちらを睨んできた。こわ、と思うが直接何か言われているわけではないので反応もできない。

全員が席に着いたのを見計らって使用人たちが給仕を始めた。温かく美味しい食事が運ばれてくる。今日はマヒロの好きなフレットという料理があったので、思わず「わあ!」と声を上げた。給仕をしてくれている使用人もニコッと笑った。

するとそれを見て、ティルンがふっと鼻で嗤った。

(‥‥最高~に、感じ悪いなこいつ‥)

とマヒロは思ったが、とりあえず無視することにする。

アーセルはそんなティルンの様子を疲れたように見ていたが、何も言わずに食べ始めた。ルウェンがティルンに声をかける。

「ティルン様、随分朝早くにおいでになったんですね」

「うん、僕、早くアーセル様の傍に来たくて!今日から来ていいって言われてたから待ちきれなかったんだ!」

それにしてもあの時間帯は非常識じゃね?と思ったが何も言わず、マヒロは黙々と食べ続けた。フレットは柔らかいパン生地を甘めの卵液につけて焼いた、フレンチトーストに似た食べ物だ。間にカリカリに焼いたベーコンのようなものが挟んであり、甘じょっぱくて美味しい。

「アーセル様、今日は何かご予定あるんですか?」

ティルンが明るい声でアーセルに尋ねた。アーセルはちらっとマヒロを見た。ん?なんかあったっけ?と考えながらアーセルを見返していると、思わぬ言葉がアーセルの口がら出てきた。

「‥今日はマヒロ様と一緒に街を視察に行く予定です」

ええええ?!聞いてないっすけど?!

とは思ったが、どうにもアーセルがすがるような目で見てきたのでごくりとフレットを呑み込んでうんうんと頷いてみせた。

再びティルンは顔を顰め鋭い目でマヒロをねめつけてくる。マヒロはだんだん腹が立ってきた。なんだこの野郎。私があんたに何をしたって言うんだよ。売るなら買うぞ、その喧嘩!

「そうだったね、アーセル」

「じゃあ僕もご一緒します!」


なんだお前、非常識なやつだな。行っていいですかっていうお伺いもなく来ることは決定なんかい!


お読みいただきありがとうございます。

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