戦いの後に
「っあーーー。負けたー……」
食堂、窓際の一席。
リサはため息と共に突っ伏す。
「まあまあ、相手はエザルカですから」
クレアは言いながら、3人分の飲み物を置いた。自分は砂糖入りのフレーバーティー、リサにはシナモンの香りたつミルクティー。
もうひとつのカップ、スパイスの効いた甘い炭酸水を取ったのはノン。一口飲み、リサの背を叩いた。
「でも惜しかったじゃん。最後のは防御間に合わなかったら相打ちだったでしょ」
その姿を見て、クレアは眉根を寄せる。
「二人って、いつ仲良くなったの?」
「ん? この前一緒に遊んでから」
「そう……」
クレアは釈然としない面持ちでティーカップをすする。
リサは白く濁った水面を覗き込みながら呟く。
「……最後のあれ、金属なんかで防げると思わなかったんだけど」
「魔素鏡面だよ、知らないの?」
「あれは魔素鏡面って言って」
二人の言葉がかぶった。クレアは「どうぞ」と引き下がる。
「四種類の魔素のうち一種類だけを抽出、特定のパターンで結晶構造を作るの。バカみたいに難しいけど、効果は抜群」
「効果って?」
「反射。というより反転かな。特定のベクトル、量を反転させられる。あのとき先輩が使ったのはベクトルの魔素鏡面だね。爆発のエネルギーがぶつかるそばから180度反転、相殺させたの。普通は指先とか、神経が多く通ってる場所のそばに小さな範囲でしか発生させられないんだけど、あの人はゴーレムの表面全体に発生させてた。あの魔力制御は化け物級だよ」
「それ、高火力の価値なくなるくない?」
「単純に相手が鏡面を発生させるより早く攻撃をあてるとか? それに、基本的には狭い範囲にしか発生させられないしね。攻略法はあると思うよ」
「あー、もー! 魔法の戦いってむずかしすぎ!」
「だから勉強しよって言ったのに……」
「ごめんよクレアー、けどあたしは体動かしてないと死ぬタイプなんだ。マグロなんだ。マグロ食べたい」
「なにそれ?」
「魚」
「あ、魚介のおいしいお店知ってるよ。次の休み行かない?」
「えー、行く行く!」
「勉強は?」
睨まれ、リサはうぐっと言葉を詰まらせる。
「……じゃあ、1日は勉強で」
「よし」
クレアは満足げに頷いた。




