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魔術師たちよ  作者: 八神あき
一幕 競技会編
4/66

なりそこない

 クレアとリサは廊下を歩いていた。

 戦闘でこわばった体をほぐすため、リサが伸びをする。

「っあー、疲れたー」

「お疲れさま。リサって、魔術は村で習ったんだっけ?」

「そうだよー。それがどうしたの?」

「学園以外にも偉大な魔術師はいるんだなって。えっと、資料室のことは聞いてる?」

「あー、そういや説明されたような、されなかったような?」

 あいまいな返事に、クレアは苦笑する。

「適当ですね。試合のあとは資料室に行くんです。…まあ、すぐ使えるかはわかりませんけど」

「よくわかんないけど、クレアが言うならそうする」

 リサは眠たげに目をこすりながらクレアのあとをついていく。子供みたいな姿に、クレアはまた笑ってしまった。

「……試合中はかっこよかったのに」

「んー、なにー?」

「なんでもありません」

 クレアはリサの手を引き、資料室へ向かった。


 廊下を歩くことしばし。

 資料室に到着。巨大な扉をくぐると、中には無数の本棚が並んでいた。

 部屋に入ってもクレアは歩みを止めず、人が群がる一角へと進む。

「やっぱり人多いなー。けっこう待つかも」

「なにするの?」

 リサは言って、クレアの視線の先を追った。

 壁にいくつかのドアが並んでいる。入口と違って横幅1メートルほどの、小さなドアだ。

 ドアの横にはガラスのパネルがあり、文字が表示されている。リサの位置からは何が書かれているのかまでは読めない。

 生徒たちは扉の周囲に並び、何人かはパネルを操作していた。

「あの部屋では練習用の仮想空間にアクセスできるの。練習だけじゃなくて、過去の試合のデータを見たりもできて」

 クレアの説明を聞きながらも、リサは群衆に視線を向けていた。

 手持無沙汰にしていた男子生徒がこちらに気づく。冷笑を浮かべ、仲間内でひそひそ話をはじめた。ひとりがこちらに声をかける。

「魔力のないやつがなんの用だ、ミス・なりそこない」

 周りの男子生徒たちがげらげらと笑う。

「えっと、私じゃなくて、リサが」

 クレアが言い返すと、男子生徒らは顔を見合わせる。

「だれだ?」

「さあ、転入生じゃないか?」

「ああ、それでスフィアに」

 身内同士の会話で結論を出す。

「新人が試合なんて見返したって無駄だろ。見てわかる通りつかえてるんだ。スフィアを使うならもっと基礎をつけてからにしな」

「基礎をつけてからって、どのくらい?」

 リサが言う。それまで黙っていたリサに聞き返され、男子生徒は眉をひそめた。

「さあな。少なくとも、真ん中より上になってからだな」

「ふーん。じゃあ、あなたたちは真ん中より上なんだ」

「ああ、そうさ。お友達にするなら、そこのなりそこないなんかじゃなくて、もっと順位が上の人間にしたほうがいいぞ」

「俺たちみたいな」

 別の生徒が野次を飛ばし、また笑う。

「そうなんだ。優秀なんだ、あなたたち」

「まあ、それなりにな」

「アルフレッドより?」

 その名を口にした瞬間、笑い声はぴたりとやむ。

「君らはアルフレッドに勝てるの?」

 生徒らはまた仲間内での会話をはじめる。

「なんで知ってるんだ?」

「たしか、歓迎試合に出たってだれか言ってた」

「そうか、それで…」

 話がまとまると、再びリサのほうを向く。

「学園のレベルも落ちたもんだよな。転入生相手に学年最強のカードをきらなきゃいけないなんて」

 どうやら試合の結果は知らないらしい。

 だから、リサは言ってやった。

「強かったよ、すっごく」

「だろうな」

「危うく負けるかと思った」

 リサの言葉に、彼らは驚愕の表情を浮かべる。信じられない、嘘に決まっている。そう結論付けて、顔に皮肉な笑みを張り付けた。

「あまり虚栄を張らないほうがいい。すぐばれるんだから」

「そ。じゃあ今の内にでかい態度とっといたほうがいいわね」

 舌打ち。

 男子生徒がずかずかと向かって来る。

「消えろよ」

 突き飛ばそうとしたが、以外にもリサは力が強く、微動だにしない。

 さらに力を入れて肩をつかみ、引き寄せようとした。リサはその瞬間に相手の腕をとり、後ろに投げ飛ばした。

「なっ!? 野郎!」

 別の男子生徒が殴りかかってくる。リサはかわすと、拳を作り、「やめた」と首を振った。殴る代わりに軽く鼻をはたく。

「来て早々すごい人と戦って気持ちよかったんだけど。魔道学園って言っても生徒はピンキリなのね」

 冷めきった視線を向ける。すぐに振り返り、柔らかい笑みを浮かべてクレアの手をとった。

「行こ」

 男子生徒たちが陣取っていたパネルの前まえまで来る。クレアは迷いながらもパネルを操作。

「予約、はできたけど」

「お、できた?」

「うん。……けど207番目。今日中には回ってこないね」

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