試作品
アルフレッドとクレアは魔力授受の実験のため、仮想空間にいた。
「これ、失敗したらものすごく痛いですよね?」
魔力を持たない以上、クレアは受け取る側になる。恐る恐る聞くと、アルフレッドは心配するなと首を振った。
「魔力の受け取りは俺がやる。お前は観測に専念しろ」
「え? じゃあだれの魔力を受け取るんです?」
「魔界から直接魔力を吸い上げる」
「魔界!? え、それ危なくないですか!?」
「安心しろ。最悪でも死ぬだけだ」
「え、死ぬ……?」
アルフレッドと違い、試合に出たことのないクレアは仮想空間内といえども死ぬのは怖い。
「召喚魔法を途中でとめて、魔界へのゲートを開いておけば魔素は勝手に出てくる。そこから魔力を吸い上げる」
言うと、地面に術式を描いて呪文を唱える。異界への扉が開き、地面から禍々しい霧が立ち上る。
アルフレッドはガウンのポケットから魔道具を取り出した。筒状の金属で、なんの飾り気もない。
「あれだけの情報量がそのサイズになるって、なんか違和感ありますね」
「仮想空間だからな。物理ボディの見た目なんてどうとでもなる」
魔道具を通して魔界から魔力を吸い上げる。
アルフレッドが目を見開いた。痛みに脂汗が流れる。腕が痙攣し、魔道具を持っている指先が黒く変色していく。
「がっ!? くそ……!」
苦悶の表情を浮かべながらも、魔道具は離さない。
一分ほど耐えたのち、ゲートを閉じた。地面に倒れ込む。
「大丈夫ですか!?」
「見ての通りだ。問題ない。それよりデータ取れたか?」
「は、はい! えーっと、魔道具は作動してます。ただ、再配置されていない魔素も流れてしまっていますね」
「そうか。じゃあもう一回やるぞ」
「ええ!? やめたほうが……」
「一回で有意なデータ取れるわけないだろ」
「それはそうですけど……痛くないですか?」
「現実世界に戻れば治る。さっさと続けるぞ」
「は、はい!」
じろりと睨まれ、クレアはデータを取る態勢に入る。
7回目の実験を行ったところで気絶したため、仮想空間を出た。
アルフレッドはクレアと別れ、部屋に戻る。
帰るなりリリアに抱き着いた。
「お疲れですね」
リリアは扱いなれたもの。ベッドに座り、頭をなでる。アルフレッドはリリアの膝に頭を乗せて寝転がった。水晶板を手に取り実験の記録を見る。
「成功はしてるんだよな。実用性が皆無なだけで。……安全機能を組み込むのは必須か。それより処理速度だな」
水晶板でクレアとやり取りしながら改良のアイデアを練る。消灯時間になると中断し、布団を引き寄せた。
「共同作業はいかがですか、ぼっちさま」
「……それなりだ」
「それなりでございますか」
ぶっきらぼうな返事に、リリアは苦笑した。




