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魔術師たちよ  作者: 八神あき
二幕 ショルツ邸にて
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非魔術戦

 会場はパニックに陥りつつあった。


 突如として、魔法が使えなくなったからだ。

 照明や音楽再生機などの魔道具が停止し、護衛に置かれていた悪魔たちが魔力的な鎖を逃れ、異世界へと帰っていく。

 明らかな異常事態。


 リサは身体強化を施すも、うまくいかない。

「なんで!?」

 術式破壊では身体強化は妨害できないはず。

 大規模な術式破壊、というわけではないらしい。もっと別の魔法だ。


 どこかから悲鳴があがった。

 給仕たちが短剣を手に、要人を殺したのだ。

 内務大臣、治安部隊の指揮官、有力貴族たち。


 ただひとり、凶刃を防げたのはハルターだけ。腰に帯びていた剣を抜き放ち、短剣を受け止めた。

「ホムンクルスか」

 ハルターが言うのと同時。


 窓ガラスが割れた。

 30人以上のホムンクルスが、窓から飛び込んできた。


 ホムンクルスは魔法を使えない代わりに高い身体能力を持つ。

 人間は魔法を使えるがゆえにホムンクルスを押さえ、支配することができる。


 今、この会場では魔法が使えない。


 騎士団の人間が反射的に魔法を放とうとするも、術式は魔素の波にかき消される。


 ホムンクルスたちは何の妨害も受けずに着地。剣を抜き、周囲の人間を殺していく。

 彼らは手際よく致命部位を攻撃。喉を突き、頸動脈を斬り、目を突き刺す。


 人がバタバタと死んでいく。血を噴き出し、悲鳴をあげて、倒れていく。

 現実離れした光景を前に、リサは呆然と立ち尽くしていた。

 地面に転がる死体と目が合う。虚ろな瞳が、リサを見つめている。


 何をしてるんだ、自分は。

 魔法が使えない。だからなんだ。

 リサは拳を握りしめた。


 後ろから肩を掴まれた。振り向きざまぶん殴る。

「おい、待て。落ち着け」

 ハルターだった。リサの拳を受け止める。

「バカなことするな。それより、うちの生徒たちを集めろ」

「!?」

 すでに騎士団の面々は周囲に集合しており、ハルターの命を受けると生徒らを回収に行く。

「いいか、敵はホムンクルスだ。魔法が使えない今、勝ち目はない。突っ込もうなんてするな」

「……わかった」

「よし。生徒を回収したら各自分散しつつ、西側の入口に行け。そこから離脱する」

 さいわい、ホムンクルスたちの狙いは要人と戦闘員に絞られている。招待を受けた生徒は無事だ。


 しかし、騎士団は別だ。すでに何人か殺されている。

 リサは死体から目を背け、生徒たちの回収に向かった。


ーーーーーーーー


 ホールで惨劇が起きている頃、アルフレッドたちは二階の無人部屋にこもっていた。

 窓から確認したところ、敵は二人一組となってすべての入口に張り付いていた。逃げるのは無理だろう。


 アルフレッドは考える。魔法を使えなくしている魔法の正体。

 大人数で術式破壊を行っている、という線はすぐに消えた。術式破壊は高度な魔術。屋敷の中にいる百人の魔術行使を、遠隔から妨げるなど不可能。それに、身体強化も使えない。


 これはおそらく、もっと力技だ。体内の魔力操作すら阻害されるほどの出力。そして屋敷全体を包む効果範囲。

「魔界か?」

 魔界は魔力の海と表現される世界。供給源としては十分。


 召喚魔法で異界への扉を開き、魔力を流しっぱなしにする。

 ただ、問題がある。それだと異界への扉を開いた魔法の術式も破壊され、効果を維持できない。

「だが他に可能性も思いつかんし……」

 維持方法は脇に置き、魔力の発生源を魔界と仮定して対処法を考える。

「リーン。お前、屋敷の間取り調べてるだろ?」

「えーっと……あ、はい。調べました」

 商売敵の家に、合法的に忍び込むチャンス。間取りを調べておくとあとあと役に立つだろうと、こっそり見て回っていた。

「教えてくれ」

 非常事態ゆえ、リーンはおふざけを挟まず素直に間取りを教えた。


 間取りをもとに、アルフレッドは発生源を特定。さらに敵の行動を予測し、作戦を立てる。


 リリアは考え込むアルフレッドの口元に笑みが浮かんでいるのを見た。

「久しぶりですね、こういう戦い」

「ああ。黒火薬作ってドゥーラン家の屋敷吹っ飛ばしたとき以来だ」

 アルフレッドは笑い、二人に作戦の指示をはじめた。

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