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魔術師たちよ  作者: 八神あき
二幕 ショルツ邸にて
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馬車

 ダンはレブルットにタックルをくらわせたまま走り続ける。

『ダン、聞こえる?』

 ファナからテレパシー。

『ああ。この結界はどこまで続いてる?』

『広くはないけど、固定されてないから。引けば進むわ、馬車みたいにね』

『僕は馬か』

『ええ。このまま学園まで行ってちょうだい』

『学園?』

『テロが起きてる。ホムンクルスたちが、魔術を無効化する技術を使って』

『応援に行くのは賛成だが、身体強化も使えないのだろう?』

『そうね。一部の魔道具を除いて術式は一切使えない。けど、魔術無効化の魔術を維持してる魔道具があるはず。それを外から狙撃するわ』

『ファナは?』

『無効化は魔力生命体にも効果がある。うまくいけば悪魔だけを破壊できるし、それでなくとも活動を休止させられるわ。もっとも、その無効化とかを直接見ないことには断定はできないけど』

『了解した。このまま突っ走るぞ』


 ダンは学園方向へと進路を変える。

 森を突っ切り、城壁が見えてきた。中からは悲鳴や、建物の崩れる音、そして異常な魔力。テロが起きているのは本当らしい。


『とまって!』


 足を地面に突き刺すようにして急ブレーキ。ファナを学園に投げ飛ばした。

「ぐがああああ!!」

 学園の上空に入るや、ファナの中にいる悪魔が悲鳴を上げる。体を痙攣させながら放物線を描き、学生寮のある方へ飛んで行った。


 直後、後ろからルウの悲鳴。

 急ブレーキをかけた下手な御者よろしく、すっ飛んでくる。

 ダンはルウを受け止め、そっと地面に下ろした。


 ルウは四つん這いになり、口を押える。

「お、おぅ、おお……」

「大丈夫か?」

「おえーーーっ」

 吐いた。目が回ったらしい。


 ダンは学園に視線を向けつつも、ルウの背中をなでる。

「大丈夫か? 深呼吸だ」

「だ、だだ、だいじょうっ……おええええええ」

「よし、少し落ち着こう。このままでは何もできん」


 学園のことは気がかりだが、戦えないのではどうしようもない。

 ルウが落ち着くのを待つ間、ダンなりに魔術の無効化について考える。

(近づくにつれ魔力操作が阻害される。結界のように明確な境界があるわけではないのか。とすると、同心円状に効果が広がっていくような……。いや、そもそもこれを維持する術式はなぜ破壊されない?)


「だ、だいぶ、よくなった。ぐえ……っあー、もう! 気持ち悪い!」

「うむ。よく耐えたな。えらいぞ」

「推しでもないあなたに褒められたところでテンションあがりませんけど、一応どうも」

「力不足で申し訳ない。それで、魔術の無効化はどう見る?」


 ルウは体を引きずり、学園に近づく。

「……バカみたいな出力で魔力を発散しまくってるって感じ。たぶん、中にいたら何が起きてるかわからないんじゃない? 魔力の洪水で魔力操作が阻害されてる」

「なら、身体強化はできるのか?」

「残念だけど、人体内部にも影響あると思う。……でも、そうなるとホムンクルスの疑似生体術式にこそ致命傷じゃ……いや、そういえばオリジナルのホムンクルスは魔術を使えたっていうし、なんらかの安全機能がついてる? ハルターの聖剣も機能の一部は使えたっていうし……」

 独り言をいいながら考えを進める。


「……あ、そうか。ルイ・エザルカの」

「どうした?」

「無効化を免れてるものの共通点よ。グライツ家の聖剣、ホムンクルスの疑似生体術式、どっちもルイ・エザルカの発明品。……とすると無効化魔術の維持もルイ・エザルカの魔道具……やっぱり破壊さえすればなんとかなるかも。魔力の性質から中心は割り出せるし」

「ファナは?」

「悪魔は休眠してるはず。けど、無効化が解除されたらまた肉体を乗っ取るでしょうね。だから、魔道具を破壊したら、ファナの意識がもってる間にホムンクルスを片付けて、ファナを取り押さえないと」

「なら問題はファナの精神力か。どれくらい持つ?」

 問うと、ルウは「はっ」と鼻で笑う。


「ドゥーラン家さまは魔術の名家であらせられるし、あいつ本人もプライド高いし、一分くらいはもつんじゃない?」

「なるほど。十分だ」

「……十分って、ホムンクルスが何人いるかわからないじゃない」

「一分あれば学園内すべて回れるさ」

「まあ、突入するのはあなただし、信じるしかないけど……。じゃあ、今からやること説明するから、その通りに動いて。……持つかなあ、私の結界」

「魔力か?」

「それもあるけど、頭痛がひどいのよ。結界ってメチャクチャ頭に負担かかるの。あんな大規模結界一日になんべんも張れるの、ルグラン家でもそうはいないのよ? 崇めなさい」

「僕でよければ、いくらでも」

「……いいわ。あとで推しを見る」

「話しかければいいのに」

「な! なに言ってるの? 私ごときが話しかけるなんて恐れ多い! 見てるだけで十分よ。……部屋も近くなったし。ぐへ……」

「楽しそうで何よりだ。で、どうするんだ?」


 ルウを妄想の世界から引き戻す。

 ルウはよだれを拭い、説明を始めた。

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