ずるい人たち
無数の人々が悲鳴を上げ、閉ざされた空間の中で逃げ回る。
ホムンクルスたちは優先順位に従い、淡々と殺していく。
リサは物陰を伝い、ホムンクルスから離れた場所を選んで移動。
だがホムンクルスにばかり注意しているせいで他のところにまで目が回らない。パニックになった客にぶつかり、蹴とばされ、這う這うの体で生徒を見つける。
「いた!」
ひな壇の下、テーブルの陰に膝を抱えている女子生徒がいた。
リサは走り出す。そこへホムンクルスが襲い掛かった。
「くそ!」
振り向いて炎を放とうと手をかざすも、何も出ない。
ホムンクルスは剣を持ち、リサの首を狙う。リサは近くにあったテーブルの脚を持って構えた。
「うおおおおおおおおお!!!!」
そのとき、雄叫びとともに団員のひとりが特攻をかけてきた。ガタイのいい男子生徒だ。ホムンクルスにタックルをかけ、わずかに持ち上げる。
「ありがとう!」リサは叫び、女子生徒のもとに駆け付けた。
「大丈夫!? 逃げるよ」
女子生徒は身を震わせながら、リサの手を取る。
背後ではタックルをかけた団員が奮闘していた。
だが魔法を使えない以上、力の差は明らか。
ホムンクルスは団員の頭を掴んだ。指が頭蓋にめり込む。膝蹴りを入れ、地面に投げ捨てた。瓦礫を投げつけると、団員の頭が砕け散る。
リサは女子生徒の体を支えながら西の入口へ向かった。
入口には他の団員たちも集まっていた。一般生徒は四組回収。アルフレッドがいないが、メイドのリリアはホムンクルスなので自分たちの身は守れるだろう。
西の入口は最も小さく、それゆえ守りも薄い。
ほかの出入り口は二人以上のホムンクルスが守っているが、ここはひとりだけだ。
とはいえ、魔法を使えない今、ホムンクルスひとりでも強敵。
どうするのか、リサが疑問に思った時だ。
ハルターが、抜身の剣を持って走り出した。
ホムンクルスはそれに気づき臨戦態勢を取るも、襲い。
一閃、ハルターはホムンクルスを切り捨てる。
「身体強化!?」
リサは驚愕。だが説明を求める時間はない。
「急げ!」
ハルターがドアを蹴破ると、団員たちは脱出を開始。先に一般生徒を出し、団員も続く。
脱出に気づいたホムンクルスが襲い掛かるも、殿となったハルターが撃退。
ハルターは複数人のホムンクルス相手に一歩も引かず応戦している。
魔法を使うハルターを見てホムンクルスたちは動揺。動きが鈍る。
そこへ鋭い叱正が飛んできた。
「剣だ! 剣を奪え!」
少女の声だ。姿は見えないが、おそらくは子供。
指示を受けたホムンクルスらは五人がかりでハルターを囲む。
(潮時かな)
団員たちは脱出を終え、リサが出入口で待っている。
ハルターはスピードを上げ、二人のホムンクルスを殺す。包囲網に穴が開いた。ホムンクルスのガードを抜け、入口へ向かう。
ホムンクルスがさらに三人、ハルターに追いすがって来た。
「しつこいっ!」
近くにいた敵を斬る。その瞬間、別の一人が飛び掛かって来た。剣に抱き着く。
さらに三人目が切りかかって来たが、ばたりと倒れた。
リサだ。リサが魔力を圧縮し、放出。ホムンクルスの疑似生体術式を麻痺させた。
「なんて魔力……」
術式も何もない、ただの魔力の放出。それゆえ妨害も受けない。リサ以外の人間には使えない、魔力量にものを言わせた力技だ。
ホムンクルスの追及を逃れたハルターは入口に到着。
「逃げるぞ」
「もうちょっと」
入口からは他の招待客らも逃げ出していたが、二人がいなくなればまた守りを固められるだろう。
リサは少しでも多く逃がそうと攻撃を続ける。
「ダメだ。外にも敵はいる。俺たちの任務はあくまで生徒の保護。他は見捨てるしかない」
「じゃあハルターは先行って」
「………根性あるな、お前」
ハルターはリサの背中を叩き、会場を出る。
出口の周りにいた一般客たちを連れ、先行した組のもとへ走った。




