復活
アルフレッドは五人がかりで押さえつけられていた。
両足がおられ、腹も殴られ内臓が潰れている。口から血を流しながらもまだ抵抗を続けていた。
ユーリはそうそうに降参していた。両手をあげてひざまずいている。
この場のリーダーであるランダがアルフレッドの前に立つ。
「あんた、アルフレッド・ドゥーランだろ」
アルフレッドは暴れるのをやめ、殺意を込めた視線を向けた。
「あたしたちは何も皆殺しにしようってんじゃない。むしろ、新体制のためにも、魔術師の協力者は必要だ。ホムンクルスに好意的なルグラン家とか、現体制を恨んでる魔術師とかな。逆に既得権に浸かることしか考えてないドゥーラン家なんかはダメだ。お前も嫌いだろ、ドゥーラン家」
アルフレッドは何も言わずに聞いている。ランダはそれを肯定とみなした。
「こっちに来い。ここで死んだってつまんないだろ?」
舌打ち。
視界の隅でユーリが泣きながら首を振っていた。反抗するなと目で訴えている。
「言っとくが、学園からの助けは来ないぞ。そっちも同じ状況だからな。これで国内の戦力は壊滅。もちろん、各地に駐屯している部隊への対処も考えてある。このくだらない世界を変えたいと思わないか?」
アルフレッドの瞳がわずかに揺れる。
ランダは優しい微笑を浮かべた。
「だから来いよ、"シュディックの誓い"へ」
「……シュディック」
「そうさ。魔術師へ反旗を翻した偉大なる一族。知ってるだろう?」
アルフレッドは、笑う。大声で、高らかに。
血を吐きかけた。
「失せろ、三流が」
「そう。残念」
ランダは手刀でアルフレッドの心臓を貫いた。
ユーリは目を伏せた。
恐怖で体が震える。涙があふれて止まらない。
ランダはゆっくりとユーリに近づいていく。
「さて、あなたはどう?」
「なる! なります。仲間になります。だから殺さないで!」
「そう。よかった」
ユーリはおずおずと顔をあげる。
ランダの顔が目に入った。
その背後で、ホムンクルスたちが倒れていた。
「え?」
アルフレッドの死体もない。
そこで気づいた。魔力が正常な状態に戻っている。
魔法が使える。
ランダはいぶかしみ、ユーリの視線を追った。
黒い触手がランダの足をつかんだ。
「くっ!?」
床にたたきつけ、振り回す。三本の触手で全身を拘束され、宙吊りにされた。
アルフレッドが幻覚を解き、ランダの前に現れた。足は折れ、血は流しているが、手刀による傷はない。
触手の一本に、玉座のごとく腰掛け、傲然と敵を見下ろす。
「残念だが失敗だ。三流テロリスト」
空気を操り、ランダの意識を奪った。
生かすのはひとりでいい。
他の敵を使い魔で皆殺しにする。
敵がいなくなった途端、気力の糸が切れた。その場に倒れ込む。
「あ、あ、あ……っ アルくんんんん!! 怖かった、死ぬがとおぼったあああ!!」
「お前、寝返ってなかったか?」
「一生ついていきばず!!」
「迷惑だ。いっででで」
ユーリに抱き着かれ、傷が痛む。
引き離したいがそんな力もない。
触手の悪魔に周囲を守らせ、もう一匹の悪魔を召喚。
人の背丈ほどの翼竜があらわれる。視界を共有し、飛び立たせた。
爆発でできた穴を抜ける。窓を突き破り、外へ。パーティ会場の壁を見下ろす。
爆発性の鱗粉を発生させ、壁を破壊した。
悪魔の目を通し、会場内の人間たちが逃げ出すのが見えた。遠くには騎士団もいる。
「あとはてめえらでなんとかしろ! 俺はもうなんもせんぞ!」
「なんで急に叫ぶの? 頭うった?」
ユーリの声を聞き流し、アルフレッドは意識を手放した。




