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魔術師たちよ  作者: 八神あき
二幕 ショルツ邸にて
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幕開け

 ドゥーラン家から遠く離れた森の中、ショルツ家の屋敷がある。

 リサたちは到着するや慌ただしく着替えを済ませ、パーティがはじまった。


 屋敷は二階建てで、一階には巨大なホール、二階には会議室や使用人の部屋。

 会場となったホールには百人以上の人間が集まっていた。鮮やかな色のドレスがまじりあい、百花繚乱の景色となる。


 会場のアルフレッドは出席者の顔ぶれを眺めていた。

 内務大臣、王族、魔術の名家。豪華なメンツだ。

 イルセナは名目上は軍隊を持たないため、治安維持部隊が唯一の武装組織だ。それを指揮する内務大臣は発言力が強く、王、宰相に次いでナンバースリーの地位にある。


 観察を続けていると、出席者たちにどよめきが走る。

 さもありなん。会場の入り口に、王が現れたのだ。


 ヴィルス・クラウツニル二世。

 四百年前から続くクラウツニル朝の現当主。

 背は高く、五十を越えているにも関わらず逞しい体つき。


 王は快活な笑みで招待客に手を振っている。

「さすがは旭日昇天のショルツ家。招待客も豪華ですね」

 漆黒のドレスに身を包んだリリアが王の姿を見て言う。


 だが、アルフレッドの視線は王の後ろに釘付けにされていた。

 何かがいる。分析魔法でも正体を暴けない。


 結界だ。可視光も魔素も、その表面を滑って後ろの景色しか移さない。結果、高いステルス効果を発揮している。

(結界術使える悪魔なんて限られてるよな……。しかも護衛向きとなると……)

 候補となる悪魔を列挙する。どれも固有魔法を複数持つ、レベル13の中でも上澄みばかり。


 アルフレッドが考えていると、後ろから肩を叩かれた。

「やっほー。お久」

 振り返ればやつがいる。


 亜麻色のショートカット。背丈はアルフレッドと同じくらい。いつもの白衣姿ではなくオレンジ色のイブニングドレスを着ている。

 ユーリ・リンリット。

 リンリット商会の経営者にして、アルフレッドをこのパーティに引き込んだ張本人。


 アルフレッドは途端に不機嫌面。

「どうも」

「そんな睨まないでよ。リリアさん、この子怖いんだけど」

「仕方ありません。アルフレッドさまは私以外の人間には懐かないので、私以外の人間には」

 大事なことなので二回言った。

「まあいいや。発表用の資料、まとめてきてくれた?」

「まとめるも何も学園でやったのと同じだ。クレアが読んだとこも頭に入ってる」

「お、さっすがー。じゃ、私らの番までゆっくりしてますか」


 このパーティは、魔術道具に関する技術発表を目的に掲げている。

 むろんショルツ家の魔道具を宣伝するためだろうが、国の魔術水準向上を大義名分としているため、学園の生徒も呼ばれているのだ。


 ひな壇ではさっそく生徒の発表が行われている。招待された生徒は五組、アルフレッドはトリなのでまだしばらく時間がある。

 のんびり食事をし、ライムジュースを飲んでからひな壇の裏に入った。水晶板を開き、資料に目を通す。

 四組目の生徒が下りてきた。


 アルフレッドはひな壇に上る。後ろにはリリアとリーンもついてきた。気にせず発表をはじめる。

「今回作った魔道具は魔力授受のための装置だ。使用者の生体魔力を解析、登録し、入力された魔素を再配列して登録した生体魔力を出力する」

 説明をしながら、観客の様子を見る。


 それまでは退屈そうにしていた観客たちだが、上位生の発表ともなると別だ。ほとんどの人間が顔を向けている。

 特に興味を持っていそうなのは技術局局長、特許庁の役人、それからショルツ自身。


 会場一番のビッグはどうなのかと目を向けたときだ。

 王の周囲がゆらいだ。


 おそらく、魔物が別の魔法を使い、結界が緩んだのだろう。ほころびから魔力が漏れ出す。

 アルフレッドの背筋に冷たいものが走る。悪魔の正体に見当はついていたが、いざ目の前にすると想像以上の化物だ。


 ゆらぎは国王を包み、飛び立った。天井を破壊してはるか空へと消えていく。

 アルフレッド以外の人間には突然王が消え、天井が壊れたことしか認識できなかったろう。


 明らかに異常事態だが、それ以上に困惑が支配していた。

 アルフレッドは発表をやめ、リリアの手を掴む。

「リリア、この屋敷の構造調べてるか?」

「外から見ただけなのでわかりません。リンリットさんのほうが詳しいのでは?」

「え、なに? なんの話? 発表は? てか、天井崩れてたよね、欠陥住宅?」

 リーンは何一つ追いついていない。

「国王についてたのはニーズヘグ。予知の悪魔だ。護衛のために召喚されてた、未来の見える悪魔が護衛対象抱きかかえて消えてった」

「つまりクソやばいってことです」

 リリアが主の言葉を継いで言うと、リーンもうなずいた。


 三人は会場を出て、廊下を歩く。

「で、どこに行けばいいの!?」

「何が起こるかわからんが……とにかくさっさと屋敷から離れよう」

 その時、廊下の明かりが消えた。


 指向性のない高出力の魔素が、魔道具を破壊したのだ。

「なに、なんなの!?」

 リーンが叫ぶが、アルフレッドにもわからない。


 近接戦闘に備え、ルドルグを召喚しようとしたが、術式が描けない。魔道具を破壊した魔素の洪水に、術式をかき消される。

「……魔法が使えん」

「は? どういうこと?」

「お前もやってみろ」

「やってみろって……わ、ほんとだ。なにこれ?」

 考えるまもなく事態は進行する。


 会場から悲鳴、窓ガラスの割れる音。

 どうやらかなり、面倒な状況になったようだ。

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