災害
リサが敵を足止めしていたころ、ハルターは招待客たちを連れて廊下を走っていた。
さほど時間はかからず、玄関ホールに到着。
出入り口は敵が固めているはずだ。ハルターは身構えるも、予想に反して扉は空いていた。
扉の前には二人のホムンクルスが、死体となって倒れていた。
「団長、こっちっす!」
団員のギミーが物陰に隠れながら手招きしている。
「魔法が使えないエリアは屋敷の周辺だけです。その外側で他の人員は待機してます」
ギミーの誘導に従い、外に出る。
「そこにいたホムンクルス、お前らたちがやったのか?」
「いえ……俺らが来たときには倒れてました。援軍が来た様子もないんすけど……」
「そうか」
ハルターはうなずき、会話を切る。
50メートルほど離れると、魔法が使えるようになる。そこに陣地が構築されていた。土魔法で堀と壁を作り、見張りが立っている。
中には百人ほどの人間。団員が怪我人たちを手当てしている。
到着するなり、ハルターは中隊長のもとへ。
「状況は?」
「トリアージが終わって治療中。重症者はいないですね。悪魔を10体召喚して屋敷を偵察させてます。魔法で発生させた現象は消せないみたいなので、遠距離攻撃は可能ですけど、さすがに狙える位置に敵はいませんね」
さらに細かい偵察結果を聞き、作戦を立てる。
「俺と四小隊で救出作戦を行う。小隊は火力支援、突入は俺。小隊は当初、東側の壁を破壊、敵が視認できるようになったら通常の火力支援。俺は壁が破壊されたあとに突入し、敵を掃討する。一から三小隊はこの場で警戒、及び怪我人の処置」
命令がくだされると、団員たちが配置につく。
「それとギミー」
「あ、はい!」
「お前は学園に応援を要請しろ」
「了解っす!」
「準備オーケーです」
小隊長の合図。
ハルターが射撃の号令を下そうとしたときだ。
屋敷が爆発した。
「なんだ?」
まだ魔法は放っていない。屋敷の中で何か起きている。おそらくは玄関の敵を殺したのと同じ者。
「……中に味方がいるのか。うかつに撃てんな。……命令を変更する。撃てる状態で待機しておけ。俺が屋敷の中を確認する」
指揮官が偵察などおかしな話だが、人に宝剣を貸すわけにもいかない。
ハルターは単身、屋敷へ向かった。
ーーーーーーーーーー
一方、陣地に残ったギミーは学園との連絡を試みる。
しかし、
「……出ないっすね」
だれもテレパシーを受信してくれない。
何度か試した後、指向性を持たない放送に切り替える。
「だれかー、だれかいないっすかー。授業抜け出して街にいる学生とか。チクったりしないから応答欲しいっすー。あとで飯おごるっすよー」
『品性のない会話飛ばさないでくれます?』
「お、いたっすね! こちら王立学園騎士団のギミーっす」
『ご丁寧にどうも。ルウ・ルグルンよ』
「おお! 二位様じゃないっすか! 学園の団員と連絡つけたいんすけど、そっから中継できるっすか? ここだと届かなくて」
『残念だけど、私達も学園と連絡が取れなくて困ってたのよ』
「マジっすか! ……えー、じゃあ、だれでもいいんで戦える人間いないっすか?」
『ダンと一緒よ。ただ、今からそっちに行くのは無理ね』
「そこをなんとか! 緊急事態なんすよ!」
『こっちもそれなりの緊急事態よ。放置すれば人口がごっそり減るでしょうね』
「……何が起こってるんです?」
『ファナ・ドゥーランが暴れてるのよ。正確にはファナに寄生した悪魔かしら。危険度で言うとそうね……リサ・トウドウが魔法を滅多打ちしてるようなものよ』
なるほど。
そりゃこっちの応援は無理だ。
ギミーは全てを諦め、通信を切った。




