隣の君
体育館での入学式、その綺麗な桜の君は俺の前に座っていた。
彼の名は、兵藤剛志。俺と同じクラスだった。
一学年は七クラス、一クラスは三十人。
進学に特化した特別クラスが三組もあり、他の四クラスは普通クラス。
といっても皆大学進学を当たり前のように思っている。
クラスに戻り皆席に座ると、彼は隣の席に着いた。
自己紹介が始まる。
「千義璃桜です」名前だけ言って俺は座った。
後ろの男子が自己紹介を始める。数人後、彼の順番となる。
「僕の名前は兵藤剛志。中学は○○中です」
透き通るような彼の声。
男女問わず“ほー“と吐息が漏れる。
自己紹介は続く。
女子はまだ少ない。窓際に五人ほど。
「席替えは二週間ぐらいしてからな。出席を取る」
担任の中尾先生が話しているが、教室はガヤガヤしたままだ。
「初めにクラス委員を選べ!自薦推薦くじでも構わん」
「男気じゃんけんでいいんじゃね」
「女子もいるんですけど」と声があがた。
結局、じゃんけんで勝ち上がった男子が委員に決定した。
隣の彼が気になる顔が綺麗というだけじゃなく、微かに妖狐の影が視えたからだ。
俺と目が合うとその影妖狐はとても驚いてそして笑った。
彼と似ている気がする。
《ねえ、私が視えるみたいだけど、話も出来る?》
俺は軽く頷いた。
《わぁ!嬉しい!人と話すのは久しぶりなの。
一応この子の母親なんだけどなぜかこんな姿になっているの》
彼の腰の辺りにずっとくっついている影妖狐は陽気にしゃべり続ける。
「あ・と・で」僕は小声で話を切る。
横にいる彼が怪訝そうにこちらを睨む。
今日は入学式なので午前中で帰れたが、明日からは七時限びっしり詰まっている。
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