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告白

「私はもうマヒロから離れない。何があっても」

ハルタカはこのところ見せていた鬱屈した表情とは打って変わって、何か振り切ったようなすっきりとした顔で、それでいながら確固たる意志を曲げないと決めたような顔でそう言った。

そういうハルタカを見て、アーセルは眉を寄せた。

「‥‥龍人(タツト)様。子どものようなことをおっしゃらないでください。マヒロ様はきちんと私がお送りしますので」

「私もともに行く。それでいいだろう」

アーセルはそう言ってきかないハルタカを知らず睨みつけた。わずかにアーセルのほうが背が低いので見上げるような形になる。

ハルタカは腕の中にマヒロを抱きしめたまま、その鋭い視線を受け止めた。

何となく不穏な空気を感じたマヒロは焦った。‥自分を助けてくれた人が何らかの手続きをしたいと言っているのにハルタカがそれを拒んでいるように思えたのだ。それはよくない、と思ったマヒロはぐいぐいとハルタカの腕を押してその中から抜け出そうとした。

「いや、ハルタカ私自分で歩けるし、大丈夫だからとりあえず離して‥」

そうマヒロが言いかけた時、その上から畳みかけるようにアーセルが言葉をかぶせてきた。

龍人(タツト)様、マヒロ様も困っていらっしゃいますよ。我儘をおっしゃらずにお離し下さい」

そう言うと半分抜け出しかかっていたマヒロの腕をぐいっと引っ張って自分の方に引き寄せた。

アーセルのその振る舞いを見たハルタカは、わかりやすく顔を顰めぶわっとタツリキで威圧した。アーセルは自分をレイリキで覆って対抗する。だがそのやり取りはあまりマヒロにはわからないものだったので、マヒロは二人の屈強なヒトに囲まれてアワアワしていた。

「な、何かわかんないけど!とりあえず詰所とやらに行きましょう!ハルタカも一緒で!ね!」

そう言って二人の間に割り込んだ。が、アーセルは手を離してくれない。何だこの世界の男は一回掴んだら離さない的な傾向があるのか?

そう思いながら目顔でアーセルに合図をし、そうっと腕をもぎ取る。ハルタカがふっと笑った気がした。次の瞬間、ぐっとマヒロの身体がもちあげられた。

「へっ?!」

あっという間にハルタカに抱きあげられ、高く跳躍されていた。跳びながらハルタカはアーセルに言った。

「先に詰所に行っているぞ!」

そう言いながら高い跳躍を繰り返し移動する。高低差に気分が悪くなってハルタカの腕にしがみつきながらも、マヒロはなんで今ハルタカは嬉しそうなんだろう、と考えていた。



退異騎士団詰所は人々が多く出入りしていてごった返している雰囲気だった。そこにハルタカが最後の跳躍を終えてすたん、と降りていく。その姿を見た騎士たちから驚きの声が上がった。

龍人(タツト)様!」

「お探しの方ですか?」

「見つかったのですか?」

などと口々に言いながら近寄ってくる。ハルタカはマヒロを抱き上げたまま、表情を変えずに返事をした。

「ああ、お前たちの団長が見つけてくれた。もう少しすればこちらに戻ってくるだろう。調書を取りたいそうだから待たせてもらう。‥柔らかい長椅子がある部屋を準備してくれ」

「了解しました!」

ハルタカの言葉に騎士礼を返し、二人ほどの騎士が建物の中に戻っていく。ハルタカはマヒロを抱き上げたまま建物の中に入っていった。ほとんど全員の騎士たちがこちらを見ているようだ。

マヒロは小声でハルタカに言った。

「あの‥恥ずかしいから下ろして‥」

「嫌だ」

何なのこの嫌だムーブ。嫌だだけすっごいはっきり言うじゃん。

「‥嫌だじゃなくてさ‥」

「もう絶対にマヒロをこの手から離さない」

そう言ってマヒロの額に顔をすり寄せてくる。暴力!美貌の暴力が傍に!

「‥熱いな?熱があるのか?」

「違います!ハルタカさんが変なことするから!」

「変なことはしていない、気持ちのままに行動しているだけだ」

「気持ちのまま‥」

それって本能的な‥?肉欲的な感じのやつなの‥?

ちょっとそう考えると怖くなってそうっとハルタカの顔を押して離した。離されたハルタカは顔をむっすりさせた。あ、久しぶり、この顔。

「不満そう」

「不満だ」

そう答えてむっすり顔を崩さない。なんだかおかしくなってマヒロはくすっと笑った。その顔を見てハルタカのむっすり顔が崩れて、少し笑顔になる。

「マヒロが笑うと、私は嬉しい」

「‥‥そ、ですか‥」

だから!美貌の暴力!顔面の攻撃力がカンストしてる!

マヒロは自分の顔を両手で覆った。その時、騎士の「こちらにどうぞ」という声が聞こえた。広い部屋の横の方にある小さな部屋に案内される。

「仮眠のための長椅子しかなくて‥こちらの部屋でよろしいですか?」

「構わない」

ハルタカはそう言うと、クッションが置かれている長椅子にそっとマヒロを下ろした。そしてその横に自分は跪く。

騎士はそれを見ると慌てたように部屋を退出していった。

マヒロは床に膝をついているハルタカを見て慌てた。

「いやハルタカさん、座ってよそんなところに‥」

「マヒロ」

ハルタカはすっと腕を伸ばしてマヒロの肩に置いた。大きな掌がマヒロの肩を覆う。そこから暖かさが伝わってくる。


「私と番ってくれ。私は、マヒロを愛している。もうこの手から離せない。マヒロがいなければ私は生きていけないとわかった」

「ハル、タカさん‥」

マヒロは言葉を失って茫然とハルタカの顔を見た。ハルタカの顔は無表情のように見えるが、この一か月見てきたマヒロにはその目の輝きに熱がともっているのを感じ取れた。

「長い、長い生を負わせることになる。‥死の安寧はまだ遠い。きっとマヒロには負担になるかもしれない。だが」

「ハルタカさん」

マヒロは肩に置かれた掌にそっと自分の手を重ねた。

「本当に‥私のこと、好き、なんですか‥?珍しいから、とかじゃなくて‥」

「珍しい?‥確かに珍しいかもしれないが、私はマヒロだから側にいてほしいし、離したくないと思う。お前が攫われた時‥心臓が止まるかと思った。お前を喪うかもしれないと思った時、何も考えられなかった。‥私はお前を愛しているのだと思う。それでは・・だめだろうか?」


お読みいただきありがとうございます。

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