表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師たちよ  作者: 八神あき
二幕 ショルツ邸にて
53/68

柔法と爆弾

 ユーリは爆薬の材料を手に戻ってくる。

「屋敷の図面もあったよ」

 羊皮紙の巻物を床に広げ、あぐらをかいて調合をはじめる。


 アルフレッドは図面に目を落とした。

「爆薬ができ次第、ここを出て二手に別れる。リリアがワインセラーへ突入。俺らは爆薬を仕掛けてパーティ会場の壁を破壊、下のやつらを逃がしつつ、敵の布陣を崩す」

「え!? 別れるんですか!?」

「一か所だけ攻撃しても守りを固められる。複雑な局面を作ったほうが寡兵には有利だ。それに、俺らがいたところで足手まといだからな」

「ええー……。私らのところに敵が来たら?」

「がんばれ」

「根性論!? それでも魔道学園のエリートか!!?」

「そうだ。さっさと支度しろ。下の制圧が終わればこっちにも来る。じっとしててもジリ貧だ」

「うええ……やだよお……死にたくないよお。恋人欲しかったよー……」

 逃げ道を塞がれ、ユーリは泣きべそかきながら手を動かす。


 アルフレッドはリリアに視線を向けた。

「で、俺らのルートだが」

「西側の廊下が守りが薄いですね。3人。身体能力特化型もいません」

 リリアが断定すると、ユーリが顔をあげた。

「え、なんでそんなのわかるの?」

「足音を聞けば、重心の置き方やリズムで」

「それもう魔術越えてるね。リリアさんって何者?」

「しがないメイドです。アルフレッドさま、これを」

 リリアは細長い鉄の塊を渡す。


「文鎮?」

「手ごろな重さです。先も尖ってますし。使い方はわかりますね?」

「ああ、なるほど」

 アルフレッドは右手で文鎮を握り、軽く振るって重さを確かめる。


 文鎮が何になるのか、ユーリにはさっぱり理解できない。

 だがもう聞くのも面倒なので、言われたことに黙って従うことにする。

 粛々と作業を進め、いくつかの爆弾が完成した。


「ではアルフレッドさま。ご武運を」

 リリアはアルフレッドの頭をひとなで、部屋を出ていく。


 アルフレッドはわずかに頬を赤くした。それを隠しながらユーリに指示を出す。

「俺らも行くぞ」

「私、やっぱここで隠れてていい?」

「敵が来たら逃げ場がないが。まあ、好きにしろ」

「ついていかせていただきます。はい」


 二人は部屋を出る。物陰に隠れながら廊下を進むと、ホムンクルスがいた。

 約20歩の距離。窓際から外を見ている。

(……動きそうにないな。くそ)


 背中ではユーリが息を殺している。

 振り向き、人差し指を立て、ユーリと、ついで床を指す。

(お前はここにいろ)

(……床に爆弾仕掛けろ? いや、私死ぬくない?)


 ユーリが迷っていると、アルフレッドが走り出した。

 ホムンクルスが気づく。

「お前、魔術師か!」

 そう言って、瞬間には距離を詰めてきた。拳を固める。

 速い。目で追えるぎりぎりの速度。


 アルフレッドの脳裏に走馬灯がよぎる。

 リリアに教わった時間を、一瞬で再体験する。


 ホムンクルスは床に足をつけるや、腰をひねる。右肩がわずかにこわばる。視線はアルフレッドの首元。

 アルフレッドは首をかがめ、拳をよける。

 パンチを出したことで、ホムンクルスの体重は右足に乗っている。その膝を踏み潰すように蹴った。


「ちっ」

 ホムンクルスは舌打ちし、左のフックを出す。


 アルフレッドはそれをよけると、壁にあたった。大理石の壁にひびが入る。

 当たれば即死。

 沸き起こる恐怖心を抑え込み、敵の動きに集中する。


 拳が壁にめり込んだことで、次の動作が一瞬遅れた。


 アルフレッドは敵の左手をくぐって外に出る。ウェイトを仕込んだ右手で、敵のこめかみに鉄槌打ちを入れた。

 尖った文鎮の先端が、こめかみにめり込む。

「あがっ!?」


 ホムンクルスは血を流しながらも、いっそう目をぎらつかせて闘志をたぎらせる。態勢を立て直しつつ右のストレート。

 アルフレッドは敵の腕にそっと右手を添えた。わずかに体重を下げつつ威力を受け、受けた手で螺旋を描いて外へ流す。


 ホムンクルスは自分の力で重心を崩し、たたらを踏む。

 その刹那、人中にウェイトの先端を叩きこんだ。


 ホムンクルスは血を噴き出し、白目をむいて倒れる。

 力無く投げ出された足を蹴る。反応はない。気絶したようだ。


 ほっと一息つくと同時に、アドレナリンが切れて右手が痛み出した。

 見れば、敵の攻撃を受けた部分が赤黒く腫れている。

「まあ、習いたての柔法じゃこんなもんか」


 速く先へ進もう。ユーリを呼ぼうと振り向いたときだ。

 ユーリが爆弾を作動させていた。

 アルフレッドのほうへ走ってくる。その背後で爆発。


「って、ちょ、おま、えええ!? なにやってんの!?」

「言われた通りやったよ!」

「言ってねえよ!! いや、えええ!?」

 頭を抱える。


 廊下の先から足音が近づいてきた。

「なんだ!? なんの爆発だ!」

 敵の声。しかも複数いる。


「ああ、くそ!」

「わ、きゃあ!」

 アルフレッドはユーリを抱きかかえる。

 そして、爆発でできた穴に飛び込んだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ