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魔術師たちよ  作者: 八神あき
二幕 ショルツ邸にて
55/68

10対1

 地下室ではホムンクルス20名が魔道具を守っていた。

 棚が多いため、狭苦しい。四隅に置かれた燭台で炎が揺れている。


 床の中央には魔道具。

 直径50センチの円盤。真ん中に穴が開き、爆発的な魔力を放出している。


 20人は四つの班に分かれている。

 ここを指揮するのはワトゥという、やさぐれた女性。


 守りは厳重だが、空気は緩んでいた。

 魔術師たちはパーティ会場で包囲されている。地下室へ来るための一本道には二人の見張りがおり、奇襲を受けることはない。


 弛緩した空気に、緊張が走る。

 爆発音がしたからだ。

 ワトゥの耳がぴくりと動く。視線をあげると、部下たちと目が合った。

「何事ですかね?」


 ワトゥは考える。

 爆発音は二階から。そのあたりにはロウディたち三人がいるはずだ。

 何かあれば報告に来るだろう。


「配置を崩すな。外の見張りにも伝えろ」

 指示を受け、部下のひとりが扉から顔を出して伝達する。


 しばらく待っているも、音沙汰なし。

 対処が終わったにしても一報はあるはずだ。


「一班、二班。音の場所へ向かえ」

「半分で行くの?」

「もし全滅してたら、三人殺した相手に五人ぶつけても被害が増えるだけだ」

「了解」

 一班長のランダが答え、二個班の十人が部屋を出ていく。


「全員、いつでも戦えるようにしておけ。外の二人にも伝えろ」

 伝達するため、ザインが扉から顔を出す。

「え?」

「なんだ、どうした?」

 ザインは答えない。


 次の瞬間、ザインが部屋の中に吹き飛んできた。

「敵だ!」

 ワトゥは反射的に叫ぶ。


 部屋にいた全員が戦闘態勢をとる。

 ばたばたと音がした。二人、首にナイフを刺されて倒れている。

(なんだ!? どこから投げられた?)


 部屋の中を見まわすも、敵の姿はない。ドアが閉まり切る前に投げられたのか?

「扉を固めろ」

 指示を出した直後。

「うわああ!?」

 ひとりが叫びをあげる。急に態勢を崩し、ものすごい力で暗がりに引きずり込まれた。


 マークとブルの二人が剣を構え、仲間が消えた方へ駆け出そうとする。

 ぽーん、と何かが放られた。

 マークが反射的にキャッチすると、それは暗がりに消えた仲間の首だった。

「な!?」


 勢いよく前に出ようとしていた二人も二の足を踏む。

 ワトゥが指示を出そうとしたとき、視界の隅で閃光が走った。


 ナイフだ。魔道具を破壊する軌道。

「くそ!」

 ワトゥは魔道具を優先。飛び込んでナイフを掴む。


 着地すると同時に飛んできた方向へ投げ返した。

「ああああああ!」

 背後から悲鳴。


 振り向くと、二人がやられていた。

 ブルは首を描き切られ、マークは今まさに倒れようとしている。

 マークの体の陰から、何かが飛び出した。


 まず目に入ったのはメイド服。

 質素な黒白の服を身にまとう女、リリアがワトゥに飛び掛かって来た。

「こいつが!」


 リリアは短剣でワトゥの頭を狙う。

 ワトゥは首をひっこめてよけた。リリアはさっと身をかがめ、ワトゥの足の健を斬った。

 動きの鈍ったところへ追撃。背中に回り、首をかききる。


 一瞬の出来事。

 残った部下たちがリリアに襲い掛かるも、すでにワトゥはこと切れていた。


 リリアは残りの敵も始末すると、床に置かれていた魔道具を破壊した。

 リリアは変化を知覚できない。

 しかし、魔術師たちは気づくはずだ。……その冷静さがあればの話だが。


「さて。間に合うといいのですが」

 耳を澄まし、情報を集め、次の行動に移った。

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