10対1
地下室ではホムンクルス20名が魔道具を守っていた。
棚が多いため、狭苦しい。四隅に置かれた燭台で炎が揺れている。
床の中央には魔道具。
直径50センチの円盤。真ん中に穴が開き、爆発的な魔力を放出している。
20人は四つの班に分かれている。
ここを指揮するのはワトゥという、やさぐれた女性。
守りは厳重だが、空気は緩んでいた。
魔術師たちはパーティ会場で包囲されている。地下室へ来るための一本道には二人の見張りがおり、奇襲を受けることはない。
弛緩した空気に、緊張が走る。
爆発音がしたからだ。
ワトゥの耳がぴくりと動く。視線をあげると、部下たちと目が合った。
「何事ですかね?」
ワトゥは考える。
爆発音は二階から。そのあたりにはロウディたち三人がいるはずだ。
何かあれば報告に来るだろう。
「配置を崩すな。外の見張りにも伝えろ」
指示を受け、部下のひとりが扉から顔を出して伝達する。
しばらく待っているも、音沙汰なし。
対処が終わったにしても一報はあるはずだ。
「一班、二班。音の場所へ向かえ」
「半分で行くの?」
「もし全滅してたら、三人殺した相手に五人ぶつけても被害が増えるだけだ」
「了解」
一班長のランダが答え、二個班の十人が部屋を出ていく。
「全員、いつでも戦えるようにしておけ。外の二人にも伝えろ」
伝達するため、ザインが扉から顔を出す。
「え?」
「なんだ、どうした?」
ザインは答えない。
次の瞬間、ザインが部屋の中に吹き飛んできた。
「敵だ!」
ワトゥは反射的に叫ぶ。
部屋にいた全員が戦闘態勢をとる。
ばたばたと音がした。二人、首にナイフを刺されて倒れている。
(なんだ!? どこから投げられた?)
部屋の中を見まわすも、敵の姿はない。ドアが閉まり切る前に投げられたのか?
「扉を固めろ」
指示を出した直後。
「うわああ!?」
ひとりが叫びをあげる。急に態勢を崩し、ものすごい力で暗がりに引きずり込まれた。
マークとブルの二人が剣を構え、仲間が消えた方へ駆け出そうとする。
ぽーん、と何かが放られた。
マークが反射的にキャッチすると、それは暗がりに消えた仲間の首だった。
「な!?」
勢いよく前に出ようとしていた二人も二の足を踏む。
ワトゥが指示を出そうとしたとき、視界の隅で閃光が走った。
ナイフだ。魔道具を破壊する軌道。
「くそ!」
ワトゥは魔道具を優先。飛び込んでナイフを掴む。
着地すると同時に飛んできた方向へ投げ返した。
「ああああああ!」
背後から悲鳴。
振り向くと、二人がやられていた。
ブルは首を描き切られ、マークは今まさに倒れようとしている。
マークの体の陰から、何かが飛び出した。
まず目に入ったのはメイド服。
質素な黒白の服を身にまとう女、リリアがワトゥに飛び掛かって来た。
「こいつが!」
リリアは短剣でワトゥの頭を狙う。
ワトゥは首をひっこめてよけた。リリアはさっと身をかがめ、ワトゥの足の健を斬った。
動きの鈍ったところへ追撃。背中に回り、首をかききる。
一瞬の出来事。
残った部下たちがリリアに襲い掛かるも、すでにワトゥはこと切れていた。
リリアは残りの敵も始末すると、床に置かれていた魔道具を破壊した。
リリアは変化を知覚できない。
しかし、魔術師たちは気づくはずだ。……その冷静さがあればの話だが。
「さて。間に合うといいのですが」
耳を澄まし、情報を集め、次の行動に移った。




